稀代の魔物使い

第Ⅱ章 二人旅

襲撃前夜

セイレーンにピエールさんを乗せて、ミーちゃんにお姉ちゃんと私が乗って追跡に入る。
兵士長にはすぐに追いついた。

「おやおや、こんな時間に変わった顔ぶれだな」

「兵士長こそ、こんな時間にどこへ行こうってんですか」

「君が言ったんじゃないか。魔物が増えていると。
だからこうして自分の目で確かめているのだよ」

「このあたりの魔物は、昼型ですからね。こんな時間じゃ無理ですよ。
さあ、一旦戻って夜が明けてから出直しましょうや」

「いや、私はもう少し様子を見るから、君たちは戻ってくれ。
それより、門のところにもあったが、変わった明かりを持っているじゃないか。
できればそれを貸してくれないか」

「いいんですかい。これを持っていくと、アンデッドは昇天しちまうみたいなんですが」

「なにっ！」

兵士長は剣に手をかける。

「トランガの情報は伝わっていないようですね」

「どういうことだ」

「トランガでアンデッドを返り討ちにできたのは、この光が守ってくれたからなんですよ。
そうでもないと、さすがに1万のアンデッドは倒せませんよ」

「なんだと！そんなことが……」

「それに、メリア王国であんたを見た事があるって通報がありましてね」

状況を理解したのか、兵士長は刀を抜きます。

「やめた方がいいですよ。後ろも従魔が塞いでますから」

「なにっ！」

兵士長が気をそらすその瞬間、ミーちゃんが剣を叩き落し、セイレーンが兵士長を組み伏せる。

「ヒュー、あのシーリーンちゃんがブラフを使うとはね」

「ご存じないんですか、女は平気でウソをつくんですよ。
そんなんだからいつまでも結婚できないんですよ」

「お前に言われたくねえよ」

「うっ……」

お姉ちゃんが自滅してます。



「ザルツ兵士長、どうだろう全て話してもらえんだろうか。
正直にはなしてくれれば、悪いようにはしないつもりだ」

領主様が話しかけます。
同席者は、私とお姉ちゃんと副兵士長のピエールさんです。

「ふん、話したところでこの町の運命は変わらんだろう。
ならば、この俺も運命を共にしようではないか」

「おそらく、明日の夜になるんでしょうね。
アンデッド約２０００体、死人使いと弓兵・魔法使いを中心とした兵５０名程度。
そこまでの情報は掴んでいるんですよ」

「どうしてそれを」

「私たちの元には、優秀な魔物使いさんがいますからね」