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第七章 動物の園
第124話 アッシュル
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俺は地中海を反時計回りで北上していったのだが、地球でいうイスラエルからイラク・シリア付近までの広大な地域を占拠しているアッシェル帝国というのを知った。
どの町も武装しており、とても危険な感じがした。
「ここは、後回しにした方がよさそうだな……。」
その先は、現トルコの山間部を超えたマケテンナ帝国があり、海の向かいにエオマ帝国があった。どこも城壁都市であり、戦闘意欲に満ち溢れた国のようだ。
「こりゃあ、ナイル王国も他人事じゃすまないよな……。」
俺は一旦ナイル王国に引き返し、パメラと会談を行った。
「確かにアッシェルからは数年おきに侵略を受けているし、他の国から船で乗り込まれたこともある。まあ、その度に何とか追い返してきているがな。」
「まあ、この国は奥が深いですからね。内陸に誘いこんで戦うこともできますけど……。」
俺は紙を取り出して大まかな地図を書いた。
「ここがナイルで、こっちがアッシェル。マケテンナとエオマ、バレンチアと続いています。」
「ああ。」
「戦略と経済、両方の方策として、この200キロを掘って二つの海をつなぎ、通行料をとりましょう。」
「おまえ、とんでもないことを言い出すな……。」
「掘った土をナイルの西側に持ってきて砂漠の砂と入れ替えれば、使える土地も増えて農地や住宅にできます。」
「それは、机上の空論にすぎぬであろう。」
「俺ならできます。」
「うっ……。」
「運河を掘る前に、友好国すべてで同盟を結びます。」
「同盟だと……。」
「そうです。同盟国に手を出したら、すべての国が敵に回ると釘をさしておきます。」
「ナイルも、そこに入れるのか?」
「当然です。武力で侵略する意思を持たない国は、これからも友好国として受け入れていくつもりです。」
「フォン王国が、その盾となってくれるのだな。」
「力を見せることも必要ですからね。及ばずながら、我が国が矢面に立ちますよ。」
勝手にそんな構想をぶち上げてしまったため、俺は急いで国に戻り陛下と宰相に状況を説明した。
「なるほどな。戦闘国家と一線を引くための平和同盟かよ。」
「共栄共存という考え方です。どこかが声をあげなければ進められないと思い、勝手にナイル王国に話してしまいました。申し訳ありません。」
「ふむ、お前がつないだ縁じゃからな。とはいえ、我が国が矢面に立つ以上、わしらも腹をくくらねばならぬのう。」
「はい。まずは首脳会議を開かなければなりませんので、陛下か宰相に出席していただきませんと。」
「まあ、そうなるが……、実際の提案はタウがするのだろ?」
「はい。そのつもりです。」
「その同盟の長には、力を誇示できる者が必要となるわけだ。」
「その通りです。ですから、政治の一線から退いた陛下が適任かと存じます。」
「いやいや、わしにそんな力はないし、最近では王妃にせがまれて動物公園での仕事が忙しくてな。」
「俺も宰相の仕事が忙しくてな、何しろ総務局長の教育もしなければならんしな。」
「と、なると、お前たち夫婦で何とかするしかないだろう。」
「夫婦……そうか!ソフィアがいたんだ。」
「確かに、タウの考えはよくわかりました。とても素晴らしいと思います。」
「だろ。協力してくれるよね。」
「当然です。私はあなたの妻なのですから。寂しくても我慢しますわ。」
「えっ?」
「平和な世界を作る第一歩ですもの、頑張ってくださいね、あなた。」
「えっ、ええっ?」
おかしい、話がずれている気がする……。
とりあえず、各国に提案する素案を作って俺は根回しを兼ねた日程調整に飛んだ。
【あとがき】
この物語も大きな転換期を迎えました。
どの町も武装しており、とても危険な感じがした。
「ここは、後回しにした方がよさそうだな……。」
その先は、現トルコの山間部を超えたマケテンナ帝国があり、海の向かいにエオマ帝国があった。どこも城壁都市であり、戦闘意欲に満ち溢れた国のようだ。
「こりゃあ、ナイル王国も他人事じゃすまないよな……。」
俺は一旦ナイル王国に引き返し、パメラと会談を行った。
「確かにアッシェルからは数年おきに侵略を受けているし、他の国から船で乗り込まれたこともある。まあ、その度に何とか追い返してきているがな。」
「まあ、この国は奥が深いですからね。内陸に誘いこんで戦うこともできますけど……。」
俺は紙を取り出して大まかな地図を書いた。
「ここがナイルで、こっちがアッシェル。マケテンナとエオマ、バレンチアと続いています。」
「ああ。」
「戦略と経済、両方の方策として、この200キロを掘って二つの海をつなぎ、通行料をとりましょう。」
「おまえ、とんでもないことを言い出すな……。」
「掘った土をナイルの西側に持ってきて砂漠の砂と入れ替えれば、使える土地も増えて農地や住宅にできます。」
「それは、机上の空論にすぎぬであろう。」
「俺ならできます。」
「うっ……。」
「運河を掘る前に、友好国すべてで同盟を結びます。」
「同盟だと……。」
「そうです。同盟国に手を出したら、すべての国が敵に回ると釘をさしておきます。」
「ナイルも、そこに入れるのか?」
「当然です。武力で侵略する意思を持たない国は、これからも友好国として受け入れていくつもりです。」
「フォン王国が、その盾となってくれるのだな。」
「力を見せることも必要ですからね。及ばずながら、我が国が矢面に立ちますよ。」
勝手にそんな構想をぶち上げてしまったため、俺は急いで国に戻り陛下と宰相に状況を説明した。
「なるほどな。戦闘国家と一線を引くための平和同盟かよ。」
「共栄共存という考え方です。どこかが声をあげなければ進められないと思い、勝手にナイル王国に話してしまいました。申し訳ありません。」
「ふむ、お前がつないだ縁じゃからな。とはいえ、我が国が矢面に立つ以上、わしらも腹をくくらねばならぬのう。」
「はい。まずは首脳会議を開かなければなりませんので、陛下か宰相に出席していただきませんと。」
「まあ、そうなるが……、実際の提案はタウがするのだろ?」
「はい。そのつもりです。」
「その同盟の長には、力を誇示できる者が必要となるわけだ。」
「その通りです。ですから、政治の一線から退いた陛下が適任かと存じます。」
「いやいや、わしにそんな力はないし、最近では王妃にせがまれて動物公園での仕事が忙しくてな。」
「俺も宰相の仕事が忙しくてな、何しろ総務局長の教育もしなければならんしな。」
「と、なると、お前たち夫婦で何とかするしかないだろう。」
「夫婦……そうか!ソフィアがいたんだ。」
「確かに、タウの考えはよくわかりました。とても素晴らしいと思います。」
「だろ。協力してくれるよね。」
「当然です。私はあなたの妻なのですから。寂しくても我慢しますわ。」
「えっ?」
「平和な世界を作る第一歩ですもの、頑張ってくださいね、あなた。」
「えっ、ええっ?」
おかしい、話がずれている気がする……。
とりあえず、各国に提案する素案を作って俺は根回しを兼ねた日程調整に飛んだ。
【あとがき】
この物語も大きな転換期を迎えました。
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