12 / 13
喚く女
しおりを挟むあの2人の裁判が開かれることになった。
襲撃から1年近くが経っていた。
皇帝や皇子達が蛇になることを公表していない以上、被害者である俺が蛇のままでは、皇族の襲撃事件を公表出来なかったせいだ。
その為、豚王とクソ女は、捕縛からずっと帝国の牢に繋がれていた。
既にあの国は別の国に売り渡してある。ふたりを守る国はもはや、何処にもない。
「王よ、小国では満足出来なかったか?」
「フン、蛇が、偉そうに」
帝国皇帝の問いに小国の王は嘲った。
「蛇が皇帝だと? 蛇に仕えるくらいならワシに仕えた方が臣下も幸せだろうて」
高位貴族の当主達が殺気だつが、皇帝が手を挙げてそれを制した。
「王よ、皇帝とはそなたが思うようなものではない。彼等は、皇族が善政を行い、民を慈しみ国を守るからこそ、喩え、蛇でも仕えてくれているのだ。我らは、蛇である我々を守り、敬ってくれる彼等の恩義に報いる為、皇族でいるに過ぎない。だからこそ、帝国は強くなったのだ」
「ほざけ! ワシなら帝国をもっと大きくしてやれる! そうだ今からでも遅くはない、おい、そこの蛇よ、ワシに玉座を寄越せ! さすれば、お前を許してやろう」
「貴様、皇子を殺害しようしておきながら何を!」
我慢出来なくなった貴族の当主が怒鳴る。
「フン、 たかが蛇を間引こうとしただけのことではないか。大したことではないわ」
「余の言葉も届かぬか。哀れな。
小国とはいえ、元は一国の王とは思えぬ」
「賢しそうに何をいうのじゃ、蛇の分際で。
そうじゃ、思い出した! 10年ほど前にも2匹の蛇を間引こうとしたのじゃが、失敗してしまったな。
いや、1匹は成功したようなものかのぅ」
場内が静まり返った
「…………………では、第1皇子と第2皇子の襲撃も、そなたの仕業か?」
皇帝の怒りが満ちる
「ああ、そうじゃ」
「朱華は10年も人に戻れず苦しんでおるのだ!
貴様、赦さんぞ!」
「たかが蛇ではないか」
「おのれ!……そなたはすぐには殺さぬ。皇子達の毒を混ぜて飲ませてやろう。皇子達の毒は互いに拮抗するのだ、逆に死ねなくなる。ただひたすら猛烈な苦しみを味わい続けるがいい」
「ワハハ、それがどうした、それにしても親蛇よ、2番目の蛇は哀れだのぅ? 」
一度も己を省みることがなかった元、小国の王は、笑いながら最も深い地下牢に連れていかれた。二度と日を見ることはない。
深く息を吐き、冷静さを取り戻した皇帝が視線を移す。
「さてチェリーナ。何か述べたいことはあるか?」
「恐れながら陛下、私は王と父に利用されただけなのです! 私は被害者です!」
元王の断罪される姿を見て、チェリーナが震えながら訴える。
「ほう、さようか。蒼亜、この女の始末はそなたに任せよう、好きにするがいい」
皇帝の言葉にチェリーナが俺を見る。
「助けてください蒼亜様、私は貴方の婚約者だったのよ? そうでしょう? 私は被害者なんだもの、蒼亜様なら私を助けてくれるわよね? ねぇ許すって言って? そうだ、私、蒼亜様の側妻になるわ。
きっと、満足させてあげるから、ね?」
「名を許した覚えはないと言った筈だ! 何が婚約者だ、側妻になるだと? 貴様のような女に触れてたまるか、穢らわしい!」
「ヒィッ! お、お許しを」
「お前は帝国を欺き、のさばり、俺の伴侶を痛めつけ、俺を殺害しようとした。そして朱華兄上の不幸を嬉々として利用した! そもそも、その不幸もお前の父親のやったことだろうが! 死んだ父親の分までお前が償え!」
「い、いやぁ! し、紫蘭様、お願いします、どうか助けてください!」
図々しく紫蘭にまで すがろうとするチェリーナを衛兵が取り押さえた。
「紫蘭にしたことを忘れたのか! 酌量などするものか! お前もあの男と同じように苦しみ抜いて死ぬがいい! 連れて行け!」
「いやあぁぁぁ! 助けて、助けて誰かぁ!」
助けを求めたチェリーナを哀れむ者は一人もいなかった。
罪人のいなくなった場内に静けさが戻る。
「此度のことで、そなた達にも要らぬ苦労をさせた。すまなかった。だが、あの王には帝国の素晴らしさを改めて教えてもらったように思う。貴殿らの支えがあってこその帝国だ。これからも共に民を守って貰いたい。よろしく頼む」
集まってくれた高位貴族の当主達に、皇帝が立ち上がり自ら頭を下げる。
王妃をはじめ、俺を含めた皇族全員が皇帝に続いて頭を下げた。俺の隣にいる紫蘭もともに。
高位貴族の当主達が、静かに膝をついた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【修正版】可愛いあの子は。
ましろ
恋愛
本当に好きだった。貴方に相応しい令嬢になる為にずっと努力してきたのにっ…!
第三王子であるディーン様とは政略的な婚約だったけれど、穏やかに少しずつ思いを重ねて来たつもりでした。
一人の転入生の存在がすべてを変えていくとは思わなかったのです…。
✻こちらは以前投稿していたものの修正版です。
途中から展開が変わっています。
Shadow★Man~変態イケメン御曹司に溺愛(ストーカー)されました~
美保馨
恋愛
ある日突然、澪は金持ちの美男子・藤堂千鶴に見染められる。しかしこの男は変態で異常なストーカーであった。澪はド変態イケメン金持ち千鶴に翻弄される日々を送る。『誰か平凡な日々を私に返して頂戴!』
★変態美男子の『千鶴』と
バイオレンスな『澪』が送る
愛と笑いの物語!
ドタバタラブ?コメディー
ギャグ50%シリアス50%の比率
でお送り致します。
※他社サイトで2007年に執筆開始いたしました。
※感想をくださったら、飛び跳ねて喜び感涙いたします。
※2007年当時に執筆した作品かつ著者が10代の頃に執筆した物のため、黒歴史感満載です。
改行等の修正は施しましたが、内容自体に手を加えていません。
2007年12月16日 執筆開始
2015年12月9日 復活(後にすぐまた休止)
2022年6月28日 アルファポリス様にて転用
※実は別名義で「雪村 里帆」としてドギツイ裏有の小説をアルファポリス様で執筆しております。
現在の私の活動はこちらでご覧ください(閲覧注意ですw)。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
その花だれの?龍のもの
ゆるゆる堂
恋愛
※別サイトにも投稿しています。
龍の嫁になれと言われて厳しい修行をしていた少女実花は、ある日突然「花の乙女が見つかったから、お前は嫁の資格がなくなる」と言われる。
そして、それを内緒で会っていた龍神に愚痴るもスルーされ、やってきた花の乙女は美少女で「龍神」とすでに恋仲だという。
ふざけんな!と実花は花の乙女を連れて龍神に文句を言いに行くが…。
10000字くらいの短編です。
かるーく読んでください。
ざまあはありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 これも全ては読んで下さる皆様のおかげです✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られ……。
💟不遇の王妃アリーヤの幸せへの物語。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる