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第Ⅱ章 二人旅
妻
しおりを挟む「串焼きを買いに行ったんだよな。
それが、なんでこうなった」
「50本って言ったら、焼いてるうちに冷めちゃうから、そこまで行ってやるって……」
「それで、セイレーンが屋台を引いてきた訳か。
まあ、焼き立てのほうが美味いから文句は言わんが……なんで局長が勢ぞろいしてんだ」
「内務局としては、陛下が召し上がる前に毒見をしませんと」
「局員への差し入れでございます」
「「同じく」」
「いいですよ。どんどん焼きますから」
「……総務局長。全部買い上げて、城の経費で対応しておけ」
「承知いたしました」
「それで、ここで何をしている」
「休憩です。少し食べすぎましたので」
「いや、お前ここは私室だぞ」
「ジャルク王女の部屋で休んでいましたら、邪魔だからここへ行けと追い出されました」
「だからって……セイレーンやレオンは」
「リアと一緒に帰しました。
今日、ゴン爺に、好きなように生きてみろと言われましたの」
「ゴン爺に?」
「兄からは色々なところから圧力がかかっていると言われました」
「圧力だと?何のだ」
「リアには何十件も縁談の話が来てますのに、私には一件もございません」
「……」
「どうしてですか。私には、それほどまでに魅力がないのでしょうか」
「すまん」
「どうして謝るんでしょう?何か悪いことでもされたんですか」
「……」
「煮え切らない殿方のために、こうして自分で出向いてきましたのに」
「……いいのか」
「何が”いいのか”なのでしょうか。ちゃんと、ご自分の言葉でおっしゃってください」
「俺は……」
その夜、お姉ちゃんは帰ってきませんでした。
「シーリーンを妻に迎えた」
局長を前に王様が発表しました。
私は、朝一番にお姉ちゃんから聞いています。
おお!と皆が驚く中、王様は続けます。
「だが、王妃にはならん。新制度により、魔物使いを続ける。そのつもりでいてくれ。
家名だがアートランドとシュトーリアを使い分けるそうだ。よろしく頼む」
「祝典などは?」
「本人の希望で、一切行わない。国民への発表も特にしない。まあ、自然に広まるだろう」
「という事ですので、王の妻になりましたが、王妃として表に出る事はありません。今まで通りシーリーンと呼んでくださいね」
「それでは、まるで……失礼な言い方ですが、側室のような扱いではないですか……」
「はい、私がそう望みましたので。でも、表には出ませんが国民に対する責任は負うつもりでいます。
王の国民に対する思いの一端を担うつもりで妻になりました。
何しろ口下手ですから、お気持ちが国民の皆様に届いていない部分をフォローできればと思っています。
どうか、よろしくお願いします」
「「「こちらこそ!」」」
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