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第Ⅰ章 修行
毛玉
しおりを挟む「ブルーファルコンに、あれはフォレストキャットですよね。それと龍を従魔にした新人ですか。驚きました」
「龍なんてどうやって指導されるおつもりですか……」
「そんなもん、わかるわけねえだろうが。んまあ、なるようになるだろうよ。
それよりも、リア、ピー助の頭に手を置いて『今、学んだことを糧に、お前の成長を見せろ』と念じてみろ。
いまくいけば成長がみられるだろうよ」
「ピーちゃん、今教えてもらったこと、覚えたよね。成長した姿を見せてくれる」
すると、ピー助のからだが少し膨らみ体色が空色に変化していきます。
「ピーちゃん、綺麗!ありがとう」
ピー助も嬉しそうです。
「これがブルーファルコンの成体ですか、本当にきれいだ……」
ポン!なんだか関係のない方向から音がしました。
「「キャッ」」王女様の小さな悲鳴と…
「えっ、ミーミー…」
ミーミーが丸くなって毛玉のようになっていました。
ミーミーと自慢げに鳴いています。
すごい、モフモフがモフモフモフモフになった。これはムーラン様です。
ミーミーの元に行こうとすると、チョロリがムンッって感じで力んでます。
「チョ、チョロリ……どうしたの?」
するとチョロリは浮き上がりました。
「えっ?」
私の肩のところまで上昇して、首に巻き付いてグッタリしています。
「チョロリ、どうしちゃったの!」
「ああ、偶にあるんだよ。
一匹の従魔が成長すると、それに触発されて他の従魔も成長しちまうんだ。
だがなぁ……」
「フォレストキャットは、成長する必要がなかったのでとりあえず今の環境に順応したってところですかね」
「ああ、おれもそう思う。だけどよ、鳥の訓練に触発されて龍が飛ぶのかよ!
しかも、こんだけグッタリしてるってことは、ちょっと無理しちゃいましたって感じか!」
「ちょ、ちょっと待て、チョロリの背中にヒビが……」
私からは見えません。
「チョ、チョロリ、どうかしたの?」
首に巻き付いたチョロリから、ペリペリペリッと何かを剥がすような音が聞こえてきます。
「チョ、チョロリー!」
「あっ、脱皮だこれ……」
ピュルッとひと鳴きして、チョロリが私の肩から浮かび上がります。
「どう、見て」と言わんばかりに頬ずりしてきます。
体色は鮮やかな黄緑色に変わっていました。
「エヘッ、きれいだよチョロリ……ちょっと待って!
ミーミー、無茶しないで~!」
ミーミーは充血したような赤い毛玉に変わっていくところでした。
「まったく、信じられないことばかり起こりましたね」
「ああ、ミーミーのは冗談にしか思えんがな。
だいたい、ウルフ系とネコ系では狩の方法が違うもんだ。
セイレーンへの指導を見て、同じようにやってのけるし、ジャガーを真似た狩では、見ていた我々が見失うほどの隠形を見せた。
だいたい、空中を駆け上がるってのは何なんだ。そっからの急降下ってのは、常識じゃ考えらんねえだろ。
ありゃあ、どうみても他の従魔へのけん制だよな」
「あの毛玉自体も、自分の意志で変形してますよね。解除も自在だったし」
「成長もしませんでしたね。今の自分には必要ないって感じで」
「ところで、この龍の皮は本当に頂いてもよろしいんでしょうか。
市場に出せばとんでもない値がつきますよ」
「シーリアが良いと言ってんだ、隊の研究材料にしておけ。
王への貢ぎ物にしてもいいぞ。
ひょっとすると、不老不死のクスリになるかもしれん」
「それ、ありそうですよね」
「王様へは全部報告しますけどね。
へこみましたよ。我々の従魔だって超級と評価される能力を持っていますよ。
それでも特にミーミーには圧倒的な力の差を見せつけられました。
いい目標をいただきましたよ」
「セイレーンも、兄弟とは明らかに力の差がありましたね。
よく訓練されていますし、成長も効果的でした。あれなら、宮廷魔物使いとしても即戦力になれますよ」
「シーリーンはシーリアの教育係として同行するだけだ」
「我々に建前は不要です。ただ、あれだけの容姿で、しかもジョセフ様の娘となれば、貴族からのアプローチが絶えなさそうですが」
「まあ、我々はこのまま二年間旅に出る。すべてはそれからだ」
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