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春の3ページ
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4人は仲良く下校していた。
「てかさ、約束ってどんな約束な訳?」
玲が春斗に問いかける。その疑問に続くように薫が割り込む。
「それ、私も気になる!」
逃げ道を失ってしまった春斗。少し焦った表情をしながらも必死で現状を変える手段を模索していた。
「私も覚えてないや、どんな約束だっけ?」
トドメを刺すように由紀が言った。
八方塞がりとなった春斗が口を開いた。3人はその口元に集中する。
「やべっ、今日用事あったの忘れてたわ」
「それじゃ先帰るわ」
春斗は逃げるようにその場を離れた。あまりにも自然な流れに3人は思わず言葉を失っていた。
「逃がした!」
3人は声を揃えて言った。しかし、それに気がついた時には遅く、春斗の姿はなかった。
その頃、上手くその場から逃げることが出来た春斗は、家に向かわずに小さな公園に来ていた。
「懐かしいな、遊具ってこんなに小さかったっけ?」
公園で遊具を見ながら、1人思い出に浸っていた。
(あの頃の由紀はほんと泣き虫で俺がいないとダメだったのにな・・・)
春斗は公園を見ながら昔のことを思い出していた。
-10年前の公園-
「おい泣き虫~、今日は付き人いないのかよー」
声の主は由紀と春斗の同級生のガキ大将のような男の子だった。
「ぇぇーん、やめてよ~」
この泣いているのが当時5歳の桜乃由紀である。
「春斗は付き人じゃないもん!」
ガキ大将に由紀が反抗するも、そんなことはお構いなしに由紀に言った。
「付き人じゃんかよ!いつもいつも桜乃の隣ついて行ってるじゃんかよ!それを付き人って言って何が悪いんだよ!」
そう言うと、ガキ大将は由紀の髪についていた髪飾りを取り上げた。
「これはもう俺のな!俺に逆らった罰だ!」
強引に由紀から髪飾りを取り上げると、由紀が取れないように高々に手を上げた。
「返して!それ大事な物なの!」
由紀が泣きながらガキ大将の手にある髪飾りを何とか取り返そうと飛び跳ねていた。勿論届くはずもなく軽くあしらわれた。
「うっせー!もう決まったんだよ!返して欲しかったら俺から取り返してみろよ!」
由紀をあざ笑うように言った。
その時だった。
「おい、くだらねえーことしてんじゃねーよ」
ガキ大将が鼻で笑いながら声の主を見た。その瞬間青ざめたように硬直した。
「その手に持ってるもん返せって言ってるのが分からないのか?」
声の主は当時5歳の井上春斗だった。
「う、うるせー!お前に関係ないだろ!」
怯えながらも反論するガキ大将。
「また痛い思いしたいならいいぜ?」
春斗がガキ大将を睨むと、蛇に睨まれた蛙のように手に持っていた髪飾りを放り投げてその場から逃げ去った。
「怖かったよ~」
髪飾りを拾い涙を流す由紀。その姿を見た春斗は、由紀に近ずきそっと抱きしめる。
「俺が護るから」
涙を流す由紀を抱きしめながら春斗がささやいた。
「もう二度と由紀が怖い思いしないようにする。約束するから・・・。」
春斗の言葉に少し落ち着いたのか由紀が尋ねる。
「ホントに?ホントに春斗が護ってくれる?」
由紀の言葉に春斗が小さくうなづく。
「約束だよ!?」
由紀はそう言うと小指を春斗に差し出した。
「指切り・・・」
由紀の小さな手を見て春斗が小指を交えた。
「やっぱ覚えてなかったか・・・。そうだよな、何年前の話だって感じだよな。」
時は現在、公園のベンチで1人夕日に染まる空を見つめながら春斗がつぶやいていた。
(ごめんね。ちゃんと覚えてたよ。)
同じ頃、由紀もまたその頃を思い出し心で謝っていた。
「日もくれたしそろそろ帰るか・・・」
春斗がベンチをたち歩き始めた。過去の思い出に浸りながら歩みを進めていると、春斗の目の前に人影が現れた。
「やっぱりここにいた」
その声で我に返った春斗の目に飛び込んできたのは、先程別れの挨拶を済ませたばかりの由紀だった。
あの後、由紀も春斗の後を追うように2人と別行動をしていたのだ。
「私ね、春斗に言わないといけないことがあったの・・・」
由紀が少し恥ずかしそうな表情で春斗にいった。
春斗が息を呑む。
「私ね・・・」
この時、春斗の脳裏で1つの心理戦が行われていた。
(まてまてまてまて、これってつまりあれか?こ、こここ、告白?)
(まだ心の準備が・・・って何考えてんだ俺!男ならここはビシッと腹決めろ!)
(いや、待て。落ち着け・・・。冷静に考えろ?このタイミングで告白はないだろ・・・。これはあれだ、伝えそびれたことがあってそれを言いたいだけだ。よし!間違いないな・・・。)
そんなことは知らず、由紀が続けて言葉を出した。
「あのね、こんなことみんなの前で言えなくて・・・」
その言葉に再び動揺する春斗。
(早まるな由紀!俺たちは幼なじみ・・・。その言葉の重みもお前はわかっているはずだ。後悔するぞ!絶対に後悔するから!)
ついに2人の恋は実るのか・・・。
「てかさ、約束ってどんな約束な訳?」
玲が春斗に問いかける。その疑問に続くように薫が割り込む。
「それ、私も気になる!」
逃げ道を失ってしまった春斗。少し焦った表情をしながらも必死で現状を変える手段を模索していた。
「私も覚えてないや、どんな約束だっけ?」
トドメを刺すように由紀が言った。
八方塞がりとなった春斗が口を開いた。3人はその口元に集中する。
「やべっ、今日用事あったの忘れてたわ」
「それじゃ先帰るわ」
春斗は逃げるようにその場を離れた。あまりにも自然な流れに3人は思わず言葉を失っていた。
「逃がした!」
3人は声を揃えて言った。しかし、それに気がついた時には遅く、春斗の姿はなかった。
その頃、上手くその場から逃げることが出来た春斗は、家に向かわずに小さな公園に来ていた。
「懐かしいな、遊具ってこんなに小さかったっけ?」
公園で遊具を見ながら、1人思い出に浸っていた。
(あの頃の由紀はほんと泣き虫で俺がいないとダメだったのにな・・・)
春斗は公園を見ながら昔のことを思い出していた。
-10年前の公園-
「おい泣き虫~、今日は付き人いないのかよー」
声の主は由紀と春斗の同級生のガキ大将のような男の子だった。
「ぇぇーん、やめてよ~」
この泣いているのが当時5歳の桜乃由紀である。
「春斗は付き人じゃないもん!」
ガキ大将に由紀が反抗するも、そんなことはお構いなしに由紀に言った。
「付き人じゃんかよ!いつもいつも桜乃の隣ついて行ってるじゃんかよ!それを付き人って言って何が悪いんだよ!」
そう言うと、ガキ大将は由紀の髪についていた髪飾りを取り上げた。
「これはもう俺のな!俺に逆らった罰だ!」
強引に由紀から髪飾りを取り上げると、由紀が取れないように高々に手を上げた。
「返して!それ大事な物なの!」
由紀が泣きながらガキ大将の手にある髪飾りを何とか取り返そうと飛び跳ねていた。勿論届くはずもなく軽くあしらわれた。
「うっせー!もう決まったんだよ!返して欲しかったら俺から取り返してみろよ!」
由紀をあざ笑うように言った。
その時だった。
「おい、くだらねえーことしてんじゃねーよ」
ガキ大将が鼻で笑いながら声の主を見た。その瞬間青ざめたように硬直した。
「その手に持ってるもん返せって言ってるのが分からないのか?」
声の主は当時5歳の井上春斗だった。
「う、うるせー!お前に関係ないだろ!」
怯えながらも反論するガキ大将。
「また痛い思いしたいならいいぜ?」
春斗がガキ大将を睨むと、蛇に睨まれた蛙のように手に持っていた髪飾りを放り投げてその場から逃げ去った。
「怖かったよ~」
髪飾りを拾い涙を流す由紀。その姿を見た春斗は、由紀に近ずきそっと抱きしめる。
「俺が護るから」
涙を流す由紀を抱きしめながら春斗がささやいた。
「もう二度と由紀が怖い思いしないようにする。約束するから・・・。」
春斗の言葉に少し落ち着いたのか由紀が尋ねる。
「ホントに?ホントに春斗が護ってくれる?」
由紀の言葉に春斗が小さくうなづく。
「約束だよ!?」
由紀はそう言うと小指を春斗に差し出した。
「指切り・・・」
由紀の小さな手を見て春斗が小指を交えた。
「やっぱ覚えてなかったか・・・。そうだよな、何年前の話だって感じだよな。」
時は現在、公園のベンチで1人夕日に染まる空を見つめながら春斗がつぶやいていた。
(ごめんね。ちゃんと覚えてたよ。)
同じ頃、由紀もまたその頃を思い出し心で謝っていた。
「日もくれたしそろそろ帰るか・・・」
春斗がベンチをたち歩き始めた。過去の思い出に浸りながら歩みを進めていると、春斗の目の前に人影が現れた。
「やっぱりここにいた」
その声で我に返った春斗の目に飛び込んできたのは、先程別れの挨拶を済ませたばかりの由紀だった。
あの後、由紀も春斗の後を追うように2人と別行動をしていたのだ。
「私ね、春斗に言わないといけないことがあったの・・・」
由紀が少し恥ずかしそうな表情で春斗にいった。
春斗が息を呑む。
「私ね・・・」
この時、春斗の脳裏で1つの心理戦が行われていた。
(まてまてまてまて、これってつまりあれか?こ、こここ、告白?)
(まだ心の準備が・・・って何考えてんだ俺!男ならここはビシッと腹決めろ!)
(いや、待て。落ち着け・・・。冷静に考えろ?このタイミングで告白はないだろ・・・。これはあれだ、伝えそびれたことがあってそれを言いたいだけだ。よし!間違いないな・・・。)
そんなことは知らず、由紀が続けて言葉を出した。
「あのね、こんなことみんなの前で言えなくて・・・」
その言葉に再び動揺する春斗。
(早まるな由紀!俺たちは幼なじみ・・・。その言葉の重みもお前はわかっているはずだ。後悔するぞ!絶対に後悔するから!)
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