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第一章

初めての依頼

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「それでだな、この町の脅威のひとつに、定期的に北の迷宮から湧いてくるスケルトンとゾンビの問題がある」

「アンデッド系ですね」

「ああ、半年に一回程度の頻度で、だいたい2000から3000体くらいが迷宮から溢れてこの街に襲いかかってくる。
俺たちはアンデッドエラーと呼んでいるが、お前の前任者も、2年前の夏、アンデッドエラーの犠牲となった」

「でも、3000体を15人なら、それほどでもないんじゃ……」

「ああ、一人で100体程度を倒すのならお前レベルでも可能だろう。
だが、均等に来てくれるワケじゃないし順番を守ってくれるワケでもない。
奴らは本能的に弱い奴から狙ってくる。お前、囲まれて同時に襲ってくる20体に対処できるか?
まあ、どっちにしても迷宮に出向いて対アンデッドの訓練はしてもらうがな。
それから、食堂の件はマジで考えてくれ。急いで答えを出さなくてもいいから」

「15位って事は、ランクもゴールドの1よね」

「ああ、そうだな。そっちは任せたマリー。
それから、シュウは明朝また顔を出してくれ。
領主謁見のスケジュールを調整するから」

 ギルドカードが金色のものに交換された。俺は依頼表の貼ってある掲示板を確認したがオークやミノタウロスなんて書かれているものは貼ってなかった。
ゴールドカードだから、掲示されているものは全て受注可能なのにな。

 仕方なく、カウンターのマリーさんに聞いてみる。

「マリーさん、美味しい肉の採れる依頼ってありませんか?」

「美味しい肉ですか、私はさっきのクマ肉で十分ですけど」

「もっと美味しい肉で作ったほうが楽しくありませんか?」

「ドラゴンの肉はとっても美味しいそうですよ」

「ドラゴンですか……まだハードルが高そうですね。他にはないですか?できれば身近なところで」

「そういえばさっき、畑を荒らすイノシシ退治の依頼が……ああ、これこれ、イノシシの親子連れで……」

「それ、場所はどこですか?」

「えっと、10kmほど南に行った10件ほどの集落ですね」

「それ受けます」

「報酬は低いわよ」

「かまいません」

 早速、依頼書を片手に南に向かう。
10kmを一時間弱で走ると、集落が見えてきた。
依頼者に尋ねると、昨夜も現れたという。

「サクラ、匂いは残ってる?」

『大丈夫よ』

 犬ほどではないが、猫も嗅覚に優れている。
サクラの誘導で、ほどなくして親子で寝ているイノシシを見つけることができた。
風下から慎重に接近し、頭への一撃で親イノシシを屠る。
その物音で6匹のうり坊たちが騒ぎ出すも、サクラとクロウによって一網打尽にした。
親イノシシはでかかった。2m近くある。

 収納にしまい、依頼者に確認してもらうと間違いないとの事。
依頼書に完了確認のサインをもらい、うり坊一匹をおすそ分けして引き返す。

「依頼完了ですね。報酬の銀貨5枚は現金がいいですか?それとも貯めておきますか?」

「貯めておいてください」

 カード発行者は、同時に専用の口座を設けることができる。
利息はつかないがカードを提示すればいつでも現金を引き出すことができるので便利だ。

「ワタシのお肉……」

 背後霊のようにカエデさんがいた……流石に七位……気配は感じなかった。

「はいはい、新しい肉を手に入れましたからね。でも、一晩くらい寝かせないと美味しくならないので、今日はクマ肉で我慢してくださいね」

 ギルドの素材倉庫で血抜きと解体をさせてもらう。
借用料と助っ人料としてうり坊一匹。

「でかくていい肉ですね」

「ええ、色々な料理に使えます」

「部位によって分けているのはどうしてでしょう」

「部位によって、脂の入り方とか柔らかさが違いますから、それに適した料理があるんですよ」

 切り分けながら、ここはトン……いやイノカツだなとか、シチューだなとか考える。
カエデさんも嬉しそうだ。
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