7人のメイド物語

モモん

文字の大きさ
上 下
142 / 142
第八章 家族

第136話 武力

しおりを挟む
 数か月後、ナイルから急な報せが届いた。
 どうやら、アッシェルが火薬を使ったらしいのだ。

「タウ、どうしたらいい。」
「大丈夫ですよ。俺がアッシェルに行ってきますから。」
 パメラ王女が怯えている。
 この不安は取り除いてやらなければならない。
「聞いた限りのものなら、俺でも作ることができます。」
 そう、黒色火薬程度なら硝石と硫黄・木炭を配合するだけだ。
 成分比は覚えていないが、その程度は問題ない。
 それに、魔法の方が遥かに効率がいいからだ。
 魔法で代用できないのは、打ち上げ花火くらいだろう。

「今回の訪問は、事前に通知してやりましょう。」
「な、なんでじゃ。」
「その間に、相手を大幅に上回るものを作って見せつけてやろうと思います。」
「できるのか?」
「まあ、火薬の効果が大きく見えるのは、その音も影響するんだよね。」
「ああ、確かに空が割れるほどの音だったと聞いたぞ。」
 花火を直近で見ればわかるが、破裂音は空気を震わせる。
 あれが、自分に向かって来たのなら、恐怖心は大きいだろう。

 アッシェルへの通知を書いた俺は、一度国に戻った。
「さて、どうするかな。」
 真似して爆弾を作るつもりはない。
 一歩間違えれば暴発しかねないからだ。
 それでも、見くびられないために、タル一つ分の黒色火薬は作っておいた。

「バズーカの威力をあげるだけで効果あるかな……。」
 爆発するものといえば、火薬・天然ガス・ガソリン・粉塵・水素あたりだろうか。
 それに匹敵する威力なら、隕石・火山・地震・雷・竜巻くらいかな。
「局所的に影響を限定するなら、やっぱり高所からの落石だよな。いや、待てよ……熱はどうだろうか。」

 熱を発生させるのは魔法でできるが、威力の部分は火球の大きさであり温度を制御する変数ではなかった。
 俺は火魔法の使い手に協力してもらい、3日かけて温度を制御する変数を発見した。
 さらに、射出型ではなく、相対座標を指定して加熱することも可能となった。

 半月後、俺はシノブと二人でアッシェルを訪れた。
 対応に出たのは、副国王のミロと名乗った脂ぎった男だった。
「で、なんの用だ。」
「爆発する粉を開発されたようなので、確認をと思いまして。」
「ふん、アッシェルの実力を恐れて傘下に入りたいというわけか。」
「いえ、その程度のものはこちらにもあるんですが、どの程度のものか興味がありまして。」
「嘘をつくな。ナイルでそのようなものが使われたという報告は入っておらんぞ。」
 俺は収納から火薬を詰めた樽を取り出した。
「これが、俺たちの中で火薬と呼んでいるものですが。いかがですか?」

「どうせ、ただの炭の粉であろう。」
「まあ、確かに炭の粉も含まれていますけどね。」
「うっ……。」
「疑うのであれば火をつけて確認してみますか?」
 俺は小さじいっぱい程度を皿にとり、相手の前に差し出した。
「おい、外で確認してこい!」
 副国王は、同席していた男に支持を出す。

 俺は樽を収納に戻した。
「もし、火薬が無差別攻撃に使われた場合、こちらは全力で報復を行います。」
「強がりをいうな。」
「強がりかどうか、試してみればいいでしょう。」

 先ほどの男が戻ってきて、耳元でささやいている。
 副国王の顔が、それと分かるほど変化した。
「確認がとれたようですね。」
「ああ。わが国で開発したものと同じもののようだ。」
「こちらが火薬を使わないのは、それ以上の攻撃手段があるということです。」
「これ以上だと!」
「ええ。無関係なものまで巻き込む爆発ではなく、狙った箇所だけを無力化する手段を複数持っています。」
「それだけの力があるなら、なぜ示さない。」
「武力では世界を統一しても意味がないことを知っているからですよ。」

【あとがき】
 ちょっと体調がすぐれないので、不定期になると思います。ごめんなさい。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

一方通行/やまもんきー

面白かったです!主人公が諦めずにリハビリして、体を治していき、国の貢献をする,,,
憧れますねw
何でこんなに面白いのに感想が一件もないんだろうと思いながら感想を書いてますw
更新楽しみに待ってます!頑張ってください!!!
お気に入り登録もしときます!

解除

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。