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第Ⅴ章 北からの来訪者
陛下にはことの重大さが理解できない
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三日後、シーリアはサンプルを抱えて王都へ走る。
飛んでいかないのは、コンロの台を設置するのにミーミーが必要だからだ。
先に厨房へ行き、サンプルに一台設置しておくのだ。
「調理長すみません。
忙しい中お邪魔して」
「何をいわれますか。
シーリア様の要件なら最優先で対応させていただきますよ。
しかし……これは、とんでもないものですな」
「でしょ。
私は厨房の革命だと思ってます。
これと、冷却庫の普及は、それだけの価値がありますから」
設置を済ませると、シーリアは王の執務室に向かった。
「失礼します」
「おお、シーリア。此度はご苦労だったな。
それにしても、競技大会は予想以上に盛り上がったな」
「交渉や調整を一任いただいたおかげです」
「ああ。期限が一か月だったからな。
戦を止められるものなら、なんだって事後決済してやるぞと言ったのは即決が必要だと思ったからだが、それが功を奏したな」
「魔族側も、ルシフェル王が全部即決してくださったからよかったです。
今回は、魔族側も喜んでくれて、わが町の人口は現在3000人を超えました」
「うむ。だが、人は集まったものの、仕事はどうするのだ。
今から田や畑を作っても、収穫まで何か月もかかるだろう」
「私たちの町、マジカル・シティと改名しましたが、産業を中心とした町にしますので、食料は他から仕入れることになります」
「産業?」
「マジカル・シティは、魔道具を製造し販売いたします」
「魔道具とはなんだ」
「魔石を使って、魔法効果を持たせた道具です」
「そのようなことが可能なのか?」
「私も初耳です」
「実際にサンプルを厨房に据え付けました。
ご確認いただいて、城への導入を検討いただければと思っています」
「戦争の回避で、予備費に手をつけませんでしたから、その範囲内であれば経理局も後押ししますぞ」
「これ、経理局長!
導入前提で発言するんじゃない。
まずはモノを見てからだ」
こうしてシーリアは国王と経理局長を厨房へ誘導した。
「こちらです」
「なんだ?
普通の寸胴鍋ではないか」
「陛下、鍋の下の竈がありません。
それなのに湯が湧いておりますぞ」
「なに!」
「これが、マジカル・シティの特産品。魔道コンロです」
「わしには、よく分らんが……」
「陛下、火を使わずに湯を沸かしているのですよ。
燃料が不要で、火事の危険も減少する。ススが出ないから、掃除も楽になるし、何より火の番が不要となる!」
「経理局長。
陛下は厨房に入ったことがないから、火を扱うことの大変さが分らないのですよ」
「そ、そうですな。
メイドも寝てしまった時間に帰って、火を起こして一人で食事をすることなどないでしょうからな」
「休みの日に、家族サービスで料理を作ったりされませんからな……」
「陛下、ともかくこれは画期的な道具ですぞ!
まず、厨房の全カマドをこれにするべきですな」
「カマドだけじゃありませんよ。
暖炉も魔道コンロに替えられます」
「なに!
すると、冬の朝、寒い思いをしなくともいいのか!」
「陛下、そこには興味あるんですね」
「いや、私室の暖炉は俺が付けるんだよ」
「魔道コンロでしたら、一晩中弱火でつけっぱなしにしても大丈夫です」
「なに!」
「火が弱くなったら、魔力を追加するだけですからね」
「採用だ。大広間など、主要な部屋には全部魔道コンロを設置しろ」
「執務室にも導入してほしいですな。
これが実現されれば、女子職員から間違いなく感謝されますぞ」
飛んでいかないのは、コンロの台を設置するのにミーミーが必要だからだ。
先に厨房へ行き、サンプルに一台設置しておくのだ。
「調理長すみません。
忙しい中お邪魔して」
「何をいわれますか。
シーリア様の要件なら最優先で対応させていただきますよ。
しかし……これは、とんでもないものですな」
「でしょ。
私は厨房の革命だと思ってます。
これと、冷却庫の普及は、それだけの価値がありますから」
設置を済ませると、シーリアは王の執務室に向かった。
「失礼します」
「おお、シーリア。此度はご苦労だったな。
それにしても、競技大会は予想以上に盛り上がったな」
「交渉や調整を一任いただいたおかげです」
「ああ。期限が一か月だったからな。
戦を止められるものなら、なんだって事後決済してやるぞと言ったのは即決が必要だと思ったからだが、それが功を奏したな」
「魔族側も、ルシフェル王が全部即決してくださったからよかったです。
今回は、魔族側も喜んでくれて、わが町の人口は現在3000人を超えました」
「うむ。だが、人は集まったものの、仕事はどうするのだ。
今から田や畑を作っても、収穫まで何か月もかかるだろう」
「私たちの町、マジカル・シティと改名しましたが、産業を中心とした町にしますので、食料は他から仕入れることになります」
「産業?」
「マジカル・シティは、魔道具を製造し販売いたします」
「魔道具とはなんだ」
「魔石を使って、魔法効果を持たせた道具です」
「そのようなことが可能なのか?」
「私も初耳です」
「実際にサンプルを厨房に据え付けました。
ご確認いただいて、城への導入を検討いただければと思っています」
「戦争の回避で、予備費に手をつけませんでしたから、その範囲内であれば経理局も後押ししますぞ」
「これ、経理局長!
導入前提で発言するんじゃない。
まずはモノを見てからだ」
こうしてシーリアは国王と経理局長を厨房へ誘導した。
「こちらです」
「なんだ?
普通の寸胴鍋ではないか」
「陛下、鍋の下の竈がありません。
それなのに湯が湧いておりますぞ」
「なに!」
「これが、マジカル・シティの特産品。魔道コンロです」
「わしには、よく分らんが……」
「陛下、火を使わずに湯を沸かしているのですよ。
燃料が不要で、火事の危険も減少する。ススが出ないから、掃除も楽になるし、何より火の番が不要となる!」
「経理局長。
陛下は厨房に入ったことがないから、火を扱うことの大変さが分らないのですよ」
「そ、そうですな。
メイドも寝てしまった時間に帰って、火を起こして一人で食事をすることなどないでしょうからな」
「休みの日に、家族サービスで料理を作ったりされませんからな……」
「陛下、ともかくこれは画期的な道具ですぞ!
まず、厨房の全カマドをこれにするべきですな」
「カマドだけじゃありませんよ。
暖炉も魔道コンロに替えられます」
「なに!
すると、冬の朝、寒い思いをしなくともいいのか!」
「陛下、そこには興味あるんですね」
「いや、私室の暖炉は俺が付けるんだよ」
「魔道コンロでしたら、一晩中弱火でつけっぱなしにしても大丈夫です」
「なに!」
「火が弱くなったら、魔力を追加するだけですからね」
「採用だ。大広間など、主要な部屋には全部魔道コンロを設置しろ」
「執務室にも導入してほしいですな。
これが実現されれば、女子職員から間違いなく感謝されますぞ」
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