稀代の魔物使い

モモん

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第Ⅴ章 北からの来訪者

不可視の翼、1

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私の名前はセシリア・ファーガソン。
ファーガソン子爵家の三女になる。
子爵家の三女なんて悲惨なものである。
最低限の教育は受けさせるから、あとは自分で何とかするんだと言われて育った。

これが、容姿端麗であるならば、社交界にデビューさせて、玉の輿とやらを狙うらしいが、生憎と父親に似てしまった。
一応、人並ではあるのだが(自称)……。

幸いなことに、魔物と仲良くできるという”取り得”が見つかったので、物心ついてからは「宮廷魔物使い」を目指すことになった。
目指すといっても、そんな学校があるわけじゃなく、現役の宮廷魔物使いに弟子入りして、魔物の世話をすることになる。

私が弟子入りしたのは、宮廷魔物使いの中堅で、ビルマという男性だ。
ビルマ家では3頭のシルバーウルフを飼っており、その中の一頭を連れて毎日兵団に出勤する。
その結果、2頭が残されるので、その世話をするのだ。
散歩や、寝床の掃除。ブラッシングにシャンプー。やることはいくらでもある。

そんな私にも夢がある。
いつかワイバーンにのって空を自由に飛ぶのだ。
ワイバーンは、飛竜とも呼ばれ、翼をもった二足歩行のドラゴンである。
城の資料室でみた挿絵には、ワイバーンの背に乗る人が書かれていた。
それを一目見た時から、ワイバーンは私の心をとらえて離そうとしない。

しかし、ワイバーンはラトランドという山向こうの国にしかおらず、私は現物を見たこともなかった。

「セシリアは自分の魔物は持たないのかい」

「いつかワイバーンに巡り合うまでは持ちません」

「そうか、宮廷魔物使い部隊の世話係に欠員ができたんだが、やってみるか」

「ホントですか!ぜひお願いします」

ビルマさんの推薦で、幸運にも世話係として入隊することができた。


世話係として入隊し7年目になる。
世話係の中堅として、それなりの仕事を任されるようになった頃、私にとって事件がおきた。
シーリア・アートランド名誉男爵さまがワイバーンの子供を連れてきたというのです。
私の胸は高鳴りました。
幸運にも、遠目に拝見することができました。
シーリア様は、宮廷魔物使いでも懇意にしていただいており、きっといつか直接触る機会もくるに違いありません。

実際に触れる機会ができたのはすぐでした。
王様との打ち合わせの間預かったのです。

「そう、ルマっていうんだ……」

もう、涙で顔はぐしゃぐしゃです。
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