【完結】桜色の思い出

竹内 晴

文字の大きさ
上 下
6 / 12

春の6ページ

しおりを挟む
 将生まさき春斗はるとに殴り掛かる。しかし、喧嘩慣れしている春斗は将生の拳を軽く交わした。

 「やればできるじゃん?最初からそうやってれば良かったんじゃねーの?」

 そう言うと、殴りかかった勢いで倒れている将生に手を差し伸べる。

 「ふっ、なんか納得したわ・・・今まで悪かったな」

 そう言うと春斗の手につかまり立ち上がる将生。意味深いみしんな言葉を残して何かスッキリしたような表情で帰って行った。

 その頃、とおるたち3人は・・・

 「ねぇ~、春斗どこ行ったのー?」

 春斗がいなくなったことに気がつくかおる。その声に便乗びんじょうするように由紀みゆきも・・・。

 「ほんとだ!玲、あんた何か知ってる?」

 誤魔化ごまかすために嘘をつくことにした。

 「それならトイレ行きたいとかで公園の方に行ったよ?」

 玲が笑顔で応えた。

 「なーんだ、公園行ったんだ」

 薫が少しつまらなそうに言った。

 「そおだ!私らも行こーよ!」

 薫の提案に乗るように由紀も言った。

 「そうね、春斗も多分こっち向かってる頃かもしれないしね」

 2人の勢いに呑まれそうになりながら玲がなだめようとしていた。

 「春斗も子供じゃないんだし大丈夫だと思うよ?そんなことより2人とも女の子なんだから、俺が2人をちゃんとエスコートするからさ」

 そう言うと2人の背中を押す玲。

 「ちょ、どうしたのよ玲?」

 いつもと少し違う様子に気がつく薫。

 「なんか私らに隠し事してない~?」

 玲がその言葉に少しドキッとしてしまうが冷静を装い何とかその場を切り抜けようとしていた。

 「え?そうかな?気のせいじゃない?」

 その反応に「怪し~」と言わんばかりの眼差まなざしを2人が向ける。その眼差しに耐えかねていた玲のメンタルはそろそろ限界を迎えようとしていた。

 (春斗・・・早く戻って来て~)

 そう思っていたその時・・・。

 「わりーわりー、おまたせ~」

 3人を追って春斗が追ってきていた。

 「も~、遅いじゃん!」

 薫が拗ねた表情で春斗に近づく。それを見た由紀が薫の襟元えりもとをつかみそれを阻止した。

 「ほんとに、何かあったのかと思って玲に事情聴取するとこだったじゃん!トイレならトイレって私たちにも言っておいてよね!」

 由紀の言葉に思わず「え?」と言ってしまう春斗。

 「あれ?違うの?」

 2人の反応の違いに違和感を覚える由紀が春斗に尋ねた。

 「いや、そうそう!てかそんなん一々異性に言わねーだろ?普通・・・」

 由紀と薫がお互いに見合って言った。

 「私らいつも言ってんじゃん?」

 さも当然のように薫が春斗に言った。

 「そこな、そういうとこだよ・・・少しは女の子らしくしろよ・・・」

 呆れてものも言えず頭を抱える春斗。

 「けど、春斗に何もなくてよかったよ~。なんか、春斗誰かにつけられてるみたいだったから。」

 由紀がホッとため息をつき玲と春斗が「え?」と思わず口に出してしまった。

 「ちょっと待て、それっていつから?」

 春斗が由紀に尋ねた。由紀は少し首をかしげて思い出しながら話した。

 「私たちが4人で一緒に歩いてて、公園行く時の交差点あたりかな?なんか後ろ見たら一瞬電柱のとこに人影あったからさ~。なんか怖くて言えなかったんだよね・・・。」

 春斗は(ちょうど俺らが別れる前じゃん・・・)と考えると同時に(気づいてなくて良かった)とホッとする気持ちが混ざった感情が込み上げて来ていた。

 「え?まじ~?全然気づかなかった・・・」

 薫が気持ち悪がりながら由紀と話していた。

 「大丈夫だった?」

 玲が小声で春斗に尋ねた。

 「わりーんだけどさ、ここじゃ言えねーから明日またいつもの場所でいいか?」

 春斗の提案に少し疑問を抱きながらも玲はうなずいた。

 「わかった、春斗がそう言う時って由紀ちゃん関係だもんね」

 玲が春斗をからかうように言った。

 「うっせー!別にそんなんじゃねーよ」

 春斗が顔を赤くして言った。玲が「ふーん」とニヤニヤしながら春斗をみた。

 「その顔気持ち悪いからやめろ」

 春斗が頭を抱えていた。

 「あ、私と玲この辺りだから~後は2人で帰りなよ!」

 薫が春斗と由紀に言った。薫が何か言い残したように由紀のそばにいき耳元でささやいた。

 「抜けがけは許さないからね!」

 薫が由紀に冗談交じりで言うと由紀が・・・。

 「そんなん出来てたらとっくに告白できてるって!」

 由紀が照れながら薫に言い返した。薫は「そっか」と納得した表情でうんうんとうなずいた。

 「何やってんだよ、行くぞ由紀~」

 春斗が由紀を呼ぶと、由紀が慌てて駆け寄る。薫が2人きりになったことを確認すると、玲に疑問を投げかける。

 「あのさ、玲も気がついてたんだね?」

 玲が2人の方を見ながら返事をする。

 「何が?」

 「私もさ・・・本当は知ってるんだー。春斗が由紀を好きだってこと・・・。ほんとわかりやすいよね。」

 薫が少し悲しげな表情で言うと続けて話し始める。

 「玲さ、由紀が好きなんじゃないの?あんたすごいよ・・・。」

 薫の言葉に込められた意味とは・・・。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

それで彼女はいなくなった

こうやさい
青春
 彼女は最近、スマホばかりを見ている。  いろんな意味でよくある本当にファンタジーかは想像に任せる話、つまりカテゴリ以下略。  うん、このバターンの話多いよね。無駄に語り手の発想が。  なんかページが重いです。本体の調子でしょうが原因が特定出来ないので待機放出が続いたら察してください。待機ちょっと増えたのでちょうどいいといえばいいけど、発熱が本格的になる夏まで引っ張りたい気もしつつ。  ……スマホで書くとかコピペとかって出来る人がいることがこんなの書いといて不思議でならない。こちとらタップも怪しいというのに。  続きは需要の少なさから判断して予約を取り消しました。今後投稿作業が出来ない時等用に待機させます。よって追加日時は未定です。詳しくは近況ボード(https://www.alphapolis.co.jp/diary/view/206551)で。 URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/920757662

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。

ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」  出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。  だがアーリンは考える間もなく、 「──お断りします」  と、きっぱりと告げたのだった。

婚約者に心変わりされた私は、悪女が巣食う学園から姿を消す事にします──。

Nao*
恋愛
ある役目を終え、学園に戻ったシルビア。 すると友人から、自分が居ない間に婚約者のライオスが別の女に心変わりしたと教えられる。 その相手は元平民のナナリーで、可愛く可憐な彼女はライオスだけでなく友人の婚約者や他の男達をも虜にして居るらしい。 事情を知ったシルビアはライオスに会いに行くが、やがて婚約破棄を言い渡される。 しかしその後、ナナリーのある驚きの行動を目にして──? (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

処理中です...