7人のメイド物語

モモん

文字の大きさ
上 下
133 / 142
第七章 動物の園

第127話 犬が……

しおりを挟む
 アルプス地方において、砂糖はテンサイから抽出されており、それほど貴重なものではないらしい。
 小麦も同様であるのだが、丁寧に精製された小麦粉は貴重らしい。
 俺は白い小麦粉を収納から出して見せた。

「これなら、小麦粉一袋で一頭交換してやろう。」
「それなら、いくらでも出しますので、出せるだけベルナールをください。」
 こうして俺は老犬2頭と子犬を4匹手に入れた。
 おまけに、冷温送風機もつけたし、村の子供の数分のプリンも提供した。

 そしていくつかの村で同じように交換して、最終的には20頭のセントバーナードを入手した。
 一旦帰国する俺たちだったが、さすがに20頭の犬はワンワン、キャンキャンと賑やかだった。
 帰国して早速セントバーナードの犬舎を作ってやった。
 園内での放し飼いなのだが、冷風を利かせた寒い環境は必要だった。
 もちろん、普通の環境の犬舎も作っておく。

「タウ、なんだこのモフモフは……。」
「ベルナールという、寒い国の犬ですよ。」
「パ、パンダの子供に負けず劣らずの可愛らしさではないか。」
「でしょ。」
「こ、この子たちは触って大丈夫なのか?」
「はい。人懐こいので、いくらでも可愛がってあげてください。」
「なら、城に連れて行っても……。」
「ダメですよ。我慢してくださいね。」
「ううっ、タウは意地悪だ!」
 
 なんだか、王妃の幼児化が進んでいるように感じる。
 それに、犬とネコが増えたことで、糞も目立つようになってきた。掃除のスタッフを増やさなければならない。
 幸い、ナイルで収納した砂漠の砂があるので、砂場は作り放題だった。

 セントバーナードが新しい環境に慣れるまで様子を見て、俺たちは再びヨーロッパ方面に向かった。
 フランス・イギリス・ドイツに相当する国は小競り合いを起こしていた。
 連合に誘うかどうかは要検討だ。

 フランスでは犬専用のペットショップを見つけた。
 先に、砂糖を売って現金に替えていた俺は、パピヨンの子犬を♂♀で購入した。
 プードルは手入れが大変そうだったのでやめておいたのだ。
 パピヨンは元々狩猟犬であったため運動量が多く、活発で利口な犬だ。
 あまりこういう飼い方をする犬ではないため2匹だけにしておいた。
 どうしよう、家で飼うことにするか迷ってしまう。

 次に向かったスコットランドで、シェルティーとコリーを見つけた。
 迷ったが結局可愛さに負けて、シェルティー4匹とコリー2匹を入手した。全部子犬だ。
 やばい、沼にはまってしまったかもしれない。

 今回は、動物公園には行かずに、家に連れてきた。
「どうだろう。」
「全部飼うに決まっているじゃない!」
「ココもいるしなぁ……。」
「じゃあ、コリー2匹は諦める。シェルティー2匹も諦めていいわ……その代わり。」
「その代わり?」
 嫌な予感はしていたのだ。
「セントバーナードの子犬がほしいわ!もうね、お母さまに見せられてから、頭から離れないのよ!お願い!」

 結局、次回の遠征でアルプスに立ち寄り、セントバーナードの子犬2匹を持ち帰ってきた。
 俺がソフィアの願いを聞き入れないなんてあるはずがないのだ。
 こうして我が家には6匹の子犬が同居することになった。

「エリス、悪いな仕事を増やしてしまって。」
「大丈夫ですわご主人様。散歩はほかの皆さんがやってくれますし、餌やりとブラッシング程度ですから。それに……。」
「それに?」
「みんな懐いてくれましたし、なんだか胸の奥が暖かくなるような気がするんです。」
「そうか。よかったな。」
「はい!」

 どうやら、子犬たちはエリスの情操教育にもいいようだ。


【あとがき】
 5年ほど前まで、我が家にもパピヨンがいました。
 その運動能力は高く、お前はネコかっ!ていうほどでした。
 室内犬とはいえ、日本のような狭い家で飼う犬じゃないだろと思っています。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...