稀代の魔物使い

モモん

文字の大きさ
上 下
32 / 172
第Ⅱ章 二人旅

ナタリー

しおりを挟む

その時間になってやってきた討伐隊にあとを任せて、キメラの子供を布にくるんで村へ向かいます。

「父の出るヤギか羊がいればいいけど……」

器にヤギの乳をもらい、さてどうやって飲ませるか考えました。

「そうだ、チョロリ、乳を口に含んで少しずつ飲ませられないかな?」

ピュリー、と理解してくれました。チョロリの尖った口ならば可能じゃないですか。
かくして、キメラの子供に吸われるチョロリの図が完成しました。

ミーちゃんは村に着くと、どこかへ行ってしまいましたが、少しして木の実を大量に咥えて戻ってきます。
その木の実を口で咀嚼してキメラの子供にこすりつけます。

「ミーちゃん、火傷の薬?それとも日焼け止めかな?」

どちらも肯定しています。

「お姉ちゃん、この子育つかな」

「うん、大丈夫だとは思うけど、今のところ太陽には当てられないし、どうしよう……」

結局、討伐隊の帰りを待って事情を説明し、夜になって町に戻ることにします。

「しかし、キメラの亜種というか、前例のない従魔……、そういえば、三匹も前例のない従魔でしたね。
無事に育つといいですね」

隊長さんは応援してくれますが、村人には難色を示されました。
町での反応が気になるところです。

夜になって町へ帰りますが、キメラはお姉ちゃんが抱いていきます。
出発前に乳をいっぱい飲ませて、水筒にも乳を入れました。
来た時の半分にスピードを落として、日の出前に町に着ければいいんです。

「お姉ちゃん、名前はどうするの?」

「えっ、私?」

「だって、お姉ちゃんの従魔だよね」

「こういう初物はリアの専売特許でしょ」

「私は三匹で十分なの」

「だって、キメラなんて従魔にしたら、またお嫁の貰い手が……」

「お姉ちゃんには王様がいるでしょ。
だいたい、王様を振った女なんて、手を出す人がいると思ってるの?」

「そ、それ、考えないようにしてたのに……」

名前は、レオンになりました。
少し様子を見て、大丈夫そうなら従魔登録します。

「ね、ねえリア、尻尾も普通だし、この子ライオンで従魔登録……」

「羽はどう説明するの?受付のお姉さん買収する?」



夜明け前に町に到着し、領主様の屋敷にお邪魔します。

「こんな夜明け前に申し訳ございません。
キメラ20頭は討伐いたしました。隊長さんにもご確認いただいております」

「おお、こんなに早く討伐!って、まだお願いして二日しか経ってませんよね。
これって、移動に必要な時間なんですけど」

「失礼いたします。
領主様、その件でしたら昨夜遅くに討伐隊から報告が届いております」

女性の執事さんがフォローしてくれました。

「まさか、本当に討伐されたとは、お礼の言葉もありません」

「それで、実はお願いが一点ございまして……」

「なんでしょう。町の恩人ですから、何なりとお申し付けください」

「この子……なんですが」

お姉ちゃんが抱いていたレオンを見えるようにしました。

「これは、白い……犬?」

「りょ、領主様、羽が……」

「まさか……」

「お察しの通り、キメラの子供です」

「……、しかし……」

「厳密には、キメラ亜種でしょうか、尻尾も違いますし、白子だと思いますけど」

「キメラを、育てるおつもりですか」

「……はい。この町で無理ならば、実家か王都にまいります」

「うーむ。この町では、確かにキメラは育てづらいでしょうね。
分かりました、街中の宿では抵抗もあるでしょう。
この家に移ってください。それが条件です」

「よろしいのでしょうか?」

「龍種を従魔にされているお二人ならば、ギルドも認めるでしょう。
私もどんなふうに育つのか楽しみでもありますよ」

「ありがとうございます」

「では、ナタリー早速部屋の手配を。
それと必要なものはありますか?生まれたてのようですから、乳とか?」

「はい、5時間おきくらいに乳を飲みますので、これから農家へ行って交渉しようかと思っています」

「そういう事は、このナタリーにお申し付けください。
ナタリーはお二人の専属といたしますのでご遠慮なさらずに」

「でも、そうすると領主様にご迷惑が……」

「実を申しますと、ナタリーは妹の娘で、現在見習いの最中なのです。
王都の貴族に嫁ぐのがどうしても嫌だと我儘を申しましたので、教育中と解釈してください。
できれば、王都へも連れて行っていただき、慣れさせていただければと画策しております」

「シーリーン様、シーリア様、ナタリーでございます。
口煩い叔父上から逃れる機会を、どうか奪わないでください。
何でもお申し付けください。どうかよろしくお願いいたします」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

魔法少女マヂカ

武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
マヂカは先の大戦で死力を尽くして戦ったが、破れて七十数年の休眠に入った。 やっと蘇って都立日暮里高校の二年B組に潜り込むマヂカ。今度は普通の人生を願ってやまない。 本人たちは普通と思っている、ちょっと変わった人々に関わっては事件に巻き込まれ、やがてマヂカは抜き差しならない戦いに巻き込まれていく。 マヂカの戦いは人類の未来をも変える……かもしれない。

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

誰もシナリオを知らない、乙女ゲームの世界

Greis
ファンタジー
【注意!!】 途中からがっつりファンタジーバトルだらけ、主人公最強描写がとても多くなります。 内容が肌に合わない方、面白くないなと思い始めた方はブラウザバック推奨です。 ※主人公の転生先は、元はシナリオ外の存在、いわゆるモブと分類される人物です。 ベイルトン辺境伯家の三男坊として生まれたのが、ウォルター・ベイルトン。つまりは、転生した俺だ。 生まれ変わった先の世界は、オタクであった俺には大興奮の剣と魔法のファンタジー。 色々とハンデを背負いつつも、早々に二度目の死を迎えないために必死に強くなって、何とか生きてこられた。 そして、十五歳になった時に騎士学院に入学し、二度目の灰色の青春を謳歌していた。 騎士学院に馴染み、十七歳を迎えた二年目の春。 魔法学院との合同訓練の場で二人の転生者の少女と出会った事で、この世界がただの剣と魔法のファンタジーではない事を、徐々に理解していくのだった。 ※小説家になろう、カクヨムでも投稿しております。 小説家になろうに投稿しているものに関しては、改稿されたものになりますので、予めご了承ください。

転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?

N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、 生まれる世界が間違っていたって⁇ 自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈ 嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!! そう意気込んで転生したものの、気がついたら……… 大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い! そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!! ーーーーーーーーーーーーーー ※誤字・脱字多いかもしれません💦  (教えて頂けたらめっちゃ助かります…) ※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません

処理中です...