稀代の魔物使い

モモん

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第Ⅱ章 二人旅

それ、イヌですよね?

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ナタリーさんは有能な方でした。
午前中に私たちの身だしなみチェックを行い、予定の確認をします。
ギルドに顔を出すくらいで、特にないんですけどね。
日中はセイレーンをゴシゴシ洗い、チョロリのウロコを磨いてツヤをだし、ピー助の体を拭いてミーちゃんをブラッシングします。
ミーちゃんがおとなしくブラッシングされているなんて珍しいことです。

薬局で日焼け止めの軟膏を調合してもらい、農家でヤギの乳を仕入れてきます。

「元々、誰かのために働くのが好きなんです。
貴族なんかに嫁いだら、料理やお掃除もできないし、退屈な生活なんて考えるだけで憂鬱になりますよね。
そんな時です。シーリーン様が王様の求愛を断られたって耳にして、王様の求愛を断れるなら、貴族との縁談を断るくらい問題ないじゃないですか。
そんな憧れのシーリーン様にお仕えできるなんて嫁のようです」

「えっ、あの……」

お姉ちゃんは、思わぬところで人に影響を与えていました。



カルト様のお屋敷にお世話になって2週間。
レオンは見違えるほど元気になりました。
白い毛も生えてきて、ヨチヨチと歩き回ります。
母親代わりのミーちゃんは、昼間は毛玉モードで寝かしつけ、夜は庭でお散歩したりしています。

時折セイレーンにレオンを託してどこかに出かけ、木の実を採ってきてレオンに塗りたくります。
その影響でしょうか、レオンの毛はうっすらとオレンジ色を帯びてきています。

「そろそろ、従魔登録してもよさそうね」

事情を知っているナタリーさんが、レオンの頭から背中までを覆う革の外套を作ってくれました。
初めて陽のあたる場所に出るときは、おっかなびっくりでしたが、特に苦しむ様子はありません。
こうして、私たちはギルドまでの100mを歩き切りました。

「いらっしゃいませ。
えっと、シーリーン様、その子は?」

「レオンです。今日は従魔登録しにまいりました」

「その外套を外してもらっていいですか?」

「ええ、もちろんです」

お姉ちゃんはレオンの外套を外します。

「真っ白な……、イヌですか?」

まだ、子供ですから、体はコロコロとしており、フワフワの白い毛に包まれています。

「イヌ、に見えますよね~。そうイヌです」

「お姉ちゃん、イヌに羽はありません。ムチのような尻尾もないです」

「その尻尾、羽……、不思議生物として登録しましょうか」

「いいですわね。不思議生物レオン君です」

ミーとレオン君が鳴きます。

「二人とも、現実に目を向けてください」

「「……」」

「どう見ても、キメラじゃないですか。キメラ亜種です!」

ガタっとギルド内の全員が立ち上がります。

「き、キメラだと!」

キョロキョロと見まわし、レオンに目をやりますが、これではないと他を探します。

「ダメです。私の脳が、これはキメラではないと言ってます」

「なに訳の分からない事言ってるんですか!さっさと従魔登録をしてください」

ポン!ミーちゃんが毛玉モードに変身しました。
多分、初めてのお出かけで疲れたんでしょう。レオンが毛玉に包まれていきます。

「な、何ですかそれ。ミーちゃんのそんな特技聞いてませんよワタシ。
ギルマス!すみません、フランは今から食事休憩に入りますので、アトをお願いします」

フランさんはフラフラとカウンターの腰扉を抜けてミーちゃんに吸い寄せられていきます。

「なに馬鹿なことを言ってるんですか、職場放棄は減給ですよ」

奥からギルマスがやってきて状況を認識します。
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