上 下
6 / 28
第一章

第5話、マイナス × マイナス = プラス

しおりを挟む
マイナス×マイナスはプラスになる。
そんな奇妙な事が起こってしまったのだ。

「しっかりしてください」

「ここは……天国かな」

「変な事を言わないでください。
私の射た矢があなたのお腹を貫いてしまったんです」

「へっ、『ハイキュア!』『ハイヒール!』
はあ、もう大丈夫ですよ」

「そんなことありません。
私は、こういう事の連続で人に迷惑をかけてばかり。それがイヤになって人から離れて暮らしていたんです。
それが、こんなところへ人が来るなんて……」

「奇遇ですね。僕も不幸引き寄せ体質で、街道を歩くと事故ばかりなんですよ」

「ともかく家に来てください」

「はあ」

少女はニールという名だった。
淡い茶色のキツネ耳が可愛い。
ズボンから飛び出ている尻尾は、髪と同じで少し濃い茶色だ。

彼女の家は、粗末な小屋だった。

「すみません、こんなところで。
最初は大工さんに作ってもらったんですが、台風ですぐに壊れてしまって……」

「あはは、分かります。
僕も、宿に泊まると床が抜けたりネズミが出たり」

「あっ、私も同じです」

「街道を歩くとイノシシやクマが出てくるし」

「馬車に乗ると車軸が折れたり、車輪が外れたり……」

「いや、こんな事を話せる日が来るとは思いませんでした」

「私もデス」

「「あ、あの……」」

「はい」

「一緒に北の国に行きませんか」

「私は、北の国の出身で、向こうに行けば『厄災のニール』って知れ渡ってるんです。
ですから、ここで一緒に……その」

「知ってますか、マイナスとマイナスが合わさるとプラスになるんです」

「でも、磁石だと反発しますよ」

「こうして、出会ってしまって、反発はなさそうですよね。
だったら東の国に行きましょうよ」

「でも……、人の中にいるのは……」

 -えーい、しょうがないのう。

ポワン☆☆☆彡

「「えっ、神さま……」」

『いかにも、わしがこの世界の神じゃ』

「へへー」

二人で土下座した。
低頭である。

『いや、普通にしとっていいよ。
先ほど、セナンが申したように、どうやら二人が出会ったことで、不幸体質がプラスに転じたようじゃ』

「やっぱり……」

『これが一時的なものかは不明じゃが、特にセナンの方はこの星を滅ぼしかねないほど、強力なモノじゃ。
じゃから、お主達二人は、これから一緒に生きていくのじゃ。
どれほど離れたら再発するかは、二人で試すが良い』

「「は、はい」」

『時にセナンよ』

「はい」

『武道大会とやらで、とんでもない量のスキルを覚えておる。
じゃが、このまま何を覚えているか分からない状態では使えまい。
今、助手に一覧を作らせておるからそれを使ってとりあえず魔王を討伐するのじゃ。
勿論、ニールも同行するのじゃぞ』

「ま、魔王ですか……ムリですよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

何の能力も与えられずに異世界転移してしまった小娘ですけど、残忍な伯爵夫人だけは絶対に許せないので成敗させて頂きます

牧神堂
ファンタジー
そこは中世ヨーロッパ風の異世界だった。 何の特典もなく転移してきたホームレス女子のミチルは生きるすべもない。 しかし、運よく一帯を治める領主のお城に住み込みで雇われることとなった。 ご主人は気のよい伯爵。 ホッとしたのも束の間、ミチルはお城が残虐で冷酷で非情で極悪で鬼畜生のような伯爵夫人によって支配された恐ろしい場所である事をやがて思い知ることになる。 果たしてそんな世界で普通の現代人でしかないミチルは生き残っていけるのか……。     ※テンプレからは外れています。ご注意下さい。 ※プロローグ飛ばすと話が分かんなくなります。 ※健全な方はドン引きするような内容が一部含まれます。

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

ある日仕事帰りに神様の手違いがあったが無事に転移させて貰いました。

いくみ
ファンタジー
寝てたら起こされて目を開けたら知らない場所で神様??が、君は死んだと告げられる。そして神様が、管理する世界(マジョル)に転生か転移しないかと提案され、キターファンタジーとガッツポーズする。 成宮暁彦は独身、サラリーマンだった アラサー間近パットしない容姿で、プチオタ、完全独り身爆走中。そんな暁彦が神様に願ったのは、あり得ない位のチートの数々、神様に無理難題を言い困らせ スキルやらetcを貰い転移し、冒険しながらスローライフを目指して楽しく暮らす場を探すお話になると?思います。 なにぶん、素人が書くお話なので 疑問やら、文章が読みにくいかも知れませんが、暖かい目でお読み頂けたらと思います。 あと、とりあえずR15指定にさせて頂きます。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...