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第Ⅱ章 二人旅
ワイバーン
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リントの町へ向かう途中、ファルコン5羽(一匹は龍ですが)を狙って襲い掛かるワイバーンが現れました。
ワイバーンは飛竜とも呼ばれる珍しい竜種です。
「ワイバーンなんて、初めて見た」
「そうですね。東の洞窟からさらに東に1か月ほど行くと、ラトランドという国があるんだけど、そっちには数頭いるって聞きました」
「あっ、墜落した」
「行ってみましょう」
特に接触したようには見えません。というか、速度差がありすぎてワイバーンではファルコンに追い付けるはずありません。
ワイバーンの元に行くと、羽はボロボロで体は傷だらけです。
従魔登録されているようで、尻尾の先が銀色です。
私が近寄るとギエーと弱弱しい声で鳴きます。
「大丈夫、敵じゃないわ。今手当てするからね。
えっ、子供がいるの。あの山の上ね。うん、任せて。私が助けてあげるから……、そう……、ごめんね力が足りなくて。
うん、頑張ったね。安心して……おやすみなさい……」
ワイバーンは息を引き取りました。
子供を私に託して。
「みんなは。ここにいて。ちょっとこの子の子供を迎えに行ってくるから。
ミーちゃん、チョロリ行くよ!」
ミー、ピュリー
「ちょ、ちょっとリア……」
「ごめん、お姉ちゃん。急ぐみたいなんだ。
ピー助、この子の子供を探して、あの山の上よ。
イチロ達はここに残って、周辺を警戒してね」
ピー
ミーちゃんは険しい山を一気に駆け上がります。
私はミーちゃんにしがみつくだけです。
「何だか、シーリア様って魔物と会話しているような気がするんですけど」
「そうね。手当てをすると、魔物側からも何か返ってくるんだって言ってたわ。
私たちの先生も、そんな話は聞いたことがないって言ってたけど……」
山頂につくと、十数頭の狼が死んでいました。
爪痕があるということは、ワイバーンの仕業でしょう。
洞窟というか浅い窪みの中でパーンと音がします。
中に入ると、こちらにも数頭の狼が死んでいます。
チョロリの腹パンした狼は、ワイバーンの子供の喉を食い破っていました。
その腹に食いついていた狼も、腹パンされています。
この子はもう死んでいました。
ミー、ミーちゃんが奥で呼びます。
行ってみると、男の人の死体があり、その横に三頭の赤ちゃんがいました。
一頭は右の前足を食いちぎられていますが、息はあるようです。
その子に手当てをと、無防備に手を伸ばしてしまいました。
その手は、二頭の赤ちゃんに噛みつかれます。
「ぐっ!」
ミー!
「だっ、大丈夫だよミーちゃん。子供たちも安心して、ほらお母さんの匂い。お母さんから君たちのことを頼まれたんだよ」
傷口はズキズキと痛みますが、自業自得です。
子供たちは味方だと理解してくれたのか、傷口をペロペロと舐めてくれます。
自分の傷と赤ちゃんに応急処置を施して、男の人の持ち物を回収してみんなのところに戻ります。
「リア、その傷!」
「あはっ、ちょっと失敗しちゃった」
結局、そこで野営することになります。
その夜から私は熱を出し、結局、翌日も移動することはできませんでした。
「お姉ちゃん、ごめんね……」
「少しは警戒しなさいね。その歯形はこの子たちでしょ。大体想像できるわ。
さあ、ミーちゃんの採ってきてくれた薬草を飲んで寝なさい」
ミーちゃんの毛玉モードのおかげもあって、次の朝には熱が下がりました。
右手にはまだチカラが入りませんが、速度を落としてもらいミーちゃんに乗っていきます。
「ワイバーンの主人は、やはりラトランド王国の人ですね。
確か、国交はなかったと思いますが、敵対しているわけでもない。
単に間の山脈越えが交流を阻んでいるだけだったと記憶しています」
「なんか、ナタリーが執事に見えてきました」
「失礼な、私は執事です」
「あの様子だと、亡くなってから数か月経っていたと思う。
荷物だけでも家族の元に返してあげたいけど」
「行くとしても、来年の春になってからだね。
冬の山越えは無理そうだから」
「お姉ちゃんも一緒に行ってくれる?」
「決まってるでしょ。
リア一人で行かせたら、何をするか分からないもの。
それに、貴族である以上、公の訪問でなくても何かあれば国の問題になるわ。
王様にも報告しておかないとね」
ワイバーンは飛竜とも呼ばれる珍しい竜種です。
「ワイバーンなんて、初めて見た」
「そうですね。東の洞窟からさらに東に1か月ほど行くと、ラトランドという国があるんだけど、そっちには数頭いるって聞きました」
「あっ、墜落した」
「行ってみましょう」
特に接触したようには見えません。というか、速度差がありすぎてワイバーンではファルコンに追い付けるはずありません。
ワイバーンの元に行くと、羽はボロボロで体は傷だらけです。
従魔登録されているようで、尻尾の先が銀色です。
私が近寄るとギエーと弱弱しい声で鳴きます。
「大丈夫、敵じゃないわ。今手当てするからね。
えっ、子供がいるの。あの山の上ね。うん、任せて。私が助けてあげるから……、そう……、ごめんね力が足りなくて。
うん、頑張ったね。安心して……おやすみなさい……」
ワイバーンは息を引き取りました。
子供を私に託して。
「みんなは。ここにいて。ちょっとこの子の子供を迎えに行ってくるから。
ミーちゃん、チョロリ行くよ!」
ミー、ピュリー
「ちょ、ちょっとリア……」
「ごめん、お姉ちゃん。急ぐみたいなんだ。
ピー助、この子の子供を探して、あの山の上よ。
イチロ達はここに残って、周辺を警戒してね」
ピー
ミーちゃんは険しい山を一気に駆け上がります。
私はミーちゃんにしがみつくだけです。
「何だか、シーリア様って魔物と会話しているような気がするんですけど」
「そうね。手当てをすると、魔物側からも何か返ってくるんだって言ってたわ。
私たちの先生も、そんな話は聞いたことがないって言ってたけど……」
山頂につくと、十数頭の狼が死んでいました。
爪痕があるということは、ワイバーンの仕業でしょう。
洞窟というか浅い窪みの中でパーンと音がします。
中に入ると、こちらにも数頭の狼が死んでいます。
チョロリの腹パンした狼は、ワイバーンの子供の喉を食い破っていました。
その腹に食いついていた狼も、腹パンされています。
この子はもう死んでいました。
ミー、ミーちゃんが奥で呼びます。
行ってみると、男の人の死体があり、その横に三頭の赤ちゃんがいました。
一頭は右の前足を食いちぎられていますが、息はあるようです。
その子に手当てをと、無防備に手を伸ばしてしまいました。
その手は、二頭の赤ちゃんに噛みつかれます。
「ぐっ!」
ミー!
「だっ、大丈夫だよミーちゃん。子供たちも安心して、ほらお母さんの匂い。お母さんから君たちのことを頼まれたんだよ」
傷口はズキズキと痛みますが、自業自得です。
子供たちは味方だと理解してくれたのか、傷口をペロペロと舐めてくれます。
自分の傷と赤ちゃんに応急処置を施して、男の人の持ち物を回収してみんなのところに戻ります。
「リア、その傷!」
「あはっ、ちょっと失敗しちゃった」
結局、そこで野営することになります。
その夜から私は熱を出し、結局、翌日も移動することはできませんでした。
「お姉ちゃん、ごめんね……」
「少しは警戒しなさいね。その歯形はこの子たちでしょ。大体想像できるわ。
さあ、ミーちゃんの採ってきてくれた薬草を飲んで寝なさい」
ミーちゃんの毛玉モードのおかげもあって、次の朝には熱が下がりました。
右手にはまだチカラが入りませんが、速度を落としてもらいミーちゃんに乗っていきます。
「ワイバーンの主人は、やはりラトランド王国の人ですね。
確か、国交はなかったと思いますが、敵対しているわけでもない。
単に間の山脈越えが交流を阻んでいるだけだったと記憶しています」
「なんか、ナタリーが執事に見えてきました」
「失礼な、私は執事です」
「あの様子だと、亡くなってから数か月経っていたと思う。
荷物だけでも家族の元に返してあげたいけど」
「行くとしても、来年の春になってからだね。
冬の山越えは無理そうだから」
「お姉ちゃんも一緒に行ってくれる?」
「決まってるでしょ。
リア一人で行かせたら、何をするか分からないもの。
それに、貴族である以上、公の訪問でなくても何かあれば国の問題になるわ。
王様にも報告しておかないとね」
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