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第二章

飛空艇

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「シュウ、対策はないのか?」

「とりあえず、長距離探査ロングレンジサーチを使える俺とサクラで警戒にあたります。
今のところ、それしか方法がありません」

三日後、今度はエルフの里が襲われたと連絡が入る。

「くそう、どうすればいい……」

「エルフとドワーフをゴルに避難させては?」

「畑と鉱山を閉鎖するのは、影響が大きいし、なにより本人たちが承知しないだろう」

「やはり、北の山脈越えで、本拠をたたくしかないのかよ」

「本拠ですか?」

「ああ、ガーゴイルは北の山脈を超えてくる。まあ、目撃情報だけだがな」

「俺、偵察に行ってきますよ。
見えている範囲なら瞬間移動できますから」

「だが、まったく情報がないんだぞ。
単独では危険すぎる」

「単独だからいいんですよ。
何かあったら、躊躇しないで瞬間移動できますから」

「まあ、それしかないんじゃろうな」

「カエデたちには黙っていてくださいね。
付いてくるって言いだしかねませんから」

「ああ、わかっている……」



金属加工の工場でジュラルミンの板を譲ってもらう。
腐植には弱いが、軽く丈夫なため、航空機に使われているものだ。
10mm厚で2m四方のサイズを20万円。
それから、強化タイプのアクリル板。

何を作るかって、当然戦闘機に決まっている。
デルタ翼の全翼機。寝転がって操縦するタイプで、両脇にクロウとサクラの搭乗スペースも確保。
下面にミスリルをコーティングし、空気取り入れ口だけを設置。
飛行と加速用の風魔法を書き込み、試験飛行で振動の大きな部分を微調整していく。
もう、男のロマン満載で、搭乗も瞬間移動なので継ぎ目なし。

「急発進や急な方向転換すると、体にかかるGが半端ないな。
どうにか対策しないと……サクラとクロウは平気だった?」

『スノボーみたいだニャ』

意味がわからん。

『この飛行艇と一体化する魔法を使っています。
それよりも、重力魔法でGを中和しては如何ですか』

「Gの中和か、やってみよう……なんか、体が浮いてるんですけど……」

『標準重力は残すように設定しないと……』

「ん、ああ、こうか……おっ、戻った。
だけど、なんか乗ってる感じがしないなぁ……
中和の割合を一割にして……おっ、いい感じだ」

『つまらんニャ』

「あとは、ミサイルの収納と射出口を作って、翼と先端を鋭利にして全体に強化を施す……と、こんな感じでいいかな」

『山脈まで300km程度ですが、瞬間移動を繰り返したほうが早いと思うのですが……』

「いいの、ロマンなんだから。よし、出発!」

『シュウ、空しか見えないニャ』

「ああ、クロウには探査サーチのスキルがないんだった。スキルエディットで…あれ?」

『私たちのスキルは、神様が直接設定してくれましたから、スキルエディットでは修正できません』

「そうなんだ…、ゴメン、クロウは我慢して」

『つまらんニャ』

クロウは丸くなって寝てしまった。


「すげえ、山脈を越えたら氷の世界かよ」

『シュウ、寒いニャ……』

「ああ、結界で室温を設定しておこう」

『植物も生えていませんね』

「しっかし、雪と氷だけで何もないよな……」

『探査に少しですが魔物の反応がありますけど……』

「たいした魔物じゃなさそうだよね」

『シュウ!正面にメタルガーゴイルの反応があります』

「ああ、数は……どうみても数千はいるよな……
まてよ、あいつら生物じゃないよな……」

「ゴーレムに近いかもしれませんが……」

「やってみるか、『収納!』」

シュン!

『えーっと、それ反則ですよね』

「うーん、ここは派手な空中戦のシーンかと思ったんだけど……
やっぱりさ、適度な量にしてくれないとさ。こっちだってミサイルの準備とか、こんな戦闘機まで作ったんだからさ……」
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