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幸いにして、自分は狼族で身体が大きく力もある。小さな兎族のばあ様を背負って連れて行くくらいはできるだろう。そうと決めたら、早く連れて行く準備をしなければ。白狼は部屋を見回し、ばあ様に声を掛ける。
「ばあ様、雨具はある? 俺、ばあ様を医者まで抱いて行くから、温かい格好と、雨具のある場所を教えて」
「ごめんね、大丈夫。誰か呼んできてくれれば……」
「雨の中移動することになっちゃうけど、俺は身体が大きいし力も強い。きっと、爺さん……木賊もそうするはずだ」
そう言って白狼は必要な物の場所を聞き出した。
手早くばあ様に温かい格好をさせて背負い、木賊が置いて行ったという古いコートをその上から着る。大きなコートは丈は長いが、密着した二人に丁度いい大きさで、白狼は木賊がこれを見越して置いて行ったんじゃないかとすら思う。
「ばあ様、行くよ。ちょっと揺れるし苦しいけど我慢してね」
そう言うと、白狼は昨日より小振りになった雨の中に飛び出した。
森の中の道は雨でぬかるみ、所々飛び出した木の根に足を取られそうだ。ポタポタと葉を伝って大きくなった雨粒が垂れる森の中を、気を付けながら足早に進む。ようやく森を抜ける頃には、雨は降ったままだが、少し空が明るくなってくる。白狼は時折ばあ様に話しかけながら、玄兎と一緒に行きたいと思いながらも一度も足を踏み入れられなかった草原の道を走った。
転ばないように気を付けながら走っていると、村が見えてくる。
村の端の赤い屋根の家が見えてくる。玄兎の家は『ケープと、ばあ様の家と同じ、赤い屋根の家』だと聞いた事を思い出す。
医者がどこなのかもわからないし、突然狼族が来たら診てもらえないかもしれない。そう考えて白狼はとりあえず、玄兎の家に向かうことにした。
「ばあ様、ごめんな、あと少しだから。とりあえず玄兎の家に向かうよ」
そう声を掛けると背中でコクコクと頷く気配がある。白狼はあと少し、と走り続けてガクガクする足に気合を入れる。
「ばあ様、雨具はある? 俺、ばあ様を医者まで抱いて行くから、温かい格好と、雨具のある場所を教えて」
「ごめんね、大丈夫。誰か呼んできてくれれば……」
「雨の中移動することになっちゃうけど、俺は身体が大きいし力も強い。きっと、爺さん……木賊もそうするはずだ」
そう言って白狼は必要な物の場所を聞き出した。
手早くばあ様に温かい格好をさせて背負い、木賊が置いて行ったという古いコートをその上から着る。大きなコートは丈は長いが、密着した二人に丁度いい大きさで、白狼は木賊がこれを見越して置いて行ったんじゃないかとすら思う。
「ばあ様、行くよ。ちょっと揺れるし苦しいけど我慢してね」
そう言うと、白狼は昨日より小振りになった雨の中に飛び出した。
森の中の道は雨でぬかるみ、所々飛び出した木の根に足を取られそうだ。ポタポタと葉を伝って大きくなった雨粒が垂れる森の中を、気を付けながら足早に進む。ようやく森を抜ける頃には、雨は降ったままだが、少し空が明るくなってくる。白狼は時折ばあ様に話しかけながら、玄兎と一緒に行きたいと思いながらも一度も足を踏み入れられなかった草原の道を走った。
転ばないように気を付けながら走っていると、村が見えてくる。
村の端の赤い屋根の家が見えてくる。玄兎の家は『ケープと、ばあ様の家と同じ、赤い屋根の家』だと聞いた事を思い出す。
医者がどこなのかもわからないし、突然狼族が来たら診てもらえないかもしれない。そう考えて白狼はとりあえず、玄兎の家に向かうことにした。
「ばあ様、ごめんな、あと少しだから。とりあえず玄兎の家に向かうよ」
そう声を掛けると背中でコクコクと頷く気配がある。白狼はあと少し、と走り続けてガクガクする足に気合を入れる。
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