稀代の魔物使い

モモん

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第Ⅳ章 ワイバーンの故郷

カイン王子の決断

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ワイバーンも順調に飛行術を覚えてきたのですが、ミーちゃんたちにより土魔法と氷のブレスも勉強しているようです。
いつの間にかコロシアム風営巣地も8階建となり、繁殖の備えも万全みたいです。

そして、パトリアの交代する時期を迎えました。


◇ ◇ ◇

「なあ、本当に帰ってしまうのか」

「ええ。
次の料理長は、マリアーナといって、卵料理の上手な娘なんですよ」

「いや、それは楽しみなんだが……」

「いったい、どうしたんですか」

「いや、ケンカ相手がいなくなると思うと、寂しくなるなと思ってな」

「私は、シーリア様の元で、また新しい料理を覚えられるから、楽しくて仕方ないですよ」

「お前は、本当に料理一筋なんだな。
こっちで、好きな男ができた様子もないし……」

「毎日、料理の献立を考えているんですから、そんな余裕ありませんって」

「それも、そうだな……
ところで、これは祖母の形見の指輪なんだが、ここにいた記念に受け取ってくれないか」

「……これって……」

「ああ、できれば、この国にずっといてほしいと思ってる」

「……なんで私なんかを……」

「お前に出会って、俺の価値観が変わった。
ゼンからも、今の俺なら民のことを考える王になれるだろうといわれたよ。
どうだろう」

「……その言葉だけで十分なんですけど……」

「けど?」

「今は、まだ、料理のことに集中したいんです」

「ダメか……」

「もし、3年経ってもお気持ちが変わらないようでしたら、もう一度プロポーズしていただけませんか」

「……嫌だ!
こんな恥ずかしいのは、一生で一度きりにしたい。
3年後というのなら、それでいい。
今、返事を聞かせてくれ」

「もう……子供みたいなんだから……
じゃあ、この指輪をいただいておきます。
3年の間、料理に集中して、そのあとで王妃の座をいただきますけど、料理は続けますよ。
それでもいいですか」

「もちろんだ。
ダイトウの弟に、もてなしの料理をふるまってやってくれ」

「あら、そういえば……
シーリア様って、この国の影の支配者みたいですね」

「ああ、シーリアにはとても適わない」

パトリアの指がカイン王子の唇に触れ、二人は唇を重ねました……と、後日パトリアから惚気話を聞かされました。

◇ ◇ ◇

「こうして、アルトハイン王家の二人まで、うちのメイドが嫁入りすることになりました」

「なあ、アートランド家は、世界の統一でも狙ってるんじゃないのか?
いや、お前一人でも、世界統一くらい簡単にできそうなんだが」

「しませんよ。そんな面倒なこと」

「しません……か、……
ミーミーたちだけでもできそうだが、それに加えてワイバーンが80匹だろ。
しかもセシルって助手もできちまったし……失敗だったよな、あれは」

「あの子の素質に気づいていたら、最年少の宮廷魔物使いでした?」

「まあ、何らかの手段で確保するよな。
自由にさせると、お前の時の二の舞だからな」

ここは、王様の私室で、私一人で報告にあがっているところです。

「それで、アルトハインへのワイバーン常駐なんですけど……」

「ワイバーンが良ければ問題ないだろう」

「セシルに毎日行かせて、ついでにナキュから魚を仕入れてこさせようと思うんですけど」

「なに!
毎日ヨロイウオが食えるのか!」

「ヨロイウオは向こうでも珍しい魚なんですよ。
せいぜい、月に1回か2回くらいですね」

「それでもいい。
いつから行かせるんだ」

「心配なのは、まだ12才ってところなんですよ」

「なんなら、こっちの兵士を2・3人常駐させればいいだろう」

「オジサンじゃあセシルも抵抗ありますよ。
やっぱり、料理長の補佐でうちのメイドを派遣しておきます。
はあ……、またメイドの募集をかけないと」

「それくらい、執事に任せられるだろう」

「その執事も手一杯なんですよ。
仕方ない、執事も増員かな……」

「まあ、お前の場合、半分以上は外務局長としての仕事か。
いいぞ、総務局から誰か常駐させても」

「どちらかというと、金銭管理が大変みたいなんです。
財務局から常駐してもらってもいいですか」

「ああ、どこからでも構わんぞ」

「ありがとうございます」
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