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春の9ページ
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由紀が見た光景とは・・・。春斗が薫に抱きしめられている姿だった。由紀はその場から逃げるように走り出した。
(なんでこんなにムカつくの・・・なんでこんなに悔しくなるの・・・私は、私は春斗のことなんて、春斗は幼なじみでそれ以上でもそれ以下でもないのに・・・なんでこんなに、涙が止まらないの?)
それは、由紀と玲がいなくなったすぐの話し。春斗の背後から薫が近づいてくる。
「どうしたの?春斗・・・」
薫の呼び掛けに振りかえる春斗。
「いや、なんでもない。大丈夫・・・。」
春斗は薫に心配をかけないと立ち上がろうとする。その時、春斗の手から血がたれていることに気がついた薫。
「春斗!何してたの?すごい血が出てるじゃない?手当しないと・・・」
そう言って春斗の手を掴む薫。春斗は、そんな薫の心配を振り切ろうと「大丈夫だよ」と掴まれた手を振り払う。それでも心配な薫が再び手を取ろうとすると・・・。
「大丈夫だって言ってんだろ!もうほっといてくれよ!」
普段いつものメンバーに対して怒ったことのない春斗の姿を見て、薫が何かを悟ったように尋ねた。
「もしかして・・・由紀となんかあった?」
その言葉に何も言うことが出来ず黙り込む春斗。確信をついたことに気がついた薫が続けて話す。
「黙るってことは・・・やっぱりそうなんだね。春斗ほんとわかりやすいから。何があったの?私で良かったら話聞くよ?中学からの付き合いかも知んないけどさ・・・私らの仲じゃん?」
春斗が薫の顔を見れず振り返ると、そのまま春斗が先程あったことを話し始めた。薫は何も言わず、ただただ春斗の話をうんうんと頷いて聞いていた。
すると、今までに人前で涙など見せたことの無い春斗が、薫の前で泣き始めた。
「俺は、また傷つけちまった。なんで・・・なんで俺はこんなに情けねーんだろーな。自分でした約束も守れない。何が守るだよ。ほんと・・・情けなさすぎだろ・・・。」
薫が春斗の方へ歩き始めると・・・。
パシン!!
中庭に響き渡るほどの力で春斗にビンタをする薫。
「ほんと、どいつもこいつも・・・。私の好きな春斗はそんなこと言わない男だって思ってた。何が好きじゃないよ。嘘も休み休みしなさいよね!今の春斗にはな全くこれっぽっちもときめかない!あんたはいつも由紀のことだけ優先して、一途で、周りになんて流されない、自分をちゃんと持ってた。けど、今の春斗はそうじゃない・・・。」
薫が、春斗にしがみつくように抱きついた。春斗の背中で今にも溢れそうな声をこらえて・・・。
その時だった・・・。
由紀が2人の様子を見て、逃げるように走り出した。背後に薫以外の気配を感じた春斗が振り返ると、一瞬だが走り去る由紀の姿が目に入った。その瞬間、春斗が思わず「由紀!」と叫ぶ。その声に泣いていた薫が頭を上げて「え・・・?」と言葉と涙を失ったように硬直した。
一瞬の出来事に固まっていた2人だったが、すぐに現状を把握して焦り始める。
「やばいじゃん!今の絶対勘違いされてない?」
「やべー、あーなったらテコでも動かねーぞ」
焦る2人。
「と、とにかく!今やるべき事は誤解を解くこと!春斗は由紀を追いかけて!私は玲に連絡するから」
「けど、玲とは今・・・」
「大丈夫!こういう時こそ頼りになるやつなんだから、それよりあんたは由紀を追う!」
そう言うと、薫が春斗の背中を勢いよく叩いた。春斗が痛がる勢いでそのまま走り出した。
(いってー・・・、相変わらず暴力女かよ・・・。でもまぁ、最後のは伝わってきたぜ。)
サンキューな・・・薫。
「由紀のやつどこまで行ったんだよ・・・。教室にもいねーし・・・。」
校内を探し回る春斗のポケットが震え始めた。マナーモードにしていたスマホの着信である。
その相手は・・・。
屋上の扉が勢いよく開いた。そこには屋上から見える景色を眺めながら泣きじゃくる由紀の姿だった。
「なんできたの・・・薫とは良かったの?めっちゃいい雰囲気だったじゃん!」
ひっく、ひっくと涙を堪えながら由紀が春斗に話しかけた。
「は?何言ってんだよ!」
春斗の言葉を遮るように由紀が尋ねた。
「じゃあ何!?あんなの見せつけておいて何よ!熱々のカップルにしか見えなかったわよ!」
その言葉にいつものように反論しそうになる春斗だったが・・・。
(落ち着け、ちげーだろ?なんのためにお前はここにいんだよ!繰り返すのか?あいつらにどんな顔して戻ればいいんだよ!)
春斗が自問自答していると、何も言えず黙っている春斗に由紀が追い打ちをかけるように言った。
「また黙るの!?春斗はいっつもそうだよね!都合が悪くなると直ぐに黙ってさ!てか、なんで私がここにいるってわかったのよ!」
春斗は深呼吸をした。
「ここがわかったのは玲のおかげだ。さっき電話があった。」
そう、電話の相手は玲だったのだ。
もしもし春斗?由紀見つかった?
玲さっきはごめん!
話は後でな、それより由紀は?
まだ・・・。
なら屋上行ってみな?
こうして行き着いたのが屋上だった・・・。
(なんでこんなにムカつくの・・・なんでこんなに悔しくなるの・・・私は、私は春斗のことなんて、春斗は幼なじみでそれ以上でもそれ以下でもないのに・・・なんでこんなに、涙が止まらないの?)
それは、由紀と玲がいなくなったすぐの話し。春斗の背後から薫が近づいてくる。
「どうしたの?春斗・・・」
薫の呼び掛けに振りかえる春斗。
「いや、なんでもない。大丈夫・・・。」
春斗は薫に心配をかけないと立ち上がろうとする。その時、春斗の手から血がたれていることに気がついた薫。
「春斗!何してたの?すごい血が出てるじゃない?手当しないと・・・」
そう言って春斗の手を掴む薫。春斗は、そんな薫の心配を振り切ろうと「大丈夫だよ」と掴まれた手を振り払う。それでも心配な薫が再び手を取ろうとすると・・・。
「大丈夫だって言ってんだろ!もうほっといてくれよ!」
普段いつものメンバーに対して怒ったことのない春斗の姿を見て、薫が何かを悟ったように尋ねた。
「もしかして・・・由紀となんかあった?」
その言葉に何も言うことが出来ず黙り込む春斗。確信をついたことに気がついた薫が続けて話す。
「黙るってことは・・・やっぱりそうなんだね。春斗ほんとわかりやすいから。何があったの?私で良かったら話聞くよ?中学からの付き合いかも知んないけどさ・・・私らの仲じゃん?」
春斗が薫の顔を見れず振り返ると、そのまま春斗が先程あったことを話し始めた。薫は何も言わず、ただただ春斗の話をうんうんと頷いて聞いていた。
すると、今までに人前で涙など見せたことの無い春斗が、薫の前で泣き始めた。
「俺は、また傷つけちまった。なんで・・・なんで俺はこんなに情けねーんだろーな。自分でした約束も守れない。何が守るだよ。ほんと・・・情けなさすぎだろ・・・。」
薫が春斗の方へ歩き始めると・・・。
パシン!!
中庭に響き渡るほどの力で春斗にビンタをする薫。
「ほんと、どいつもこいつも・・・。私の好きな春斗はそんなこと言わない男だって思ってた。何が好きじゃないよ。嘘も休み休みしなさいよね!今の春斗にはな全くこれっぽっちもときめかない!あんたはいつも由紀のことだけ優先して、一途で、周りになんて流されない、自分をちゃんと持ってた。けど、今の春斗はそうじゃない・・・。」
薫が、春斗にしがみつくように抱きついた。春斗の背中で今にも溢れそうな声をこらえて・・・。
その時だった・・・。
由紀が2人の様子を見て、逃げるように走り出した。背後に薫以外の気配を感じた春斗が振り返ると、一瞬だが走り去る由紀の姿が目に入った。その瞬間、春斗が思わず「由紀!」と叫ぶ。その声に泣いていた薫が頭を上げて「え・・・?」と言葉と涙を失ったように硬直した。
一瞬の出来事に固まっていた2人だったが、すぐに現状を把握して焦り始める。
「やばいじゃん!今の絶対勘違いされてない?」
「やべー、あーなったらテコでも動かねーぞ」
焦る2人。
「と、とにかく!今やるべき事は誤解を解くこと!春斗は由紀を追いかけて!私は玲に連絡するから」
「けど、玲とは今・・・」
「大丈夫!こういう時こそ頼りになるやつなんだから、それよりあんたは由紀を追う!」
そう言うと、薫が春斗の背中を勢いよく叩いた。春斗が痛がる勢いでそのまま走り出した。
(いってー・・・、相変わらず暴力女かよ・・・。でもまぁ、最後のは伝わってきたぜ。)
サンキューな・・・薫。
「由紀のやつどこまで行ったんだよ・・・。教室にもいねーし・・・。」
校内を探し回る春斗のポケットが震え始めた。マナーモードにしていたスマホの着信である。
その相手は・・・。
屋上の扉が勢いよく開いた。そこには屋上から見える景色を眺めながら泣きじゃくる由紀の姿だった。
「なんできたの・・・薫とは良かったの?めっちゃいい雰囲気だったじゃん!」
ひっく、ひっくと涙を堪えながら由紀が春斗に話しかけた。
「は?何言ってんだよ!」
春斗の言葉を遮るように由紀が尋ねた。
「じゃあ何!?あんなの見せつけておいて何よ!熱々のカップルにしか見えなかったわよ!」
その言葉にいつものように反論しそうになる春斗だったが・・・。
(落ち着け、ちげーだろ?なんのためにお前はここにいんだよ!繰り返すのか?あいつらにどんな顔して戻ればいいんだよ!)
春斗が自問自答していると、何も言えず黙っている春斗に由紀が追い打ちをかけるように言った。
「また黙るの!?春斗はいっつもそうだよね!都合が悪くなると直ぐに黙ってさ!てか、なんで私がここにいるってわかったのよ!」
春斗は深呼吸をした。
「ここがわかったのは玲のおかげだ。さっき電話があった。」
そう、電話の相手は玲だったのだ。
もしもし春斗?由紀見つかった?
玲さっきはごめん!
話は後でな、それより由紀は?
まだ・・・。
なら屋上行ってみな?
こうして行き着いたのが屋上だった・・・。
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