7人のメイド物語

モモん

文字の大きさ
上 下
132 / 142
第七章 動物の園

第126話 ベルナール

しおりを挟む
 俺は世界平和同盟:WPA(world peace alliance)の代表として、地中海の周辺国に圧力をかけておいた。
 ほとんどの国が、弱小国が集まったところで、自国の軍隊に敵うものかという態度がありありと見て取れたからだ。

「アイラ、適当にそこいらのものを壊してやってくれ。」
「了解。」
 ほとんどの国で、城を取り囲む塀をバズーカで破壊した。
「これ、塀の賠償です。」
 小麦一袋を提供して賠償にあてた。
 まあ、相手が壊せるものなら壊してみろと挑発してきたからやったのであるが。
「同盟国に侵略行為があった場合、俺は予告なしでその国の城を破壊します。そうですね、1時間くらいで。」
「ば、馬鹿な……。我が国の軍隊を相手にできると思っておるのか!」
「軍隊なんか相手にしませんよ。空の上から大きな岩を20個くらい落とすだけです。」
「そんなものを飛ばせるわけが無いだろう!」
「別に飛ばしたりしないですよ。俺の特殊能力で……。」
 俺は小ぶりな岩を収納から取り出してテーブルをつぶしてやる。
「こんな感じです。これの3倍くらい大きいやつを、100メートル上空から落とすだけです。まあ、船なら一撃で沈めてみせますよ。」

 まあ、ほとんどの国で、このようなやりとりがあったわけだ。
 地中海沿岸の国を回り終えて、俺はナイルに戻ってパメラを降ろした。
「次はどこに向かうのじゃ。」
「この北にも国があると思うからね、そっちに行ってみる。」
「同盟に入れるかどうかの見極めじゃな。侵略の可能性がある国は、今回のように脅してまわる……。」
「運河のPRもしてきたが、あんなに怯えさせて申し入れに来るかのう。」
「彼らにとって、周辺国は力が拮抗してるからね。勢力を伸ばすなら小国を狙うしかないんだよ。」
「そんなものかのう……。」


 俺はパメラと分かれて地中海を飛び越え、アルプスに向かった。
「アイラ、速度を落として、低空で飛んでくれ。」
「こんなところで何を探すんだ?あっ、もしかしてアタイとエッチなことをする場所を探してるのか!アタイなら飛空艇の中でもいいぞ。」
「いや、そういうのは間に合っている。」
 なるべく道沿いに飛んでもらうと、小さな村が目に入った。
 騒ぎにならないよう、少し離れた場所に着陸し、歩いて村に向かう。
 村に近ずくと、ウォンウォンと野太い鳴き声が聞こえた。
「ビンゴだ!」
「なにが?」
 村に入ると、子供とじゃれあう”そいつ”がいた。
「クマ!……じゃねえよな。」
「ああ、あれが探していた犬なんだ。」
「イヌだと!あのでかいのが……。」
「子供なら上に乗って遊ぶこともできる。セントバーナードだ。」

 幸いなことに、子犬も何頭かいた。
「これは、どこの家の犬なんだい?」
「えっ?」
 問いかけた子供はわけが分からないという感じでキョトンとしている。
 近くにいた夫人に聞いたところ、犬は個人の所有物でなく、村で共有しているらしい。
 俺は村長の家を教えてもらい、交渉を開始する。
「突然の訪問、申し訳ございません。」
「どこから来なすったんだい。」
「地中海の向こうにあるナイルという国からです。」
「そんな遠くから、こんな山奥まで、何しにきおった。」
「犬を探しに来ました。」
「犬?外にいるベルナールのことか……。」
 どうやらセントバーナードのことらしい。
「はい。大人でも子供でもかまいません。譲っていただけませんか?」
「譲らんこともないが、対価は?」
「小麦でも砂糖でも、ご希望にお応えできます。」
 俺は収納について説明したうえで、小麦と砂糖を一袋ずつ村長の前に出した。
「もし、道具が必要でしたら、暖房器具もあります。」
 俺は冷暖房送風機を取り出した。



【あとがき】
 いやあ、やっと犬編スタートです。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

処理中です...