両性具有の亡国王子は両方の性を満喫する

モモん

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第一章

生まれたようだ

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ドン!
あっ……

駅のホームで電車を待っていた俺は、背中を押された。いや、誰かがぶつかっただけかもしれない。
俺の体は前に飛び出し、並んでいた女性ともどもホームから転落した。
女性の体がクッションになり、横向きに落下した女性の胸に顔をうずめた形でドンと落下したものの、周囲を確認する余裕はあった。
キーッというブレーキの音。
キャーという悲鳴。
柔らかな胸の感触だけが救いだった。



暗転

頭が締め付けられ、引っ張り出される感触。
次の瞬間、暗く狭い場所から明るい場所に出た。
体温と同じ温かい水と一緒に排出された感じはあった。
視界の定まらない目、力の入らない手足。
さっきの状況を考えると病院かな?
だが眠い……俺の意識は沈んでいった。


目を覚ますと、ひどい空腹感に襲われた。
目の前に影のようなものが現れ、口に柔らかいものが突っ込まれてきた。
噛もうとして歯がないことが分かった。
吸うと生暖かい液体が出てきた。
これってまさか転生ってやつか……ああ、眠い……


俺は赤ん坊になったらしい。
目は明るいか暗いか程度にしか認識できない。
誰かがのぞき込んでくるとその部分はぼんやりと暗くなる。
小便は垂れ流しだし、大きい方が出たときはグニュッて感じの状態が続く。
この湿った感触は、多分紙おむつなんかない世界なんだろう。
気持ち悪いから泣いて知らせる。いやホント、心から泣いてるよ、情けなくて。



することがないので、死ぬ直前のことを思い返してみる。
リュックを背負っていたので、背中の感触はなかったが、相当な勢いで押された。
あれって、やっぱり押されたんじゃないかな。
高校生の俺に殺意を抱かれるような覚えは……、多分ないぞ。
前のOL風の女性は見覚えのない顔だった。
待てよ、あの人は俺や迫る電車ではなく、ホームを見て驚いた顔をしていた。
そうすると、狙いはあの女性だったのか……
俺が巻き込んだんじゃなく、俺が巻き込まれたのか……ああ、眠い。



そういえば、オッパイの感触が気持ちよかった。
いまは毎日それを味わっているはずなのに、見えないのがもどかしい。
触っても、手に余るサイズだし、握力がないからモミモミもできない……ああ、眠い。



ライトノベルだと、転生するときにスキルをくれたりするんだけど、そういったイベントは一切起こらなかった。
単純に白紙の状態で生まれたと考えた方が良さそうだ。
今できることは何だろう。
ニギニギで握力を鍛えて、首を反らして背筋を鍛える。手や足を動かして鍛える。
音に集中して言葉を覚える。
こんな事で効果あるんだろうか……ああ、眠い。
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