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第六章 異世界ツアー

無人島ツアー

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「ねえ、アカネちゃんお願いしますよ」

「何度言えば理解してくれるんですか。
私は、友達や先輩を異世界に連れて行くだけで、そういう商売をしているわけじゃありませんって」

「でも、実際にはそういうサービスになっちゃった訳だから、一か所だけって不公平じゃない」

「それは、結果的にそうなっただけです。あんまりしつこいと、また警察に通報しますよ」

「それは勘弁、じゃまた来るからね」

「もう来ないでください」

 アカネの登校中の一コマである。

「やっぱり、当分は瞬間移動で登校しようかな」

「でも、今日の人って東京ジャニの国立君でしょ。
噂になっているわよ」

「異世界村を作らせてくれって、しつこいったらないわよ……」

「あそこもメンバーがおじさんばっかりだから必死なんだよ。
いっそのこと、無人島におきざりにしてあげたら?」

「アリサちゃんねえ、そんなことしたら私が殺人犯になっちゃうよ」

「あはは、異世界無人島生活。
翌週迎えに行ったら、ビデオカメラだけが残されていましたって、うけると思うけどな」

「そんなのオンエアされないから。
でも、無人島かあ、それなら往復だけだし浅見さんに相談してみようかな」

「本気?」

「だって、テレビ業界の人って、しつこいんだもん」

 こうして、異世界無人島ツアーをスタートすることになった。
比較的安全な島を選び、一週間放置する。
というか、週に一度だけ行き来する。
島の広さは一つの町くらいあり、湧き水もあった。
一応、保健所で飲料に適しているか検査もしてもらった。

 島は、地球でいえば沖縄付近で、ほかに陸地は見えない。
食用にできる果実も適度にあり、暮らそうと思えばできなくもない。

「国立さん、本当に異世界で生活したいんですか?」

「えっ、連れて行ってくれるの?」

「完全な無人島で、当然ですが他のテレビ局も入りますよ」

「いい。そんなのは問題ない」

「私は、週に一回往復するだけで、他には何もしません。
お医者さんもいませんし、誰かが病気や怪我をしても自分たちで何とかしていただきます」

「もしかして、ガチのサバイバル?」

「そういうことです」

「水や食べ物は?」

「水は湧いています。
食料は果実と、釣った魚くらいですね」

「いいじゃん、それ」

 関東テレビが幹事局となり、集合場所も提供してもらう。
航空写真をもとに、エリア分けと局同士の事前打ち合わせがされ準備は整った。
そして、3月の末、無人島異世界生活がスタートする。

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