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第一章

非常勤自衛組織第15位

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 翌朝ギルドに顔を出すと、受付のマリーさんからギルド長に合うよう言われた。
案内されるままにギルド長へ移動すると、相変わらずスキンヘッドのコンゴウさんがいた。

「シュウか、よく来たな。道場はどうだった?」

「とりあえずは基礎を叩き込んでいただきました。
紹介いただき、ありがとうございます」

「俺に感謝してるんだな。
じゃあ一点目は……オヤジにやったオモチャを俺にもよこせ」

「オモチャ……ですか?」

「ああ、お前が腰にぶら下げている、シュリンプなんとかって美味そうな名前のやつだ。強化版の方だぞ」

「いいですよ。予備のゴムはたくさんありますから」

 収納からスリングショットを取り出して手渡す。

「カエデの分はないのか?」

「本体の方がないんですよね。これ、鍛冶の人にでも作ってもらえませんかね」

「分かった。検討しておく」

「二点目だ、俺は今腹が減っている……」

「はあ……」

 言いたいことは分かったが、素直に応じるつもりはない。

「俺は、こってりしたモンが好きだ……」

「はあ……それで?」

「俺は気のきかないヤツが娘の近くにいると殴りたくなるんだ」

「あっ、クマドンですね。でも、麦飯がないんですよね」

「おいマリー、食堂からメシだけもらってきてくれ」

「じゃあ、三点目だ。オヤジが十五位に任命した以上、領主への謁見が必要だ。
他にも色々と説明せにゃならんが……くそっ、オヤジのやつ丸投げしやがって」

 領主って変換されたけど、厳密には王様に近いんだろうな。
もしくは首長か。語感で分かるからどうでもいいけど

「十五位って何ですか?」

「そっからかよ……」

 この町には、時々訪れる脅威に対抗するため、領主直属の兵士の他に十五人の非常勤自衛組織がある。
強さ順に一位から十五位まで割り振られており、2年間不在だった十五位に俺が任命されたって事だそうだ。
ちなみに一位が先生で、二位がギルマス。それ以降は概ね道場生か冒険者で構成されており、緊急事態の際は最優先で対応に当たらなければならない。
手当はでるが名誉職でもあり、特権として領主軍と道場の設備・武具を無償で使うことができる。
カエデさんも七位に任じられているそうだ。

「カエデと結婚したければ、カエデの上位でなければ認めない。
認定は俺とオヤジが行うから、お前には無理だな。わっはっは」

 おい、娘の婿選びに私情を挟むなよ……と突っ込みかけたところへ、マリーさんがドンブリと茶碗によそわれたご飯を持ってきた。

「あっ、僕は食事済ませてますから……」

「えっ?」「えっ……?」

 どうやら、マリーさんの分だったようだ……

「ぐっ、うまいな……」

「ええ、おいしいですね」

「あいつら、一週間も自分たちだけこれを食ってたのかよ……許せんな」

「ええ、思い知らせてやりましょう」

「よし、シュウ、お前ここの食堂で働け!
去年、料理長がポックリ逝っちゃってな、未亡人であるおばちゃんだけなんだが……味がな……」

「コンゴウちゃんにしてはナイスアイデアですわ」

「イヤですよ。せっかく冒険者になったんですから……
道場でも賄いやれとか言われましたし、カエデさんからは専属の肉係をやれって……」

「なにっ!カエデから専属の肉係だと……あいつ……まさか」

「睨まないでくださいよ。お断りしましたから」

「断っただと!お前、人の娘をなんだと思ってるんだ!」

 はあ……ため息しか出ないわ……
だけどな、今後の身の振り方も考えなくっちゃいけないし、部屋の調味料や食材もどんどん減っていくし、どうしたもんかな。
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