稀代の魔物使い

モモん

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第Ⅰ章 修行

王女様

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王様が退室するまでお辞儀をしていたので、顔も見ていません。

「よし、セレモニーは終わりだ。直接会いに行くぞ」

「「えっ?」」

「詳しく報告せよと指示があったろう」

「い、今から……」

「そういう事だ」

そんなわけで、王様の前でお茶してます。

「ジョセフの次女シーリーン・アートランドにございます」

「孫になりますシーリア・アートランドにございます」

「ジョセフのしかめっ面に似ないでよかったな。
しかし、母娘には見えんな、姉妹のようだぞ」

「……」

「冗談だ、笑え」

「王よ、笑えると思いますかな。
シーリアは長女シーランの娘になりますので、実際には姪というやつですな」

「そうか、それで従魔は連れてこなんだのか?」

「さすがに、謁見の場に従魔は連れてきませぬよ」

「お主やジョセフは連れてきおったではないか」

「まあ、若気の至りというやつでして」

「若気の至りでダークウルフとサイレントウルフに威圧されてたまるもんかよ。
だが、セイレーンも来ておるのだろう、懐かしいものだ」

「セイレーンをご存じなんですか?」

「ああ、産んだのはジョセフのイオだが、父親はわしの従魔サンガになる。
セイレーンの名をつけたのは私だし、セイレーンの兄弟も手元におるぞ」

「王様も魔物使いなのですか?」

「剣や魔法の才に恵まれなかったのでな、ガルドとジョセフに師事して魔物使いの修行をさせてもらった。
だが、職業は王になるからな、魔物使いだと答えてしまうと面倒なことになる。
魔物使いの立場だと、ガルドの弟子になってしまうからな」

「クス、変な王様」

「馬鹿を言うな。俺はガルドほど変人ではない」

「シーリア、人前でそれを言ってはいかんぞ。
わしのように、心の中だけにしておくように」

「ガルド、首切り役人が暇を持て余して居る。
帰りに寄っていけ」

「ところで、明日から指導職をお借りしたいのだが、許可をいただきたい」

「ふん、ダメだと言っても連れて行くのであろう。
だいたい魔物使いどもは俺のいう事よりもお前の方を優先しおる。
どうなっておるのだ」

「まあ、人徳というヤツでしょうな」

「お前の口から人徳などという言葉が出るとはな。
まあいい、で、明日はどこでやるのだ。
娘たちとともに見学に行ってやろうではないか」



翌日、朝早くから草原に出る。

「ガルド様、お久しゅうございます」

「これは、ムーラン様も立派にご成人されたご様子で、お父上もさぞやお喜びのことでしょう」

「まあ、ガルド爺からお世辞を聞けるなど、父上が聞いたら目を丸くしますわ」

「ジャルク様もご健勝のようで何よりでございますな。
これなるはジョセフの次女シーリーンと孫のシーリアにございます」

先生の紹介にあわせてお辞儀をします。
王様は仕事の都合で来られなかったそうです。
私の横にはミーミーがいて、姉さんの横にはセイレーンが控えています。
そして、王女様二人の間にはセイレーンそっくりのサイレントウルフが二頭。

「そちらがセイレーンの兄弟なのでしょうか?」

「そうです。私の横がジーニー、妹のとなりがシルフィードです。
私どもも兄弟に会えると聞いてワクワクしてやってきましたの」

三頭ともしっかりと躾けられており、いきなり飛び出していくことはしません。
でも、尻尾をブンブン降って嬉しそうです。

「失礼して近くによらせていただいても…」

「もちろんですわ」

近寄ると三頭とも鼻をクーンと鳴らし匂いを確認している。

「すみません、そちらの子は…」

「フォレストキャットのミーミーと言います」

もう、ムーラン様の目はモフらせてと訴えてきます。
そう言い出せないのは、王族としての教育でしょうか。

「よろしければ、撫でてあげてください。喜びますよ」

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