稀代の魔物使い

モモん

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序章 出会い

お姉ちゃん

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「よし、出発しようかのう。ほれ嬢ちゃんもニコンに乗って……」

「ミー!」

「私はミーに乗っていくから大丈夫」

「そうか、無理するなよ」

私が先導しているので、こちらのペースではあるんだけど、ニコンもピッタリ後をついてくる。
途中、一回休憩しただけで昼過ぎにはリントの町に到着した。

「では、まずギルドで冒険者登録を済ませるかのう。この時間なら空いているはずじゃで」

「うん」

冒険者ギルドってところのドアを開けて中に入る。

カウンターのお姉さんがギョッとした表情で手招きしてる。

「あの……」

「着替えとか、持っていないの?」

「はい、いつもこれだけです……」

「あぁ……、いいわ、ちょっとこっちにいらっしゃい」

「あの……」

爺ちゃんが何か言いかけましたが、お姉さんに睨まれて口を閉じます。

奥のほうの個室に連れていかれ、こう言われました。

「いいこと、身なりや髪を見れば外で生活してきたのはわかるわ。
でもね、女の子は人前でお尻を出しちゃいけないの。
これは絶対に守らなければいけないこと。
分かった?」

「う、うん……」

「でも、あなたの服は、お尻を隠すようにできていなくて、着替えも持ってない。そうね」

「う、うん」

「はぁ、私のパンツと短パンをあげるから、今ここで履いてちょうだい」

ああ、一人で生活するようになって、パンツなんて考えたこともなかったんです。
昔は、パンツを履かずに外に出ると、お母さんに怒られたな……。女の子が人前でお尻を出しちゃダメって。
そう、お母さんにも同じことを言われました。


「おかあさん…」思い出したら涙が止まらなくなりました。

「うん、つらかったんだね…」

お姉さんは私を抱きしめてくれ、私は声をあげて泣きました。
ひとしきり泣いた後で言われました。

「落ち着いたようね。じゃあ、次は私の話を聞いてもらえるかしら」

ドンドンドン!
「何やってんだ!カウンターに冒険者が溜まってきてんぞ!」

「うるさいです!これから重要な話をするんだから邪魔しないで!」

「そっ、そうか……」

「まったく気が利かないギルマスだこと……」

それから、お姉さんはゆっくりと、自分に言い聞かせるように話しだしました・

「私には姉……お姉ちゃんがいたの」

「お姉ちゃん?」

「そう、優しくていつも微笑んでくれたお姉ちゃん。
分からないことがあれば、何でも教えてくれたし、何より魔物使いとしての資質にあふれていたわ」

「ししつ?」

「魔物使いにとって大切なことって何だかわかるかな?」

「?」

「それはね、魔物や動物に好かれることなの。
どれだけ強い魔物を従えているかなんて、大きな問題じゃないわ。
どれだけ強い絆で結ばれているか……なの」

「私……、ミーミーとピー助とチョロリとお友達」

「そうね。見ていれば分かるわ。
それでね、15年くらい前だけど、お姉ちゃんのお腹に赤ちゃんができたの」

「あかちゃん」

「そうよ、でもお父さんが反対したの。
その結婚を認められなかったお姉ちゃんは家を出たわ。
突然だったから誰も行く先を知らなかったし、私は魔物使いの修行で街にいなかったの。
少しして、修行から戻って来たんだけど、探しようがなかったわ」

「ゆくえふめい……」

「そうね。それから二年くらい経ったころ、お姉ちゃんは一度帰ってきたの。小さな女の子を連れて……
そのころ父は、重い病気で寝ていたの。私は冒険者で、その時も町にいなかったわ。
私にはもう一人兄がいるんだけど、お姉ちゃんを家に入らせなかったの」

「なんで?」

「父に会わせて怒り出したら、病気が悪化するんじゃないかって心配したのよ。
でも、住んでいる町は聞いておいてくれたから、私はすぐに会いに行ったわ。
ご主人は病気で亡くなっていたけど、元気そうだったわ、二人とも」

お姉さんは、少し目頭を押さえています。
悲しいことを思い出したときに、私もやります。

「それから3年おきくらいには会いに行ってたんだけどね。
お父さんが亡くなった時も行ったんだけどね。
それで、2年くらい前かな、お姉ちゃんの家に行ったんだけど、お姉ちゃんは死んでしまっていて、その子供は行方が分からなかったの」

「かわいそう……」

「可哀想なのは、その女の子よ。
12才くらいで独りぼっちになって、家からも追い出されて……
私は探したわ。
目印は私と同じ栗色の髪の毛と、タヌキみたいな尻尾のネコを連れていること。
自分で探すよりも、少しでも情報が集まるギルドで働くようになって、毎日聞き続けてきたのよ今朝まで……」

そういってお姉さんは私の……栗色の髪をなでてくれました。

「やっと見つけたわシーリア……。
ねえ、私を覚えてない?シーちゃん。
ほら、ミーミーは私のことを覚えているって。
私は見た瞬間に分かったわよ」
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