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序章 出会い
キズナ
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「さて、魔物使いの特性について学んでいこう。
例えば『手当て』じゃが、これは魔法使いの治療系魔法とは根本的に違うのじゃが、手当てがどういうものか理解しておるのかのう」
「はい。これは父から学んでいます。
魔力を必要とせず、良くなってほしいという思いを送り込むことで、自然治癒力の活性化を促すものです」
「うむ、さすがにジョセフが教えただけのことはあるのう。
模範解答じゃよ。」
ガルド先生に褒められてリーンお姉ちゃんは嬉しそうです。
「では、良くなってほしいという思いとは何じゃ。魔法とどう違うんじゃ?」
「えっ……、魔法は……、自分の思いを魔力に変換して……、えっと、相手に送ります。
魔物使いの『手当て』は……、直接触れて……、何を……送っているんでしょう?」
「きもち?」
「安心せい、この問いかけに今のところ正解はないのじゃ。
なにしろ、魔法と違って形となって現れるものがないからのう」
ほとんどの魔法は視覚で認識できます。
火の魔法は火が出ますし、治癒系であれば薄い靄のようなものが手から出ます。
でも、手当ての時には、傷の治りもゆっくりですし、目に見えるものはありません。
「質問を変えてみようかのう。
『手当て』は本当に存在するのかじゃ。実はわしらの思い込みで、本当は自然に治っているだけじゃないのかな?」
「それはありえませんわ。重傷で呼吸の荒かった従魔が、手当てと同時に楽な呼吸に変わったところは何度も経験しました。
それに、上級の魔物使いと初級者では明らかに治る速度が違います」
「それは手当ての証明にはならんじゃろうな。
わしらが何かをしたことで、従魔に変化が起きたことは確認できるがの」
「手当て……ではないと……」
「では、『手当て』は人に効果はあるかのう」
「あ、ありません。少し、怪我の治りが早くなるという人もいますが…」
「そうじゃな。従魔や慣れた動物にだけ効果の現れる『手当て』とは、いったい何か?
また、信頼関係が高くなるほどに効果の高まる『手当て』とはどういうものなのか。
手当てが、治療の手段ではないと理解できたか?」
「な、なんとなく……ですが」
「うん、手当てしてると、こっちもあったかくなってくるの」
「ほう、それは気づかなかったぞ。こっちも、温かくなってくるのか」
「では、双方向の何かが……」
「うむ、魔物は様々なものに対して敏感なのじゃ。こちらの気持ちを汲み取って応えようとする。
それがわし等の立てた仮説じゃ」
「で、では、治れと命じるのではなく、お前は強い、こんな怪我には負けないとか願ったほうが……」
「そこじゃ、実際にそのほうが治りが早いのじゃよ。
そして信頼関係が増すにつれて、応えようとする力もあがってくる。
わしらはそれを『キズナ』と名付けた」
「キズナ?」
「そうじゃ、そしてキズナが強くなれば魔物本来の力を引き出すこともできるのではないかと考えたわし等は、手当ての先に進んだ」
「手当ての先……ですか」
「人に説明する都合があってな、『強化』と名付けたのじゃが、それが宮廷魔物使いの就任要件となった」
「強化とは、いったいどのようなものなのでしょう」
「やることは簡単じゃ。お前の本当のチカラを見せてみよ、と願うのじゃよ」
「何か変化があるのですか?」
「わからん……、じゃが、姿が変化する場合もあるし、能力だけが上昇することもある。
そして何も起きない場合もあるのじゃ。
キズナの強さが足りないのか、魔物自体が変化する段階に至っていないのかは分らんのじゃ。
そして、二段階・三段階と姿を変える場合もあるし、戦闘時だけ一時的に変化することもある。
こればかりは実際にやってみないとのう」
例えば『手当て』じゃが、これは魔法使いの治療系魔法とは根本的に違うのじゃが、手当てがどういうものか理解しておるのかのう」
「はい。これは父から学んでいます。
魔力を必要とせず、良くなってほしいという思いを送り込むことで、自然治癒力の活性化を促すものです」
「うむ、さすがにジョセフが教えただけのことはあるのう。
模範解答じゃよ。」
ガルド先生に褒められてリーンお姉ちゃんは嬉しそうです。
「では、良くなってほしいという思いとは何じゃ。魔法とどう違うんじゃ?」
「えっ……、魔法は……、自分の思いを魔力に変換して……、えっと、相手に送ります。
魔物使いの『手当て』は……、直接触れて……、何を……送っているんでしょう?」
「きもち?」
「安心せい、この問いかけに今のところ正解はないのじゃ。
なにしろ、魔法と違って形となって現れるものがないからのう」
ほとんどの魔法は視覚で認識できます。
火の魔法は火が出ますし、治癒系であれば薄い靄のようなものが手から出ます。
でも、手当ての時には、傷の治りもゆっくりですし、目に見えるものはありません。
「質問を変えてみようかのう。
『手当て』は本当に存在するのかじゃ。実はわしらの思い込みで、本当は自然に治っているだけじゃないのかな?」
「それはありえませんわ。重傷で呼吸の荒かった従魔が、手当てと同時に楽な呼吸に変わったところは何度も経験しました。
それに、上級の魔物使いと初級者では明らかに治る速度が違います」
「それは手当ての証明にはならんじゃろうな。
わしらが何かをしたことで、従魔に変化が起きたことは確認できるがの」
「手当て……ではないと……」
「では、『手当て』は人に効果はあるかのう」
「あ、ありません。少し、怪我の治りが早くなるという人もいますが…」
「そうじゃな。従魔や慣れた動物にだけ効果の現れる『手当て』とは、いったい何か?
また、信頼関係が高くなるほどに効果の高まる『手当て』とはどういうものなのか。
手当てが、治療の手段ではないと理解できたか?」
「な、なんとなく……ですが」
「うん、手当てしてると、こっちもあったかくなってくるの」
「ほう、それは気づかなかったぞ。こっちも、温かくなってくるのか」
「では、双方向の何かが……」
「うむ、魔物は様々なものに対して敏感なのじゃ。こちらの気持ちを汲み取って応えようとする。
それがわし等の立てた仮説じゃ」
「で、では、治れと命じるのではなく、お前は強い、こんな怪我には負けないとか願ったほうが……」
「そこじゃ、実際にそのほうが治りが早いのじゃよ。
そして信頼関係が増すにつれて、応えようとする力もあがってくる。
わしらはそれを『キズナ』と名付けた」
「キズナ?」
「そうじゃ、そしてキズナが強くなれば魔物本来の力を引き出すこともできるのではないかと考えたわし等は、手当ての先に進んだ」
「手当ての先……ですか」
「人に説明する都合があってな、『強化』と名付けたのじゃが、それが宮廷魔物使いの就任要件となった」
「強化とは、いったいどのようなものなのでしょう」
「やることは簡単じゃ。お前の本当のチカラを見せてみよ、と願うのじゃよ」
「何か変化があるのですか?」
「わからん……、じゃが、姿が変化する場合もあるし、能力だけが上昇することもある。
そして何も起きない場合もあるのじゃ。
キズナの強さが足りないのか、魔物自体が変化する段階に至っていないのかは分らんのじゃ。
そして、二段階・三段階と姿を変える場合もあるし、戦闘時だけ一時的に変化することもある。
こればかりは実際にやってみないとのう」
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