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 ピョコンと立った耳と髪がサワサワと風に舞い、光を受けて銀色に光っている。

「あー……、これ、」
「すげぇ、きれい……」

 呆けたままの白狼が呟く。

「おまっ、なに言ってんだ……!」

 白狼の言葉を反芻して照れて真っ赤になった玄兎に、白狼は我に返る。目の前の玄兎は、声も形も玄兎のものだが別人のように見える。

「きれいだから、きれいって言ったんだ。……お前、玄兎、だよな?」
「……そうだよ!」
「その反応は玄兎だな……」

 真っ赤になって怒る姿にホッとして、だけど心臓はドキドキと跳ねたままだ。

「これ、どうしたんだ?」

 そう言うと、ふわふわと光る耳に触れてみたくて玄兎の耳に手を伸ばす。手が触れる直前でピクピクとくすぐったそうに耳が動いて、手を止める。

「耳……、触っても、いいか……?」

 恐る恐る許可を取ると、真っ赤なままの玄兎がコクリと頷いた。驚かさないように、出来るだけ優しく耳に触れる。
 フワリと毛の感触に触れそうになると、耳がピクリと動くのが可愛い。ギュっと手を握り目を瞑って構える姿に手を止めると、ピクピクと耳が動いて白狼が触れるのを待っている。

 驚かさないように……。

 柔らかくて温かな耳の毛に触れる。くすぐったい感触はそのままだけれど、思ったより耳が温かくて、玄兎に触れているんだと意識した。そのまま、すっと耳を撫でる。思った通りの感触にゾクゾクして、いけない物に触れているような気になり手を離そうとすると、玄兎の耳が手を追いかけて寄り添った。

 白狼はびっくりして反射的に耳から手を離す。だけど完全に手を離すのは名残惜しくて、ふわふわと陽に透ける髪を撫でた。こちらは、耳より少し硬くなめらかな感触で、思わず髪を梳きたくなる。白狼の手の動きに合わせて、長い耳がピクピクと動いた。

 どうして、どこもかしこも……こんなに可愛いんだろう。灰色の、見慣れた色の時もこんな触り心地だったんだろうか。触ってみれば良かった。

「……もう、いい?」

 小さく呟かれた言葉に、ハッとして手を離した。

「あっ、ごめん……」

 照れくさくて気まずい。この、なんと言ったらいいか解らない、全部が玄兎に向かっていくような、この気持ちも伝わったんじゃないかとドギマギする。

「ちょっと寒いな。家、入ろう」

 玄兎がクシュンと小さくくしゃみをして震え、家の中に誘う。
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