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第Ⅱ章 二人旅
ハニー・シーリア
しおりを挟む「レインよ、申し訳ないがこの場は俺に免じて治めてくれ。
王子、自室にお戻り下さい」
「ふざけるな!これだけ挑発されて引き下がれるか!」
「はあ、領主に頼まれた以上、こちらは矛を収めましょう」
「すまん。衛兵、王子をお部屋に」
王子様は顔を真っ赤にして退室されました。
「ふう、世間知らずでな。もう3ヶ月も閉じこめられてイライラしておられるのだ」
「だったら、何か美味しいモノでも食べてもらえばいいと思うけど……
うん、手っ取り早く作れるのはサツマイモとジャガイモ」
「おお、あれなら気分も紛れるんじゃないか」
「油とお塩、ハチミツにサツマイモとジャガイモ。
これだけあればいいんですけど」
「そんなものならいくらでもありますが……」
「じゃあ、厨房をお借りします」
「構いませんが、ご自分で作られるのですか?」
「まあ、騙されたと思ってやらせてみろ。驚くぞ」
「だが、貴族のお嬢様が厨房に立つなど、効いたことがないぞ」
「お嬢様じゃありませんから。ウフフ」
「そういう事だ。ご自分の功績で男爵になられたお人だ。
まあ、任せておけ」
「ミーちゃん、大皿と大きめの深皿2組み作ってくれる。
ジャガイモは薄くスライスして……
揚げジャガも一緒に作ってと。サツマイモはざっくりと……
チョロリ、火加減は?」
ピュリー
ジョワーッ
「油をきって、塩をパラパラで出来上がり。
サツマイモは、ハチミツと絡めて、ゴマをパラパラで完成!」
「どうだダクト。我が国で大流行の2品だ」
「どうって、ワッチチィ、おお、なんだこの食感は!
おお塩が絶妙だ。これはエールが必要だろ」
「サツマイモも食べて見ろ」
「サツマイモは、繊維質なのがなぁ……ああ、甘いが……幸せな気分になれる。
おい、王子に届けてやれ」
数分後、王子様が2階からダダダッと駆け下りてきます。
「おい、ダクト、なんだコレは!」
その視線は部屋の中をぐるりと見回し、エプロン姿の私でとまります。
「まさか、お前が……」
「お気に召していただけましたか?」
「ああ、……先ほどはすまなかった。
だが、お前は貴族の娘ではなかったのか」
「いえ、シーリア・アートランド男爵ご本人でございます」
「いえ、私はただの魔物使い。シーリアで結構ですわ」
「これは、この菓子はなんという」
「特に名前は……」
「いや、王が名付けられました。ポテトチップスとハチミツイモでございます」
「その作り方を、我が国の者にも教えてくれぬか」
「簡単ですから、誰でも作れますよ。
今作るのを見ておられた料理人さんも、もう作れますよね」
料理人さんが首肯します。
「雪が解けたら、俺が国中に流行らせてやる。
そうだ、お前の名をつけて、シーリア・チップスとハニー・シーリアだ」
いや、それだとイモが入ってません……
まさか、私の名前がイモだと……
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