稀代の魔物使い

モモん

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第Ⅱ章 二人旅

ゴーレム戦

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一時間後、ぐったりしていた魔導士さんが叫びます。

「信じられない!魔力の回復薬を飲んでも一晩寝てやっと3割程度の回復だというのに、多分全回復してるぞ」

「おいおい、本当かよ」

「隊長、ゴーレムと対峙すればわかりますよ!」

「すみません。魔導士さんはミーちゃんの指示に従っていただけますか。
クロさんのタイミングもミーちゃんが出します」

「ああ、これだけ回復してもらったんだ。効果的な指示をたのむぜ。
闇雲に水魔法を打っても、足止めにしかならないんだ。
全部、任せるさ」

「俺もだ。一撃食らっちまったら、このハンマーを振れるやつがいなくなっちまうからな」

「前回、我々は役立たずだったんだ。
戦力として使ってもらえれば、領主様に堂々と報告できる。
好きなように使ってほしい」

「隊長さん。ありがとうございます」



かくしてゴーレム討伐が始まりました。
三方向からの水魔法+ブレスでゴーレムの足を止め、ミーちゃんとセイレーン・ピー助による属性攻撃。
これは、オレンジの杖で爪や牙に属性を持たせたものです。

「くっ、これでも動きが少し鈍くなる程度かよ」

隊長さんが言うように、ミーちゃん全力のキックやセイレーンの体当たりにもびくともしません。
ただ、こちらも全力ではありません。
魔法使いさんにはチカラをセーブするように伝えてあります。
ここまでの上半身への集中攻撃で意識を上に持っていき、チョロリはブレスを細くして膝狙いに移行します。
同時に魔法使いさんは威力を高めてもらいます。

チョロリの膝攻撃は、徐々に接合部分を削っていきます。
やがて、ゴーレムは体重を支えきれなくなりグラついてきています。

「隊長さん、今です!」

それぞれの武器には属性を付与してあり、一斉に膝へ攻撃してもらいます。
ガンガンガンガン!
一人が吹き飛ばされますが、この機を逃すまいと懸命に攻撃してくれます。
そこを、ピーちゃんとセイレーンの体当たりが加わり、ついにゴーレムは倒れました。

「クロさん、出番です!」

ウオーなんて叫びもあげず、クロさんは足・両手の関節を粉砕していきます。
そして、頭を粉砕して、仕上げに胸を砕きます。
ここに至って、ゴーレムは完全に沈黙しています。

「まだです!胸の中にある黒いコアを破壊してください!」

「おお!」

クロさんはここに至って初めて声をあげました。
クロさん渾身の一撃で、ゴーレムのコアは二つに割れています。

「やったのか……」

「隊長さん、おめでとうございます。討伐完了です」


けが人はゴーレムに吹き飛ばされた一人です。両腕の骨折という重症ですが、命に別状はありませんでした。
興奮した様子のレオンが滑稽な踊りを見せてくれて、みんなの緊張感も吹き飛びました。


私とお姉ちゃんは、そのまま町に帰ります。
討伐隊のみなさんは祝宴でしょう。それに、クロさんの移動に合わせていたら日が暮れてしまいます。


私は帰って領主様に報告します。

「そうですか、討伐隊もおチカラになれたんですね」

「ええ、私たちだけではゴーレムは難しいですね。
皆さんの活躍をお見せできないのが残念です」

「しかし、クロが英雄になる日が来るとは」

「足手まといだと、遠征には連れて行ってもらえませんでしたからね」

「ナタリーの励ましのおかげかもしれんな」

「いえ、私はいつでも最高のコンディションでいるようアドバイスしただけですから」


三日後、王都からの連絡が入るまでの束の間の平穏でした。
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