130 / 142
第七章 動物の園
第124話 アッシュル
しおりを挟む
俺は地中海を反時計回りで北上していったのだが、地球でいうイスラエルからイラク・シリア付近までの広大な地域を占拠しているアッシェル帝国というのを知った。
どの町も武装しており、とても危険な感じがした。
「ここは、後回しにした方がよさそうだな……。」
その先は、現トルコの山間部を超えたマケテンナ帝国があり、海の向かいにエオマ帝国があった。どこも城壁都市であり、戦闘意欲に満ち溢れた国のようだ。
「こりゃあ、ナイル王国も他人事じゃすまないよな……。」
俺は一旦ナイル王国に引き返し、パメラと会談を行った。
「確かにアッシェルからは数年おきに侵略を受けているし、他の国から船で乗り込まれたこともある。まあ、その度に何とか追い返してきているがな。」
「まあ、この国は奥が深いですからね。内陸に誘いこんで戦うこともできますけど……。」
俺は紙を取り出して大まかな地図を書いた。
「ここがナイルで、こっちがアッシェル。マケテンナとエオマ、バレンチアと続いています。」
「ああ。」
「戦略と経済、両方の方策として、この200キロを掘って二つの海をつなぎ、通行料をとりましょう。」
「おまえ、とんでもないことを言い出すな……。」
「掘った土をナイルの西側に持ってきて砂漠の砂と入れ替えれば、使える土地も増えて農地や住宅にできます。」
「それは、机上の空論にすぎぬであろう。」
「俺ならできます。」
「うっ……。」
「運河を掘る前に、友好国すべてで同盟を結びます。」
「同盟だと……。」
「そうです。同盟国に手を出したら、すべての国が敵に回ると釘をさしておきます。」
「ナイルも、そこに入れるのか?」
「当然です。武力で侵略する意思を持たない国は、これからも友好国として受け入れていくつもりです。」
「フォン王国が、その盾となってくれるのだな。」
「力を見せることも必要ですからね。及ばずながら、我が国が矢面に立ちますよ。」
勝手にそんな構想をぶち上げてしまったため、俺は急いで国に戻り陛下と宰相に状況を説明した。
「なるほどな。戦闘国家と一線を引くための平和同盟かよ。」
「共栄共存という考え方です。どこかが声をあげなければ進められないと思い、勝手にナイル王国に話してしまいました。申し訳ありません。」
「ふむ、お前がつないだ縁じゃからな。とはいえ、我が国が矢面に立つ以上、わしらも腹をくくらねばならぬのう。」
「はい。まずは首脳会議を開かなければなりませんので、陛下か宰相に出席していただきませんと。」
「まあ、そうなるが……、実際の提案はタウがするのだろ?」
「はい。そのつもりです。」
「その同盟の長には、力を誇示できる者が必要となるわけだ。」
「その通りです。ですから、政治の一線から退いた陛下が適任かと存じます。」
「いやいや、わしにそんな力はないし、最近では王妃にせがまれて動物公園での仕事が忙しくてな。」
「俺も宰相の仕事が忙しくてな、何しろ総務局長の教育もしなければならんしな。」
「と、なると、お前たち夫婦で何とかするしかないだろう。」
「夫婦……そうか!ソフィアがいたんだ。」
「確かに、タウの考えはよくわかりました。とても素晴らしいと思います。」
「だろ。協力してくれるよね。」
「当然です。私はあなたの妻なのですから。寂しくても我慢しますわ。」
「えっ?」
「平和な世界を作る第一歩ですもの、頑張ってくださいね、あなた。」
「えっ、ええっ?」
おかしい、話がずれている気がする……。
とりあえず、各国に提案する素案を作って俺は根回しを兼ねた日程調整に飛んだ。
【あとがき】
この物語も大きな転換期を迎えました。
どの町も武装しており、とても危険な感じがした。
「ここは、後回しにした方がよさそうだな……。」
その先は、現トルコの山間部を超えたマケテンナ帝国があり、海の向かいにエオマ帝国があった。どこも城壁都市であり、戦闘意欲に満ち溢れた国のようだ。
「こりゃあ、ナイル王国も他人事じゃすまないよな……。」
俺は一旦ナイル王国に引き返し、パメラと会談を行った。
「確かにアッシェルからは数年おきに侵略を受けているし、他の国から船で乗り込まれたこともある。まあ、その度に何とか追い返してきているがな。」
「まあ、この国は奥が深いですからね。内陸に誘いこんで戦うこともできますけど……。」
俺は紙を取り出して大まかな地図を書いた。
「ここがナイルで、こっちがアッシェル。マケテンナとエオマ、バレンチアと続いています。」
「ああ。」
「戦略と経済、両方の方策として、この200キロを掘って二つの海をつなぎ、通行料をとりましょう。」
「おまえ、とんでもないことを言い出すな……。」
「掘った土をナイルの西側に持ってきて砂漠の砂と入れ替えれば、使える土地も増えて農地や住宅にできます。」
「それは、机上の空論にすぎぬであろう。」
「俺ならできます。」
「うっ……。」
「運河を掘る前に、友好国すべてで同盟を結びます。」
「同盟だと……。」
「そうです。同盟国に手を出したら、すべての国が敵に回ると釘をさしておきます。」
「ナイルも、そこに入れるのか?」
「当然です。武力で侵略する意思を持たない国は、これからも友好国として受け入れていくつもりです。」
「フォン王国が、その盾となってくれるのだな。」
「力を見せることも必要ですからね。及ばずながら、我が国が矢面に立ちますよ。」
勝手にそんな構想をぶち上げてしまったため、俺は急いで国に戻り陛下と宰相に状況を説明した。
「なるほどな。戦闘国家と一線を引くための平和同盟かよ。」
「共栄共存という考え方です。どこかが声をあげなければ進められないと思い、勝手にナイル王国に話してしまいました。申し訳ありません。」
「ふむ、お前がつないだ縁じゃからな。とはいえ、我が国が矢面に立つ以上、わしらも腹をくくらねばならぬのう。」
「はい。まずは首脳会議を開かなければなりませんので、陛下か宰相に出席していただきませんと。」
「まあ、そうなるが……、実際の提案はタウがするのだろ?」
「はい。そのつもりです。」
「その同盟の長には、力を誇示できる者が必要となるわけだ。」
「その通りです。ですから、政治の一線から退いた陛下が適任かと存じます。」
「いやいや、わしにそんな力はないし、最近では王妃にせがまれて動物公園での仕事が忙しくてな。」
「俺も宰相の仕事が忙しくてな、何しろ総務局長の教育もしなければならんしな。」
「と、なると、お前たち夫婦で何とかするしかないだろう。」
「夫婦……そうか!ソフィアがいたんだ。」
「確かに、タウの考えはよくわかりました。とても素晴らしいと思います。」
「だろ。協力してくれるよね。」
「当然です。私はあなたの妻なのですから。寂しくても我慢しますわ。」
「えっ?」
「平和な世界を作る第一歩ですもの、頑張ってくださいね、あなた。」
「えっ、ええっ?」
おかしい、話がずれている気がする……。
とりあえず、各国に提案する素案を作って俺は根回しを兼ねた日程調整に飛んだ。
【あとがき】
この物語も大きな転換期を迎えました。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。


少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。


特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる