稀代の魔物使い

モモん

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第Ⅱ章 二人旅

出張料理人

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「ネコちゃんを見かけたので、もしやと思ってきてみたんです」

「元気そうで安心した」

「おかげさまで。
ところで、もし泊まるところをお探しでしたら、狭いですけどうちに来ませんか」

「えっ、でも家はあの時……」

「村のみんなが新しい家を建ててくれたんです」

「よし、お世話になろう。なあに、寝る場所は土間で構わん」

何か言いたげな村長さんを残して、娘さんの家に向かいます。
家では、お母さんが夕食の支度をしていました。

「あら、シーリアさんじゃないですか。あの時は、本当にありがとうございました」

「お母さん、今日はうちに泊まってもらうことにした」

「じゃあ、塩漬けのお肉も焼かなくっちゃ」

「いや、泊めてもらうのだ。食事はこちらで用意しよう。
少し台所を借りるぞ」

「えっ、隊長さんも用意してきたんですか」

「なんだ、お前もか」

「ええ、イノシンのブロック肉に、ソースと乳塊。アスパラも持ってきました」

「じゃあ、今日はお前の料理で楽しませてもらうぞ。
なにしろ、王都の食生活を変えた料理人だからな」

「えへへ、楽しみにしていてください。
チョロリ、ブロック肉の表面を強火で焼いて。
ミーちゃん、石のお鍋作って。あとプレートも。」

ミー、ピュルー

「お肉をじっくり焼くので30分待ってください。
その間、サツマイモのはちみつ和えとポテトスライスでも食べていてくださいね」

「こ、これは?」

「シーリアが考案して、王都でブームになっているお菓子ですよ。
サツマイモの方は、女性に大人気なんですよ」

「サツマイモなんて、蒸かして子供のおやつでしか食べないのに……
あっ、甘いです。これ、揚げてあるんですね」

「こっちの薄いのは……、ジャガイモですね。塩味だけなのに美味しいです」

「どちらも、食べるものがない冬に、仕方なく食べている食材なのに……」

「ちょっとした工夫でこんなに美味しくなるなんてねえ」


「はい。大変お待たせいたしました。
イノシンのローストとアスパラの乳油焼き。それから、ジャガイモのスープです」

「これは、表面は焼けているが、中はまだ赤いぞ」

「最初に、表面をしっかり焼くと、旨味が逃げないんです。
炭火でじっくり焼きましたから、ちゃんと火は通っていますよ」

「あっ、ほんとだ。柔らかくて美味しいです。この木の実のソースも美味しいです」

「オシリス!ルーク!もっと静かに食え!」

オウン、グルル

「ジャガイモのスープも、なんだか幸せな味です」

「それよりも。何でこの時期にアスパラが……」

「家の地下で栽培してるんですよ」

「冬場に。こんなにきれいな青物を食べられるなんて……
お礼をしようと思って来ていただいたのに」

「ああ、村長はせっかくの機会を逃してしまったな。
シーリアの手料理を食べたいがために、王ですら何日も屋敷に押し掛けたというのになあ」

石のお鍋とプレートは、そのまま置いていきます。
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