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第Ⅴ章 北からの来訪者
赤い月
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魔族を名乗る男は、身長180cmほどの痩身で、褐色の肌をしており、髪は無造作に束ねられている。
一見、ヒトと変わらないように見えるが、その瞳は金色である。
全身にまとう体にフィットしたボディースーツのような衣装は、どのような繊維によるものか彼の動きに合わせて伸縮しており、その上に同じく黒のマントを羽織っている。
一方の娘は、身長165cmほどで痩せており、華奢に見える。
肩までの栗色の髪は、ややウェーブがかかり潮風に吹かれていた。
冒険者風シャツに短パン。その上から分厚いテント地の外套を着こんでいる。
男のほうは、海の上3m程の空中にあったが娘の横に降り立った。
『申し訳ございません。
私の知る限りでは、そのような話は聞いたことがありません。
国王に確認いたしますので、できましたら日をおいてもう一度お会いすることは可能ですか』
『構わんぞ。
万一、話が伝わっていないのであれば、一か月の間に準備を整えてもらえばよいだけだからな』
『では、三日後の同じ時間にこの場所で』
『承知した。
ところで、最初の問いかけにもどろう。
その魚をどうするのだ?』
『国王の好物なのでございます』
『なんと、そのように硬い魚を食すとは、侮れぬな』
『いえ、甲羅は取り除いて食べます。
身はプリプリとして美味しいですよ』
『なぜ、そのような手間をかけるのだ。
だったら、全身食べられる魚を選べば、余計な手間がかからぬではないか』
『手間をかけてでも、美味しいほうがいいのではないでしょうか』
『食事などに時間を割くよりは、己の鍛錬に時間をとる。
魔族は皆、そう答えるであろうよ』
『では、魔族の方は、肉や魚を生のまま……』
『馬鹿を申すな、焼くに決まっているだろう』
『……
よろしければ、三日後にお会いするときに、食事を用意させていただけませんか』
『構わんが、俺は肉しか食わんぞ』
『結構です。
私はシュトーリアのシーリアと申します。
失礼ですが、お名前は?』
『ルシフェルだ』
シュトーリアの娘、シーリアはこうして魔族との約束をとりつけて帰国した。
彼女の操る飛竜(ワイバーン)は、特殊な飛行方法で時速200km以上で飛ぶため、自国の王都まで90分ほどで到達する。
城についた彼女は、衛兵に荷物を厨房へ運ぶよう指示して、その足で国王の執務室に直行する。
国王は執務室で宰相と総務局長とで談笑中であった。
そこへ強引に割り込むように話しかける。
「陛下、魔族というのをご存じですか」
「どうしたシーリア。血相を変えおって」
国王も、シーリアの様子にただならぬものを感じたのか、礼を欠いたことを咎めるようなことはしない。
「実は……」
シーリアは数時間前の出来事を、事実だけを伝えた。
「一か月後の赤い月だと。しかも家族との決戦など聞いたjこともないぞ」
「300年前というと、13代ほど前のこと。
赤い月・魔族・トランガの決戦というのは、確かに昔語りで聞いた覚えがあります」
「ともかく、調べてみるんだ。
宰相は、シーリアとともにトランガに向かい、向こうの資料を確認してくれ。
記録が見つからなくても、夜までには戻るように」
「承知いたしました」
一見、ヒトと変わらないように見えるが、その瞳は金色である。
全身にまとう体にフィットしたボディースーツのような衣装は、どのような繊維によるものか彼の動きに合わせて伸縮しており、その上に同じく黒のマントを羽織っている。
一方の娘は、身長165cmほどで痩せており、華奢に見える。
肩までの栗色の髪は、ややウェーブがかかり潮風に吹かれていた。
冒険者風シャツに短パン。その上から分厚いテント地の外套を着こんでいる。
男のほうは、海の上3m程の空中にあったが娘の横に降り立った。
『申し訳ございません。
私の知る限りでは、そのような話は聞いたことがありません。
国王に確認いたしますので、できましたら日をおいてもう一度お会いすることは可能ですか』
『構わんぞ。
万一、話が伝わっていないのであれば、一か月の間に準備を整えてもらえばよいだけだからな』
『では、三日後の同じ時間にこの場所で』
『承知した。
ところで、最初の問いかけにもどろう。
その魚をどうするのだ?』
『国王の好物なのでございます』
『なんと、そのように硬い魚を食すとは、侮れぬな』
『いえ、甲羅は取り除いて食べます。
身はプリプリとして美味しいですよ』
『なぜ、そのような手間をかけるのだ。
だったら、全身食べられる魚を選べば、余計な手間がかからぬではないか』
『手間をかけてでも、美味しいほうがいいのではないでしょうか』
『食事などに時間を割くよりは、己の鍛錬に時間をとる。
魔族は皆、そう答えるであろうよ』
『では、魔族の方は、肉や魚を生のまま……』
『馬鹿を申すな、焼くに決まっているだろう』
『……
よろしければ、三日後にお会いするときに、食事を用意させていただけませんか』
『構わんが、俺は肉しか食わんぞ』
『結構です。
私はシュトーリアのシーリアと申します。
失礼ですが、お名前は?』
『ルシフェルだ』
シュトーリアの娘、シーリアはこうして魔族との約束をとりつけて帰国した。
彼女の操る飛竜(ワイバーン)は、特殊な飛行方法で時速200km以上で飛ぶため、自国の王都まで90分ほどで到達する。
城についた彼女は、衛兵に荷物を厨房へ運ぶよう指示して、その足で国王の執務室に直行する。
国王は執務室で宰相と総務局長とで談笑中であった。
そこへ強引に割り込むように話しかける。
「陛下、魔族というのをご存じですか」
「どうしたシーリア。血相を変えおって」
国王も、シーリアの様子にただならぬものを感じたのか、礼を欠いたことを咎めるようなことはしない。
「実は……」
シーリアは数時間前の出来事を、事実だけを伝えた。
「一か月後の赤い月だと。しかも家族との決戦など聞いたjこともないぞ」
「300年前というと、13代ほど前のこと。
赤い月・魔族・トランガの決戦というのは、確かに昔語りで聞いた覚えがあります」
「ともかく、調べてみるんだ。
宰相は、シーリアとともにトランガに向かい、向こうの資料を確認してくれ。
記録が見つからなくても、夜までには戻るように」
「承知いたしました」
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