稀代の魔物使い

モモん

文字の大きさ
上 下
163 / 172
第Ⅵ章 南の大地

ラトランドにて

しおりを挟む
「ワイバーンには山脈越えはきついのではないのか」

「ワイバーンは元々高い山に住んでおります。
山脈越えがきついのは、搭乗する人間の問題なんですよ」

「それをシュトーリアは克服したと」

「はい。シュトーリアからここまで3時間で来られます」

「その移動力がアルトハインにもあるのか」

「はい」

「わかった。交易は認めるが、こちらからはフルーツを主に提供するとして、そっちは何を出すのだ」

「食材を加工したソース類や、海産物などが中心となります」

「海の……魚が食えるのか」

「朝獲れた魚を氷詰めにすれば、その日の夕食には間に合います。
日持ちする魚や肉もありますので、料理の幅がぐっと増えますよ。
そうそう、イノシンだけでなく、アルトハインの水牛も肉として出荷できますから」

「細かいことは担当の総務局と調整してくれ。
肉は、早めにな」

「はい。承知いたしました。
もう一つ、グーマから頼まれたことがあります」

「なんだ」

「徴兵された若者が帰ってこないと」

「ふん、たかが10人。帰りたくばすぐにでも解任してやるさ。
だが、本人たちがどういうかな」

「とおっしゃいますと」

「グーマのような田舎には帰りたくないと申しておるぞ」

「えっ……」

「それに、徴兵ではない。
文官の見習いとして派遣させただけだ。
グーマの年寄りたちは、何か勘違いしておるのだ」

ともかく、グーマの青年たちに話を聞いたのだが、王のいう通りであった。
一度帰るか、手紙を書くように説得してグーマの件は終わった。

なんで自分がこんな説得しなければならないんだろうと悩むシーリアであった。



ともあれ、交易の下準備は整った。あとは、アルトハインの調整とワイバーンの乗り手である。

アルトハインはセシルが一手に引き受けてくれているが、こうなるとセシリアも職種替えしてもらわないと……

さて、もう一つの要件である。
シーリアはその足でラトランドに向かった。

城兵に王への面会を求めたが、出てきたのは総務局の偉い人だった。

「シュトーリア外務局長のシーリア・シュトーリアと申します。
できれば国王に直接お渡ししたいものがございます」

こういった場合、王族としての名前の方が効果的だ。

だが、総務局長と名乗る老人は頑なだった。

「交戦中の国の使いなど、国王に会わせるわけにはいかぬ」

「では、これだけお渡しください。
王女の遺品です」

「な、なに!」

「野生のワイバーン襲撃で命を落とされました。
我が国への奇襲だったようですが、わが国に到達した直後のことなので、損害もありません。
王女とは面識がありましたので、遺品だけでもと思い持参した次第です。
では、よろしくお願いします」

「ま、待て!
王女は命を落とされたと……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

処理中です...