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第Ⅰ章 修行
宮廷魔物使いにはならないと
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途切れないアンデッドの襲撃ですが、こちらは聖なる光と聖水のおかげで、ほとんど消耗はありません。
やがて、明け方が近くなり、アンデッドは地に潜っていきます。
ミーちゃんとチョロリは、そのへんの小高い場所から様子を見ているはずです。
太陽が昇っても動いているのは人間だから、倒すように指示してあります。
チョロリには、例の急降下からのパーン攻撃を解禁してあります。
だって、チョロリたちの方が大切だから。
太陽が昇ると、今度はセイレーンたち狼部隊の出番です。
アンデッドの匂いを追って、土を掘り返します。
体の一部にでも太陽があたれば、アンデッドは土に還ります。
「兵士の死体を調べたが、隣国のもので間違いないな。
だが、交渉は国対国の仕事だ。
わしらは再度の襲撃に備える」
トランザムさんの言葉に抗議の声があがります。
「応援に出した仲間が20人以上犠牲になってるんだ。
何かしら報復しねえと収まらねえじゃねえか」
「それなんだが、応援に出した町自体が存在しないんだ。
かといって、王国に戦争を仕掛けるわけにもいかんだろう。
せめて、十分な賠償を期待しようではないか」
こうして、長い一日が終わりました。
次の夜の襲撃はありません。
「お姉ちゃん…、私、戦争で人を殺すために…、この子たちに、そんな訓練なんてしたくない……」
ベッドに入ってから打ち明けました。
「私は…、私たちが生き残れるように、セイレーンを強くしたかったわ。
でも、そうね、戦争で活躍するのとはちょっと違うよね」
「うん」
「それに、女の子の夢は……、王子様が迎えに来てくれるんであって、王様じゃないわよね」
「プッ、何それ」
「笑うな。リアだって、そういう夢を見たことないの?」
「えっと、小さいころに……、寝ながらお話を聞いた気がする」
「……もしかして、私がしたのかな?」
「そうかな……」
「先生には、いろいろと教えてもらって悪いけど、宮廷魔物使いになるのはお預けにして、二人で旅に出ようか」
「えっ?」
「別の国へ行ったり、ほかの龍を探したりするの。
冒険者として依頼を受けたり、新しい仲間を探すのはどうかな?」
「それ、すっごく楽しそう」
「私は、お姉ちゃんの代わりに、リアを幸せにしてあげるために探したんだもの、楽しいことしたいよね」
「うん」
「そうと決まれば、王様にお断りの手紙書かなくっちゃ……。
でも、大丈夫なのかな、お兄様に迷惑がかからなければいいんだけど」
「……」
先生が宮廷魔物使いを10名連れて帰ってきたのは、それから二日後のことでした。
「そうか、宮廷魔物使いになるのは見送りか」
「お世話になっておきながら申し訳ございません」
「ごめんなさい」
「いや、わしの方こそ、お前たちに辛い思いをさせた。
どのみち、わしは隣国との交渉に立ち会わんとならないから、修行も中断するつもりでいたので問題はない」
「これは、王様へのお手紙と頂いたお金です」
「おう、そうか、王が振られるとはいい手土産ができた。
じゃが、その金は持っていけ。
今回の戦に対する報奨金として持っていけ」
「こ、これでは多すぎます」
「ならば、一角獣の角を一本買い取る対価としてどうじゃ。
お前たちの旅には、一本あれば十分じゃろう。
国にあれがあれば、アンデッド対策として千人の兵士に匹敵する。
ニコンだけでは心もとないからのう」
「分かりました」
「それと、お前たちはわしの弟子じゃ。宮廷魔物使いにならなくても、そこは変わらん。
寂しくなったらいつでも訪ねてくるがいい」
「「はい。ありがとうございました」」
やがて、明け方が近くなり、アンデッドは地に潜っていきます。
ミーちゃんとチョロリは、そのへんの小高い場所から様子を見ているはずです。
太陽が昇っても動いているのは人間だから、倒すように指示してあります。
チョロリには、例の急降下からのパーン攻撃を解禁してあります。
だって、チョロリたちの方が大切だから。
太陽が昇ると、今度はセイレーンたち狼部隊の出番です。
アンデッドの匂いを追って、土を掘り返します。
体の一部にでも太陽があたれば、アンデッドは土に還ります。
「兵士の死体を調べたが、隣国のもので間違いないな。
だが、交渉は国対国の仕事だ。
わしらは再度の襲撃に備える」
トランザムさんの言葉に抗議の声があがります。
「応援に出した仲間が20人以上犠牲になってるんだ。
何かしら報復しねえと収まらねえじゃねえか」
「それなんだが、応援に出した町自体が存在しないんだ。
かといって、王国に戦争を仕掛けるわけにもいかんだろう。
せめて、十分な賠償を期待しようではないか」
こうして、長い一日が終わりました。
次の夜の襲撃はありません。
「お姉ちゃん…、私、戦争で人を殺すために…、この子たちに、そんな訓練なんてしたくない……」
ベッドに入ってから打ち明けました。
「私は…、私たちが生き残れるように、セイレーンを強くしたかったわ。
でも、そうね、戦争で活躍するのとはちょっと違うよね」
「うん」
「それに、女の子の夢は……、王子様が迎えに来てくれるんであって、王様じゃないわよね」
「プッ、何それ」
「笑うな。リアだって、そういう夢を見たことないの?」
「えっと、小さいころに……、寝ながらお話を聞いた気がする」
「……もしかして、私がしたのかな?」
「そうかな……」
「先生には、いろいろと教えてもらって悪いけど、宮廷魔物使いになるのはお預けにして、二人で旅に出ようか」
「えっ?」
「別の国へ行ったり、ほかの龍を探したりするの。
冒険者として依頼を受けたり、新しい仲間を探すのはどうかな?」
「それ、すっごく楽しそう」
「私は、お姉ちゃんの代わりに、リアを幸せにしてあげるために探したんだもの、楽しいことしたいよね」
「うん」
「そうと決まれば、王様にお断りの手紙書かなくっちゃ……。
でも、大丈夫なのかな、お兄様に迷惑がかからなければいいんだけど」
「……」
先生が宮廷魔物使いを10名連れて帰ってきたのは、それから二日後のことでした。
「そうか、宮廷魔物使いになるのは見送りか」
「お世話になっておきながら申し訳ございません」
「ごめんなさい」
「いや、わしの方こそ、お前たちに辛い思いをさせた。
どのみち、わしは隣国との交渉に立ち会わんとならないから、修行も中断するつもりでいたので問題はない」
「これは、王様へのお手紙と頂いたお金です」
「おう、そうか、王が振られるとはいい手土産ができた。
じゃが、その金は持っていけ。
今回の戦に対する報奨金として持っていけ」
「こ、これでは多すぎます」
「ならば、一角獣の角を一本買い取る対価としてどうじゃ。
お前たちの旅には、一本あれば十分じゃろう。
国にあれがあれば、アンデッド対策として千人の兵士に匹敵する。
ニコンだけでは心もとないからのう」
「分かりました」
「それと、お前たちはわしの弟子じゃ。宮廷魔物使いにならなくても、そこは変わらん。
寂しくなったらいつでも訪ねてくるがいい」
「「はい。ありがとうございました」」
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