稀代の魔物使い

第Ⅳ章 ワイバーンの故郷

孤児たち

最初にすることは、飛行術を覚えてもらうことです。

「じゃあ、最初は鬼ごっこです。
今から、コロンが飛びますので、それを追いかけてタッチしてください。
できた人からお肉ですよ」

ギー！

「えっ、そんなの簡単ですって。
まあ、やってみてくださいな」

最初にコロンが飛び立ち、一斉に後に続きます。

ドン　ドン　ドン

やっぱり、体長３ｍにもなる大人は迫力が違います。

最初はゆっくりなんですが、追いつかれそうになると少しだけスピードをあげます。
まだまだ、コロンには余裕なんですけど。

こうやって、コロンの飛び方を覚えてもらうんです。

一時間ほどで、みんな疲れ切って帰ってきます。

「簡単じゃなかったみたいですね。
さあ、お肉を召し上がれ。
食べたら、巣で休んでくださいね。
午後はもう一度やりますからね」

そんな繰り返しのある日、お姉ちゃんがやってきました。

「ねえ、リア、両親のいない子供たちにできるような仕事はないかしら」

「何歳くらい？」

「10歳から１５歳くらいなんだけど、とりあえず１０人くらい。
どうしても親のいない子供って、雇ってもらうのがむつかしいのよ」

「稲刈りは終わっちゃったから、ワイバーンのお世話でいいなら、いくらでも人手はいるけど」

「じゃあ、明日連れてくるからよろしくね」

「わかった」

お姉ちゃんは厚生局長ですから、多分仕事なんだと思います。
お姉ちゃんが直接頼めば、断る人なんていないと思いますが、そういうのは嫌なんだと思います。


翌日、お姉ちゃんが１０人の子供を連れてきました。

「うぉー、本物のワイバーンだ！」
「怖いよ」
「噛みつかない？」

「余計なことをしなければ大丈夫よ」

「それで、この子たちは何をすればいいの？」

「食事の準備ですね。
このお肉を、一口サイズに切り分けてもらいます」

「お肉って……」
「お肉になってないよ……」

「冒険者ギルドから持ってきてもらったものです。
血を見るのが嫌な子は、巣穴の干し草を取り替えてください」

こうして、子供たちの仕事が始まりました。
そうこうしているうちに、ワイバーンが疲れ切って帰ってきます。
私は肉を焼いて、子供たちにテーブルに運んでもらいます。

やがて、食事が終わり、ワイバーンは巣穴に帰っていきます。

「はい。今日はこれでお終いです。
お給料はどうすればいいの？」

「施設の園長さんにまとめて渡します。
それはこっちでやるから、リアは仕事の手配だけでいいわ」