稀代の魔物使い

モモん

文字の大きさ
上 下
75 / 172
第Ⅱ章 二人旅

ソース

しおりを挟む

「はて、今回ギルドは関与していませんよね」

「だって、ギルドの依頼書を見て狩りに出かけたのよ」

「そうですわよ。名誉男爵様が城の手勢を率いて」

「ぐっ、まあ、12頭もあれば……」

「リア、食肉ギルドにも6頭分けてあげてちょうだい」

「お姉ちゃん」

「食肉ギルドの代表から農林局経由で直訴されちゃったのよ」

「ぐっ、6頭……」

「ごめんねメリッサさん。3頭になっちゃった」

「えっ、うそ……」

「串焼き屋台の組合から3頭頼まれてるの……」

3日後、王都兵団総出で狩りが行われることになりました。
場所は少し離れた南東の森と南西の森で、私は南西の森へ行き、宮廷魔物使いのファルコン隊が南東の森を受け持ちます。

「やっぱり、肉は必要だよな」

「そうですわね」

「おい、そのソースはなんだ?」

「えっ、ミーちゃんの採ってきた果実で作った秘伝のソースですけど」

「何で俺のにはかかってないんだ?」

「最初に食事したときにお伺いしましたけど、要らないっておっしゃいましたわ」

「うー、記憶にないぞ……」

「そういえば、何か考え事をされていたかしら」

「ちょっと食わせろ」

「お行儀が悪いですわね。まあ、はい、あーん」

「クッ、屈辱的だが……、うん、うまいな」

「残念ですけど、来年の秋までは作れませんからね」

「なに」

「これが最後の一滴ですの」

「お前には、夫に対する思いやりというものはないのか」

「ああ、そういえばジャルクにもおすそ分けしましたわ」

「失礼します」

「おお、ちょうどいいところへ。
それだ、そのソースを俺にも分けろ」

「えーっ、てことはこっちも品切れか……」

「こっちも?」

「ムーランがいっぱい使うのよ。だから分けてもらおうと思って」

「何で俺だけ……。
そうだ、そこに残っているのを料理長になめさせて……」

「やったけど、素材が分からないって」

「そうだ!シーリアは、シーリアのところにはあるだろう」

「真っ先に無くなるわよ。食い扶持が多いんだから」

「まさか、ミーミーたちはソースなんか使わんだろう」

「だって、ミーちゃんが採ってきたのよ。自分が食べたいから」

「ガーン」



「あれ?王様が死にそうな顔をして歩いてる」

「おう、シーリア。原因はお前のところのソースだ。
俺は一切れしか食えなかったが、これ以上食えないと分かったとたん猛烈に食いたくなってな」

「えっ、果実の奴それとも……」

「なに、それともだと!まさか次があるのか?」

「うん、今は木の実のソースだよ。それか、乳の塊をのせて焼くかだね。
ほら、うちの子たちは香辛料が嫌いだからさ、それに代わるものを色々と考えてもらうの。
木の実はミーちゃんが採ってきて作ったんだよ」

「シーリーンはそんな事言ってなかったぞ……」

「あれっ、まだ届けてなかったっけ。えへへ、忘れてた」

「それに、乳の塊とはなんだ?肉に乗せるとうまいのか……」

「ヤギの乳から作ったの。温めてたら間違ってレモン汁をこぼしちゃったの。
そしたら、少し膜ができてきて、冷ましてから食べたら美味しかったの。
それから作るようになったんだ。
あとね、ガーリックオイルで焼くのも好きだよね」

ミー

「あっ、そうだね、あれも美味しいよね。でも、あれは鶏肉の方がおいしいんじゃない?」

ミー

「ミーちゃんはイノシンの方がいいんだ」

「あれとは何だ」

「トマトだよ。皮を剥いてつぶして肉と煮込むの」

「トマトは輪切りにして塩で食べるのが一番だ。それを煮るだと……」

「うん、美味しいんだよ」

「今日から、しばらくお前の家で夕食を食べるぞ。
シーリーンの家でもあるんだから、俺が行っても問題なかろう」

「うん、いいけど。みんな一緒に食べるけどいいの?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

ちょっと神様!私もうステータス調整されてるんですが!!

べちてん
ファンタジー
アニメ、マンガ、ラノベに小説好きの典型的な陰キャ高校生の西園千成はある日河川敷に花見に来ていた。人混みに酔い、体調が悪くなったので少し離れた路地で休憩していたらいつの間にか神域に迷い込んでしまっていた!!もう元居た世界には戻れないとのことなので魔法の世界へ転移することに。申し訳ないとか何とかでステータスを古龍の半分にしてもらったのだが、別の神様がそれを知らずに私のステータスをそこからさらに2倍にしてしまった!ちょっと神様!もうステータス調整されてるんですが!!

とりかえばや聖女は成功しない

猫乃真鶴
ファンタジー
キステナス王国のサレバントーレ侯爵家に生まれたエクレールは、ミルクティー色の髪を持つという以外には、特別これといった特徴を持たない平凡な少女だ。 ごく普通の貴族の娘として育ったが、五歳の時、女神から神託があった事でそれが一変してしまう。 『亜麻色の乙女が、聖なる力でこの国に繁栄をもたらすでしょう』 その色を持つのは、国内ではエクレールだけ。神託にある乙女とはエクレールの事だろうと、慣れ親しんだ家を離れ、神殿での生活を強制される。 エクレールは言われるがまま厳しい教育と修行を始めるが、十六歳の成人を迎えてもエクレールに聖なる力は発現しなかった。 それどころか成人の祝いの場でエクレールと同じ特徴を持つ少女が現れる。しかもエクレールと同じエクレール・サレバントーレと名乗った少女は、聖なる力を自在に操れると言うのだ。 それを知った周囲は、その少女こそを〝エクレール〟として扱うようになり——。 ※小説家になろう様にも投稿しています

伯爵夫人のお気に入り

つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。 数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。 喜ぶ伯爵夫人。 伯爵夫人を慕う少女。 静観する伯爵。 三者三様の想いが交差する。 歪な家族の形。 「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」 「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」 「家族?いいえ、貴方は他所の子です」 ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。 「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。

転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】  普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。 (しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます) 【キャラクター】 マヤ ・主人公(元は如月真也という名前の男) ・銀髪翠眼の少女 ・魔物使い マッシュ ・しゃべるうさぎ ・もふもふ ・高位の魔物らしい オリガ ・ダークエルフ ・黒髪金眼で褐色肌 ・魔力と魔法がすごい 【作者から】 毎日投稿を目指してがんばります。 わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも? それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。

私は逃げます

恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。 そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。 貴族のあれやこれやなんて、構っていられません! 今度こそ好きなように生きます!

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

処理中です...