魔法指導師 -異世界職業斡旋所-

モモん

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第三章 小さな勇者たち

第30話 エルフの森

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 島のハウスでは、字の読み書きは殆ど問題なくできるようになっており、そろばんも予想以上に上達していた。
 そして、ロンドの狙い通り、素早く暗算できる子も現れ始める。

 全員が魔力量を増やし、水魔法は完璧にマスターして氷魔法に進んでいる。

「この先はどうするの?」

「別の施設から子供を連れてくるつもりなんだ。」

「えっ、まさか孤児を全員引き取るつもり?」

「うん。そうしようと思ってる。」

「それで、その後はどうするの?」

「全員、希望する仕事に就いてもらうさ。城だろうと冒険者だろうと普通の店だろうとさ。」

「まあ、あなたがそう思っているなら、私も協力するわ。」

「ありがとう。」

「でもさ、子供たちが島に残りたいって言ったらどうするの?」

「当面は、他の子供たちの世話とか、教育にあたってもらうんだけど、この島を開発するにも限度があるだろ。」

「そうだね。」

「だから、大陸に町を作ろうと思っているんだ。」

「町?」

「候補地は見つけてあるんだ。ここから北に500kmくらい行ったところに、広い森があってさ、バルチとガルタの中間で、両国とは険しい山で隔てられていて不干渉のエリアになっているんだ。」

「そんな場所があったんだ。面白そうだね。」

「今は、そこにニワトリと豚を放して、様子を見ているんだ。もちろん。外周にはアルミの看板を立てて俺の名前を刻んであるから、誰かが割り込んできていても追い出すつもりなんだけどね。」

「広さはどれくらい?」

「この島の20倍くらいあるんじゃないかな。」

「結構広いね。そこへ町を繕うっていうんだね。」

「ああ。王族も貴族もいない、普通の平民だけで運営する町だよ。」

「どんな場所なのか見てみたいな。」

「いいぞ。じゃあ3人で行ってみるか。」

 ロンドは2人を転移で町の予定地に運んだ。

「へえ、草原が続いてて、いい場所なんじゃないの。」

「だろっ。東には広い森があるし、そこに川も流れてる。島からもそこそこの距離だし、気候も適度だと思うんだ。」

「でも、ここって魔物とかいるんじゃないの?」

「探査で調べた限りでは、それほどもんだいになりそうな奴はいなかったけど。」

「だってほら、あそこに散らばってるのニワトリの羽じゃないかな。」

「あれっ、そういえば1週間前にニワトリ50羽と豚50頭を放したんだけど、……見当たらないな……」

「あっ、向こうに豚はいるわね。」

「どうみても数が少ないな……ちょっと、空から様子を見てみようか。」

「えっ、私まだ教えてもらってないよ。」

「そうだったか。いじゃあ……これが呪文だ。」

「やった!全能なる孔雀院アリシア様に……ねえ、毎回思うんだけど、これって必要なの?」

「別に名前はどうでもいいんだけど、こに一節を抜くとうまく起動しない事があるんだよ。

「……じゃあ、仕方ないか。」

 こうして、ファラの飛行魔法練習を兼ねて3人は上空からその一画を見回った。

「豚が41頭で、ニワトリは0ね。」

「やっぱり、魔物か獣にやられたんじゃないのかな……あれっ、ちょっと待って……」

 そう言って東に向かって飛んだファラの姿がフッと消えた。

「ファラ!」

 ロンドが叫んだ次の瞬間、ファラが姿を現わす。

「な、何だ?」

「あーっ、やっぱり見えなくなったんだ。これ、エルフの結界みたいだね。」

「エルフの……結界?……じゃあ、ここがお前の……」

「いや、違う森だよ。僕の生まれた森じゃない。」

 その時、森から声がした。

「お前はエルフだな。」

 エルフ語だがロンドたちにも理解できた。

「そう。僕の名前はロイドラグ森のファラだよ。」

「ロイドラグだと、知らない森だな。だが、何故飛んでいる。そして何故、人間といるのだ。」

「そんな事よりも、あんた達うちの鳥を食べちゃったよね。」

「と、鳥だと……」

「そう。川向うに放しておいた白い鳥だよ。それと、豚も9頭いなくなっている。」

「だが、野にある獲物は誰のものでもない。」

「じゃあ、君達が羊とかを放牧してたら、僕たちが獲ってもいいんだね。」

「か、家畜は財産だ。」

「だったら、豚の方は耳にタグがついてたよね。誰かのモノだって分かったハズだけど。」

「……そ、それは謝罪するが……、お前は何故、人間と共にいるのだ。」

「悪い人間に捕まっていたところを助けてもらって、ボクが生まれた森の場所が分からなかったから、一緒に暮らしている。それよりもさあ、人の家畜を無断で食べちゃったんだから、償ってもらわいとね。」

「そ、それは我らの一存では……」

「じゃあ、村の長に会わせてよ。」

「少し待て、確認してくる。」

 話していたエルフは去ったようだ。
 
「それで、どういう事なんだ?」

「エルフには、神力による結界っていうのがあるんだよ。」

「結界って、障壁みたいなものか?」

「多分、近いものだと思うよ。この印がないとエルフの森には入れないんだ。」

 ファラは服をめくって、腹に掘られた入れ墨のような印を見せた。

「俺にはさっき放してた男の姿も見えなかったが……認識疎外の効果もあるのか?」

「そうじゃないかな。ほら、あそこにある大きな木が見える?」

 ファラの指さす方角には、森が広がっているだけだった。

「いや、森しか見えないが……」

「でしょ。認識だけじゃなくて、完全に干渉できないんだと思うよ。」

「お前と手を繋いだりしてもダメなのか?」

「まあ、長の回答が来るまで待っていようよ。多分、すぐに戻ってくるからさ。」

 ファラの言葉通り、10分程で反応があった。
 ロンドたちに見えるという事は、結界の外に出ているのだろう。

「長老がおあいになるそうだ。これを持ってついてきてくれ。」

 男が木の上で掲げたのは、ファラのお腹に刻まれているのと同じ記号の入った、キーホルダーのようなものだった。

 ロンドは男に近づき、それを受け取って、一つをレイに渡した。
 それを所持する事で、エルフの結界を抜ける事ができるようだ。

「お前たちはどうして飛んでいるんだ?」

「人間の使う魔法だよ。エルフの神力と同じだと思うけど。」

「神力で空なんて飛べないが、まあ、ついてきてくれ。」

 ロンドたちは10分ほど森の中を歩いて、大きな木の根元に着いた。
 ロンドたちは途中から枝の入り組んでトンネルのようになったところをくぐった時から歩いている。

「この上が長老の住処になる。」

 根の部分が3m程の高さまでせりあがっており、その先は階段状に木がせりだしている。
 足場の部分だけが木の幹からせりだしているので、当然手すりなどはない。

 そして、最初に伸びた枝の付け根に穴が開いており、案内の男性に続いて中に入っていくと老人が床に座っていた。

「おお、ようこそおいでくださった。この村に外の者が来られるのは100年ぶりじゃな。」

「僕はファラと言います。ロイドラグの生まれです。」

「おお、随分遠くからの客人だな。わしは、このガーザの森で長をしておるロギという。まあ、ゆっくりしてくれ。」

 エルフの長に促されてロンドたちも床に座る。

「ロギはロイドラグを知っているのか?」

「行ったことはないが、別の里で聞いたことがある。確か、ずっと西に行って、海まで出てから北に向かったところだと聞いたな。なんじゃ、ファラは迷い子か?」

「ボクは悪い人間に攫われたんだ。それを、ここにいるロンドに助けてもらったから、彼と一緒に住んでる。」

「ほう。それはエルフにとっても恩人なのじゃが……、何しろ人間には騙され続けてきた過去があるからのう。」

 長老はロンドの顔を厳しい目で睨んだ。


【あとがき】
 エルフの森を見つけたロンドたち。
 人間から隠れるように暮らすエルフの事情。


The Rose:https://www.youtube.com/watch?v=AjE69xByqm0
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