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第Ⅱ章 二人旅
ナタリー
しおりを挟むその時間になってやってきた討伐隊にあとを任せて、キメラの子供を布にくるんで村へ向かいます。
「父の出るヤギか羊がいればいいけど……」
器にヤギの乳をもらい、さてどうやって飲ませるか考えました。
「そうだ、チョロリ、乳を口に含んで少しずつ飲ませられないかな?」
ピュリー、と理解してくれました。チョロリの尖った口ならば可能じゃないですか。
かくして、キメラの子供に吸われるチョロリの図が完成しました。
ミーちゃんは村に着くと、どこかへ行ってしまいましたが、少しして木の実を大量に咥えて戻ってきます。
その木の実を口で咀嚼してキメラの子供にこすりつけます。
「ミーちゃん、火傷の薬?それとも日焼け止めかな?」
どちらも肯定しています。
「お姉ちゃん、この子育つかな」
「うん、大丈夫だとは思うけど、今のところ太陽には当てられないし、どうしよう……」
結局、討伐隊の帰りを待って事情を説明し、夜になって町に戻ることにします。
「しかし、キメラの亜種というか、前例のない従魔……、そういえば、三匹も前例のない従魔でしたね。
無事に育つといいですね」
隊長さんは応援してくれますが、村人には難色を示されました。
町での反応が気になるところです。
夜になって町へ帰りますが、キメラはお姉ちゃんが抱いていきます。
出発前に乳をいっぱい飲ませて、水筒にも乳を入れました。
来た時の半分にスピードを落として、日の出前に町に着ければいいんです。
「お姉ちゃん、名前はどうするの?」
「えっ、私?」
「だって、お姉ちゃんの従魔だよね」
「こういう初物はリアの専売特許でしょ」
「私は三匹で十分なの」
「だって、キメラなんて従魔にしたら、またお嫁の貰い手が……」
「お姉ちゃんには王様がいるでしょ。
だいたい、王様を振った女なんて、手を出す人がいると思ってるの?」
「そ、それ、考えないようにしてたのに……」
名前は、レオンになりました。
少し様子を見て、大丈夫そうなら従魔登録します。
「ね、ねえリア、尻尾も普通だし、この子ライオンで従魔登録……」
「羽はどう説明するの?受付のお姉さん買収する?」
夜明け前に町に到着し、領主様の屋敷にお邪魔します。
「こんな夜明け前に申し訳ございません。
キメラ20頭は討伐いたしました。隊長さんにもご確認いただいております」
「おお、こんなに早く討伐!って、まだお願いして二日しか経ってませんよね。
これって、移動に必要な時間なんですけど」
「失礼いたします。
領主様、その件でしたら昨夜遅くに討伐隊から報告が届いております」
女性の執事さんがフォローしてくれました。
「まさか、本当に討伐されたとは、お礼の言葉もありません」
「それで、実はお願いが一点ございまして……」
「なんでしょう。町の恩人ですから、何なりとお申し付けください」
「この子……なんですが」
お姉ちゃんが抱いていたレオンを見えるようにしました。
「これは、白い……犬?」
「りょ、領主様、羽が……」
「まさか……」
「お察しの通り、キメラの子供です」
「……、しかし……」
「厳密には、キメラ亜種でしょうか、尻尾も違いますし、白子だと思いますけど」
「キメラを、育てるおつもりですか」
「……はい。この町で無理ならば、実家か王都にまいります」
「うーむ。この町では、確かにキメラは育てづらいでしょうね。
分かりました、街中の宿では抵抗もあるでしょう。
この家に移ってください。それが条件です」
「よろしいのでしょうか?」
「龍種を従魔にされているお二人ならば、ギルドも認めるでしょう。
私もどんなふうに育つのか楽しみでもありますよ」
「ありがとうございます」
「では、ナタリー早速部屋の手配を。
それと必要なものはありますか?生まれたてのようですから、乳とか?」
「はい、5時間おきくらいに乳を飲みますので、これから農家へ行って交渉しようかと思っています」
「そういう事は、このナタリーにお申し付けください。
ナタリーはお二人の専属といたしますのでご遠慮なさらずに」
「でも、そうすると領主様にご迷惑が……」
「実を申しますと、ナタリーは妹の娘で、現在見習いの最中なのです。
王都の貴族に嫁ぐのがどうしても嫌だと我儘を申しましたので、教育中と解釈してください。
できれば、王都へも連れて行っていただき、慣れさせていただければと画策しております」
「シーリーン様、シーリア様、ナタリーでございます。
口煩い叔父上から逃れる機会を、どうか奪わないでください。
何でもお申し付けください。どうかよろしくお願いいたします」
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