稀代の魔物使い

モモん

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第Ⅱ章 二人旅

水属性

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屋敷に戻ると庭にカゴが置かれており、貝がいくつも入っていました。

「あっ、お帰りなさいませ。
先ほどから。ピー助ちゃんとチョロリちゃんが貝を咥えて来ておりましたので、カゴを用意いたしました。
屋敷の料理人に聞いたところ、ブガイという淡水産の二枚貝で、泥臭く食用には適さないようです」

「あ、ありがとう。
多分、食べるんじゃなくて道具を作るんだと思う」

「道具ですか。ほかに入用のものはございませんか?」

ミーちゃんは近くに干してあった桶を引きずってきました。

「あの桶、使っても大丈夫?」

「メイドに伝えておきますから問題ございませんよ」

ミーちゃんを手伝って、桶にブガイを移すと、ブガイは水を吐き始めました。
どう考えても、ブガイの体積にあわない量の水が満ちています。

ミーちゃんはそのままお出かけし、1mほどの木の枝を咥えて戻ってきました。
青い杖の時と同じようなまっすぐな枝です。
次にナタリーさんを引っ張って、武器庫に入れてもらいます。
ミーちゃんが選んだのは、特大の金属製ハンマーです。
私たち三人では引きずることもできません。

ナタリーさんが連れてきたのはサイクロプスを思わせるような2mもある巨人さんです。

「ああ、そいつは俺専用のハンマーだぜ。
100キロ近くあるから、お嬢ちゃんたちの手には負えねえよ。
それをどうするんだい?」

「多分、ゴーレム用の武器にするんだと思います」

「だがよ、討伐隊に水魔導士がついてんだ。ゴーレムは討伐されるんじゃねえか?」

「何かあるといけませんので、備えておくに越したことはありません」

「まあ、そうだが。そいつの出番が来るってことは俺の出番って事だな。
いいぜ、どこに持っていけばいいんだ」

ミーちゃんの誘導で、ブガイの横にハンマーと皮を剥いだ白木が並べられます。
ピー助たちが、今度はオレンジの木の実を咥えてきました。これで準備は整ったようです。

ミーちゃんとチョロリで、ブガイを咀嚼して塗りたくります。
チョロリがブレスで乾かして、今度は木の実です。
これを3回ほど繰り返して完成のようです。


翌朝、私たちはミーちゃんに連れられて町の外にやってきました。
もう陽が昇っています。

「オレンジの杖を持ってきたけど、これで何かするの?」

すると、チョロリがオレンジの杖にスリスリしてきました。
そして徐に息を吸い込み、ブレスを噴きます。

「これって、水のブレス!」

「まさか、ブレスの種類を変えられるなんて……」

「すごいです。チョロちゃんのブレスで虹ができてます」

ミーちゃんは満足顔です。

「あのハンマーにも水の属性が付与されたの?」

ミー。これは肯定のミーです。

翌日、早馬で応援の要請がありました。
討伐隊の水魔導士さんでは退治しきれず、魔力切れで足止めもできないそうです。
領主様から依頼されて、応援に向かいます。
サイクロプスのおっちゃんも同行してもらいます。
例のハンマー持参で。

鎧装備でハンマー持参のおっちゃんは、馬では無理です。
4頭立ての馬車で村に向かいますが、とにかく遅いです、


「ん、クロじゃねえか」

「おう、隊長助っ人にきたぜ」

「お前が来れば100人力だが、なにしろ物理攻撃が効かない。
お前のハンマーでも無理だろう」

「ああ、だけどよ、嬢ちゃんの魔物たちが属性を付けてくれたみてえなんだ。
こればっかりは、実戦で試してみねえと分かんねえけどな」

「属性?ハンマーに属性だと……そんなもん、聞いたこともないが……」

「魔力切れの水魔導士さんは、ミーちゃんの毛玉で休んでください。
1時間後に出発しましょう」

「魔力が回復するというのか?」

「確認したことがないので、どこまで効くか分かりません。
体力の回復効果があるのは間違いありませんから」
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