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第一章

そして未来へ……

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この魔道具という存在に、ケビンは大きな関心を持ち、講習会を開くことも決まった。
ケビンには、俺の能力を隠さず説明してある。

「ルシア、このミスリル銀にクギで字を書くイメージだ。
書く文字は、筒の先から風を出す。
やってごらん」

「うーん……釘が引っかかってうまく刻めません」

「そこまでリアルにイメージする必要はないよ」

「これって、実際にクギで書いちゃだめですか?」

「やったことないけど、試してみようか」

ルシアはケビンの妹になる。
俺は筒状だったミスリル銀を平板に加工。それと、鉄でペンを作ってルシアに手渡した。

「えっと、筒の……先から……風を……出す ですね」



「お兄様、わ、私にもできました~」

「ルシア!本当か!」

「見てください、この筒に魔力を流すと風が出ます、試してみてください」

「どれ……おお、本当に風が出てくる……」

「ルシア、ステータスを確認してみてくれるかな」

「はい、ステータス!……
あっ、魔道具技師っていうのが増えてます!
シュウさん、すごいです!」

「いや、ルシアが頑張ったからだよ」

「うんうん、ルシアお前は我が国の魔道具技師1号だ。
何かご褒美をあげないとな」

「えっ、でしたらシュウさんのお嫁さんになりたいです」

「「ええっ⁉」」

「シュウの嫁か……複雑な心境ではあるが、願ってもないことではあるな……」

俺は、他人事だと聞き流していた。 同名の誰かだろうと。

「そうでしょ!
政略結婚として、これほどの相手はいませんもの」

「……だそうだ、シュウ 妹を貰ってくれ」

「……えっ?」

「領主の妹だ、不足は無いだろう」

「俺……結婚してるの、知ってるよな」

「知ってる。 カエデさんは素敵な女性だ」

「俺は、カエデと別れるつもり……無いですから!」

「知っているが……お前、一夫三妻制を知らないのか?」

「山菜?」

「そうだ、夫は毎日山へ山菜取りに……って、違う。 三人の妻だ!」

「おお、一人ボケ突っ込み!」

「この町も、ゴルの町も一夫三妻制だ。問題はなかろう」

「そうなの?」

「ええ」

ルシアは即答してくれた。
少し青みがかったストレートヘアに青い瞳。スタイルの良さはカエデに若干劣るものの美しい女性だ。
切れ長の目は知的レベルの高さをうかがわせる。 申し分のない女性といえる。
カエデを武の女神とするなら、こちらは智の女神だ。

「現地妻だ、カエデさんも異論はなかろう」

帰って聞いてみると約束し、瞬間移動で帰宅する。

カエデは大賛成だった。 向こうの世界のことは誰にも話せないため、秘密を共有できる人が現れるのは嬉しいことだと言った。
一緒に渋谷で買い物したり、スィーツを食べ歩きできると目を輝かせてさえいる。
……はあ、俺は一人いれば十分なんだけど……奥さん。

「そうだ! ウェディングドレスを買って、教会で式を挙げるの。 そのあとで記念写真を撮ってもらうの。 
もちろん2着よ。3人の記念写真も撮りましょうよ」

「キリスト教の教会では、一夫多妻なんてたぶんやってくれないよ……
そういえば、本物の神様知ってるんだよな。
神様を祀る神殿を作って、そこで三人で式をあげよう。
神父役は……ゴーレムを作ろう。シスターも作って。
パイプオルガンは、電子ピアノでいいだろう。
ソーラーパネルを買ってきて照明もつけよう!」

「BGMは、サラマワシの作ったコスモスね。 私大好きなの!」

「サクラ、神様に連絡してくれる。 相談したいことがあるからって」

『なんじゃ、教会のことなら構わんぞ。 好きにしろ』

「そうなんだけど、神様の象徴・ご神体?どうしたらいいのかな」

『わしらは精神体だから姿というものはない。 好きに作ればいいじゃろう』

「女神像でもいいのか?」

『構わん。 名前もないから好きにつければいいぞ』

「りょーかい。 ありがとう……ところで、一夫多妻って許されるの?」

『それな、永遠の愛を誓うとか言っておきながら、死別した後は平然と再婚するじゃろ。
時間軸が違うだけで、あれも、一夫多妻の一つの形じゃと思わんか。 
わしらは、そんな事まで関与できんよ。 愛せるなら愛すればよい。 それだけじゃよ』

「ん、納得」

今回必要なスキルは、神殿建築技師とゴーレム技術者。彫刻家と電気技師だな。
手ごろな大理石の鉱脈をまるまる収納し、町の東端、城壁の外側に出現させる。
不要な部分を切り取り形にしていく。
女神像も切り出しで、子供を抱き慈しむ表情だ。 これが、神様の本質だと俺は感じている。
見守るだけであり、決して介入はしない。 〇〇神の加護なんてあるわけがない。
俺の場合は特例中の特例だ。世界の綻びに巻き込まれた俺が、生きていけるだけの能力付与。
たった一つの能力が、例外すぎただけの話。



カラーンカラーン 教会の鐘が鳴る。

この世界で、おそらく初めての神前結婚式。
俺の両側には、カエデとルシア。
電子ピアノが奏でる厳かなコスモスに導かれて入場する俺たち三人。
主だった人たちに祝福されながら、ゴーレム神父の前に進むと花びらが降ってきた。

『わしからの祝福じゃよ』

神父の導きにより愛を誓う俺たち。
指輪の交換と誓いのキス。

いつか誕生するであろう俺たちの子供よ、お前たちが生まれてくる前に、この世界をもっともっと面白くしてやる。
冒険者でも魔法使いでも政治家でもいい。
どんな道を選んだとしても、退屈しない世界を用意しておいてやる。

待ってるぜ!

第一章 完
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