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第Ⅱ章 二人旅
ミーミーハウス対アンデッドバージョン
しおりを挟む領主さんの館に戻って対策会議の続きです。
「北の森は昼間でも薄暗く、そこへ上部の枝に雪が積もって更に陽が届きません。
ですから、昼間でもゾンビやスケルトンが出ます。
今年は、そのアンデッド系が特に多いと報告されています。
それが、ついに町にまで来るとは」
「では、その森の討伐が終わるまでは北と南の城壁にも聖角灯を設置しましょう」
「いいのか」
「それで人の不安が解消されるんですから」
「その追加分を常設にしてもらえぬか。
対価は……、水牛100頭でどうだ」
「王子、それは……」
「水牛であれば、俺の裁量で出せる。
シュトーリアにしか無いモノを、我が国にしかないものと交換するのだ。国王であろうと文句は言わせない」
「ウシ?」
「ああ。乳も飲みやすく、肉もうまいぞ。どうだ」
「えへへ、交渉成立。
じゃあ、王子様にも今持ってるのをプレゼントしちゃう」
「ホントか!サンプルがあれば、一角獣の角も全力で探すだろう。
約束だ、王都に帰ったら俺が直接水牛を届ける」
「この町にもウシがいるの?」
「ああ、いるぞ」
「乳もある?」
「ああ、今朝絞ったのがまだ残っている」
「えへへ、全部もらっていい?」
「何か作るのか?」
「出来てからのお楽しみ」
乳油を作るには、一日以上寝かせなければ分離しません。
使えるのは明後日の夜ご飯です。
「ところで、そのワイバーンもお前の従魔なのか」
「そうですよ」
「ワイバーンはラトランドの固有種にして希少種。
よく入手できたな」
「ああ、少し事故がありましてシーリアが保護いたしました。
暖かくなったらこちらから出向くつもりです」
「ワイバーンは国で管理しているからな。トラブルにならなければいいが……
うん、ラトランドに行く時は、俺も同行しよう。
向こうの王族とも親しいし、何かあった時には手助けできるだろう」
「はい。その時はお願いします」
翌日、五隊編成で討伐に出ます。
森に入ると聖角灯が光り出しました。
今回は、隊長さんのオシリスとルークの指示も任されています。
「オシリス、アンデッドのにおいはある」
ワフン
「そう。数は多いのね。
じゃあ、みんなでアンデッド掘り返し作戦よ。
匂いの強いところを掘り返してちょうだい。
風魔法や氷の刃を打ち込んでもいいわ」
ミー、ピー、ピュリー、ヲン、シャー、ギー
ザンザンザン!バシュッ!バシュ!
「はい、次は木の上の雪を吹き飛ばすか、ブレスで溶かしてね。
それが終わったら、枝を間引いて陽の光が入るようにしてちょうだい」
ミー、ピー、ピュリー、ヲン、シャー、ギー
聖角灯の光が消え、地面まで陽の光が届くようになります。
「おいおい、風魔法に氷魔法にブレスかよ。
聖角灯がなくても、アンデッドの1万くらい行けるんじゃねえか」
「私もそよ風くらい出せますよ……」
「何か役に立つのか?」
「うーんと、宴会芸?」
「おい、シーリア!」
「お、王子様、そのお姿は……」
「上の雪を落とす時は、人がいないか確認してからにしてくれ……」
「プッ……、ごめんなさい」
午前中に半分終わりました。
午後は、先に雪を落として枝を間引いてからアンデッドを探すことにします。
「これだけの作業を人間がやったら、50人で丸二日は必要だな」
「シーリアが最高クラスの魔物使いだと納得したか」
「ああ、彼女が本気になったら、城といえど数時間で落とせるだろう。
いや、不意打ちで全方向からブレスをくらったら一瞬か……」
「だが、シーリアを戦には出さない。
防衛は別だがな」
「ああ、そうしてくれ」
「隊長さーん、ここにもミーミーハウス作ってもいいですか?」
「だが、夜中にアンデッドに襲われたらどうする」
「じゃあ、天井に聖角灯を埋め込んだら?」
「できるのか?」
「ミーちゃん、できる?
えっ、これを溶かして天井全体が光るようにするって、そんなことできるの?」
ピュリー!
こうして、ミーミーハウス・対アンデッドバージョンが完成しました。
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