稀代の魔物使い

モモん

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第Ⅲ章 アルトハイン

パトリアの挑戦

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ある日のこと、カイン王子が厨房にやってきました。

「おい、おんな……
いや、パトリア料理長」

「はい。王子様、ご用はなんでしょう」

「明日の夜、特殊な任務で遠征する兵士たちと夕食をとる」

「特殊な任務ですか」

「ああ。地竜の目撃情報が入ってな。
もし本当に地竜なら、命がけの任務になる」

「……人数は」

「俺を入れて33名になる」

「王子様も遠征に……」

「当然だろう。
民を守ってこその王族だ」

「かしこまりました。
とっておきの肉を使いましょう」

「ああ、最後の晩餐になるやもしれん。頼むぞ」



ポテトサラダを作り、あばら肉を丁寧に下処理します。

「料理長、そのソースは……」

「最後のソイソースです。
ドラゴンに勝つには、これしかないでしょう」

最後の晩餐に私が選択したのは、ポテトサラダとイノシンカツのソイ・マヨソース添え。
それと、生姜焼き丼です。

「ほう、変わった肉料理だな」

「来年になれば、このソースもそれなりに入ってくるでしょう。
ですが、今は少量しかありませんでしたので使用は控えてきました。
もし、もう一度食べたいと思われたなら、生きて帰ってきてくださいね」

「二度と食いたくないと思ったら、帰ってくるなということだな。
さあ、料理長の挑戦を受けようではないか」

「「「おおっ!」」」

…… …… ……!!

「こ、これは……」

「こんな旨い肉が……」

「舌と歯が喜んで、いくらでも食べられます!」

「サクサクの衣が……」

「噛むと肉汁がジュワーッと!」

「待て!ドンブリの肉が、口の中で踊ってる……」

「ち、地竜に負けたら、もう食えないってことか……」

「いやだ!俺は竜になんぞ負けない!」

「ああ、うちの奴がこれだけの料理人だったら、毎日絶対に帰るのに……」


「ふん、全員が料理長に白旗かよ」

「王子!一口食えばわかりますよ」

「ふん、俺はな、お前らが絶賛するこの料理を食うために帰ってくるのだ。
だから、今は……」

「先ほど申し上げたように、最後のソイソースを使いました。
帰って来られても、当分は作れませんよ」

「な、なに!
まて、俺の分も残しておけ!
……カツが一切れしか…………」

「カッコつけてるから」 ワハハ

その日の食堂は笑いにあふれていました。


「おい。わしの分は……
というか、なんでわしに声をかけないんだ」

「王様、今頃来られても……」

「いや、会議が長引いて……わしの晩飯は……」

「父上、旨かったですよ!」

「「「王様、地竜に負けないように頑張ってきます!」」」
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