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第Ⅱ章 二人旅
兵士長
しおりを挟むお姉ちゃんから、領主様に全部お話ししました。
兵士長が怪しいこと、アンデッドが向かってきていること。
魔物が急激に増えていること。
一角獣の角の事。
「そうか。兵士長は別の町で経験があるというので、1年前に雇ったんだが……
裏付けを取らなかったのは私の落ち度だな。
アンデッドは、その一角獣の角で本当に退治できるのか?」
「トランガの町の実績を信じていただくより他に方法はございません」
「うん、わかった。それにしても、ギルドのお手柄だな」
「ええ。ギルマスもゲンさんも頼りになります」
「金貨20枚は私の方で負担しよう」
「ですが、角を町に残しても意味がありません」
「いや、事が終わったら角は君たちが持って行ってくれ。王から頼られることはこれからもあるだろう。その時に使えばいい。
問題は指揮系統だな」
「お姉ちゃんに任せればいいと思います」
「「えっ」」
「トランガの町での経験もあるし、ミーちゃんたちに直接指示できます」
「そ、それはそうだけど」
「前と同じように、こちらからは飛び道具や魔法は使わないで、ミーちゃんとチョロリに任せるの。
それまでは防御に徹してもらって、相手が静かになったらセイレーンの頭に角をつけてアンデッドを一掃すればいい。
あとは残党狩り」
「また、ミーちゃんとチョロリに人を殺せって命令するんだよ。いいの、それで」
「いいわけないよ。でも、そうしないと町の人が犠牲になっちゃう……」
「リン……」
お姉ちゃんに抱きしめられました。
「そうか、そうだよな……
15歳の女の子に、そんなことをやらせようとしてるんだよな……俺は。
他に、何か手段は……」
「他に魔物を出しても、アンデッドの餌食になるだけだよ。
アンデッドを倒せて、武器をもった人間や魔法使いを相手にできるのはミーちゃんとチョロリだけ」
「待てよ、昼のうちに人間を始末してしまえばいい」
「それはダメだよ。そうすると、指揮系統をなくしたアンデッドが拡散しちゃうもの」
「そうね、アンデッドが町に向かってくれば自然と自滅してくれるもんね」
「一角獣の角が4本。夜型の魔物に背負ってもらえばいい。
それに、明るいうちに匂いに敏感な魔物に土を掘り返させれば相当減らすことは出来るんじゃないか」
「ねえ、チョロリに角を持たせて、空からアンデッドを一掃できないかな。
人間の兵士がいなくなれば、夜に目立っても大丈夫じゃない?」
「チョロリ、そんなことできる?」
ピュリーと元気な返事が返ってきます。
「よし。疑いのある兵士長には黙って、副兵士長に出陣させよう。
ピエールだ、兵士長に気づかれないように、副兵士長のピエールを呼んでくれ」
副兵士長のピエールさんは、シャイリアのクロさんと同じような大男さんです。
「おっ、シーリーンじゃねえか。久しぶりだな」
「ご無沙汰しています。ピエールさんは相変わらずお元気そうですね」
「おお、俺から元気をとったら、干物しか残らねえぞ」
「挨拶は後にしてほしい。実はな……」
領主さんから正確に状況を伝えます。
「ああ、俺もおかしいと思ってたんだ。
魔物が増えてるって進言しても、気のせいだとか、自分で周辺を確認したかそんな様子は見られねえって……
まてよ、今夜もその話をしたんだが、直接自分の目で確かめてくるって、30分くらい前に出て行ったぞ!」
「それって……」
「ああ、逃げたな。まだ、それほど遠くには行ってねえだろう。兵士をすぐに追わせる」
「いえ、夜ですから私の方が早いです。ミーちゃん、昨日ここに座ってた人。匂いを追える?」
ミー!大丈夫そうです。
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