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薄暗い家の中で見ても、玄兎は真っ白で、まるで玄兎自身が光っているみたいだ。何となく近寄りがたくて入り口に立ち尽くす白狼を見て、玄兎がおかしそうに笑う。
「何でそんな所に立ってんの? こっち温かいよ」
そう言って、ストーブの前に置かれたソファに誘われる。ぎこちなく近づいてソファに座る。その間もちょこちょこと玄兎は動いて温かいお茶を入れて渡し、そのまま隣に座って自分も休んだ。
そんな玄兎の一挙手一投足を、白狼は気にしない振りで、全身で意識している。
この、慣れない見た目のせいだ。色が白くなっただけなのに……、白くなったから? 視界に入ってしょうがない。
いつも口数が多いわけではないけれど、いつも以上に何も言わない白狼に玄兎は落ち着かなくなる。いつもの白狼に戻って欲しくて、玄兎は話しかけた。
「この家、落ち着くだろ。なんか好きなんだよな。ばあ様、白狼が様子見に来てくれて、たくさん話をしたって嬉しそうだった。雨だったけど、俺を探しに来てくれたんだろ? ありがとな。……ばあ様、連れてきてくれたのも、いくら白狼でも大変だったろ」
「いや……、兎族は小さいし平気だったよ。もしかしたら、俺のせいでばあ様の具合悪くなったかも知れないし……」
「そんなわけないだろ。白狼いてくれて良かったって、悪いことしたって気にしてた」
そこまで言って、玄兎はお茶のカップを置いて白狼に向き直る。それから、空いている白狼の手を両手で包み、握りしめた。
白狼の心臓がドキンと跳ねる。
「何でそんな所に立ってんの? こっち温かいよ」
そう言って、ストーブの前に置かれたソファに誘われる。ぎこちなく近づいてソファに座る。その間もちょこちょこと玄兎は動いて温かいお茶を入れて渡し、そのまま隣に座って自分も休んだ。
そんな玄兎の一挙手一投足を、白狼は気にしない振りで、全身で意識している。
この、慣れない見た目のせいだ。色が白くなっただけなのに……、白くなったから? 視界に入ってしょうがない。
いつも口数が多いわけではないけれど、いつも以上に何も言わない白狼に玄兎は落ち着かなくなる。いつもの白狼に戻って欲しくて、玄兎は話しかけた。
「この家、落ち着くだろ。なんか好きなんだよな。ばあ様、白狼が様子見に来てくれて、たくさん話をしたって嬉しそうだった。雨だったけど、俺を探しに来てくれたんだろ? ありがとな。……ばあ様、連れてきてくれたのも、いくら白狼でも大変だったろ」
「いや……、兎族は小さいし平気だったよ。もしかしたら、俺のせいでばあ様の具合悪くなったかも知れないし……」
「そんなわけないだろ。白狼いてくれて良かったって、悪いことしたって気にしてた」
そこまで言って、玄兎はお茶のカップを置いて白狼に向き直る。それから、空いている白狼の手を両手で包み、握りしめた。
白狼の心臓がドキンと跳ねる。
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