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第七章 動物の園
第123話 頭キーン
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翌月になり、俺は宰相特別補佐官に任命され、総務局長を解任された。
「局長。局長が医師である限り、ここのスタッフなんですからね。」
そう言ってきたのは、俺と一緒にリバーシの大会を開いたジャスミンだ。
今では企画課長に出世しており、毎年継続して開催されるリバーシ大会の責任者でもある。
「ですから、スイーツの試食や新製品の試用などがあったら、いつでも応援しますからね。」
「わかっていますよ。」
「それと、側室が必要でしたらいつでもご用命くださいね。」
「あなた、もう結婚してるじゃないですか!」
「大丈夫。いつでも捨てられますから……ねっ。」
「大丈夫じゃないですから!」
この人は、おれの体が不自由だった頃からの付き合いで、当時から普通に接してくれていた。
今回の動物公園でも、行政側の窓口になってくれた頼もしい人なのだ。
「そうそう、ネコが余ったら、いつでも引き取りますからね、ウフッ。」
これは、決して冗談ごとではなく、ネコは繁殖力の高い動物なのだ。
交尾すれば、ほぼ確実に妊娠(交尾排卵という)し、2か月の妊娠期間を経て平均5匹の子ネコを出産する。
そして、授乳・育児の機関が過ぎれば、次の妊娠が可能なのだ。
恐ろしいことに、計算上では一匹のメス猫が、3年後には3000匹に増えることが可能だと聞いた。恐ろしいことである。
さらに、野良では4年程度の寿命なのだが、飼育環境下では15年ほどに長生きなのである。
今のうちに対策を考えておいた方がよいのかもしれない。
ナイル行きを控えて、俺はかき氷の魔道具を開発し、そこにドライフルーツをカットして混ぜ、練乳をかけたフラッペを開発した。
「いいですわね。氷のキラキラとドライフルーツの色が際立って宝石箱のようです。」
俺は、小麦を持ってマガダに飛び、砂糖と交換して一度戻った。
砂糖半分を市場に卸して、今度は鳥を積んでナイルに向かった。
「砂糖20袋、確かに受け取った。フルーツは好きなだけ持っていくがよい。」
「それと鳥52羽な。オスが2羽で残りはメスだ。」
「それで、当面は繁殖させるんだな。」
「ああ、鶏舎は2か所に分けてあるから、オスは分散してメスも半々にする。」
「一夫多妻だな。」
「そういうことだ。」
俺はドライフルーツの菓子も試してもらった。
「ふむ、フルーツケーキは面白いな。旬のフルーツとは違った味を楽しめる。」
「フラッペはどうかな?」
「少し食べると、頭がキーンとする……。」
「そういう時は、こめかみに器をくっつけて冷やすといいんだ。それと、ゆっくり食べれば頭キーンは起きないんだよ。」
「そうなのか。頭キーンがなければナイルにピッタリの食べ物だと思うぞ。」
「よかった。じゃあ、製氷庫とかき氷器を増産して持ってくるかな。」
「そんなに色々ともらっても、ナイルが返せるものは果実と綿の布くらいしかないぞ。」
「今はまだそれでいい。いずれ、この国に色々な産業が興るだろう。そうなってからで十分だよ。」
「それでは、わらわの気がすまぬのだ!」
俺は、色々な苗を持ち込んで、試験的な栽培を頼むことにした。
トマト・ナス・トウモロコシ・イチゴなどである。
もし、うまく育つようなら新たな産業となる。
特に、毎年のように氾濫をおこすナイル川下流は、同時に肥沃な土地でもあるため、農業は盛んなのだ。
今回は、ネコを30匹持ち帰った。
動物公園に20匹で、学び舎に10匹だ。
「まあまあ、早速連れてきてくれたのね。」
「ええ。快適な寝床と砂場。定期的な餌やりをわすれなければ定着してくれるでしょう。」
「定着しなかったら?」
「まあ、どこかの家で飼われてるってことでしょうね。」
【あとがき】
さて、そろそろ地中海を回りますかね……。
「局長。局長が医師である限り、ここのスタッフなんですからね。」
そう言ってきたのは、俺と一緒にリバーシの大会を開いたジャスミンだ。
今では企画課長に出世しており、毎年継続して開催されるリバーシ大会の責任者でもある。
「ですから、スイーツの試食や新製品の試用などがあったら、いつでも応援しますからね。」
「わかっていますよ。」
「それと、側室が必要でしたらいつでもご用命くださいね。」
「あなた、もう結婚してるじゃないですか!」
「大丈夫。いつでも捨てられますから……ねっ。」
「大丈夫じゃないですから!」
この人は、おれの体が不自由だった頃からの付き合いで、当時から普通に接してくれていた。
今回の動物公園でも、行政側の窓口になってくれた頼もしい人なのだ。
「そうそう、ネコが余ったら、いつでも引き取りますからね、ウフッ。」
これは、決して冗談ごとではなく、ネコは繁殖力の高い動物なのだ。
交尾すれば、ほぼ確実に妊娠(交尾排卵という)し、2か月の妊娠期間を経て平均5匹の子ネコを出産する。
そして、授乳・育児の機関が過ぎれば、次の妊娠が可能なのだ。
恐ろしいことに、計算上では一匹のメス猫が、3年後には3000匹に増えることが可能だと聞いた。恐ろしいことである。
さらに、野良では4年程度の寿命なのだが、飼育環境下では15年ほどに長生きなのである。
今のうちに対策を考えておいた方がよいのかもしれない。
ナイル行きを控えて、俺はかき氷の魔道具を開発し、そこにドライフルーツをカットして混ぜ、練乳をかけたフラッペを開発した。
「いいですわね。氷のキラキラとドライフルーツの色が際立って宝石箱のようです。」
俺は、小麦を持ってマガダに飛び、砂糖と交換して一度戻った。
砂糖半分を市場に卸して、今度は鳥を積んでナイルに向かった。
「砂糖20袋、確かに受け取った。フルーツは好きなだけ持っていくがよい。」
「それと鳥52羽な。オスが2羽で残りはメスだ。」
「それで、当面は繁殖させるんだな。」
「ああ、鶏舎は2か所に分けてあるから、オスは分散してメスも半々にする。」
「一夫多妻だな。」
「そういうことだ。」
俺はドライフルーツの菓子も試してもらった。
「ふむ、フルーツケーキは面白いな。旬のフルーツとは違った味を楽しめる。」
「フラッペはどうかな?」
「少し食べると、頭がキーンとする……。」
「そういう時は、こめかみに器をくっつけて冷やすといいんだ。それと、ゆっくり食べれば頭キーンは起きないんだよ。」
「そうなのか。頭キーンがなければナイルにピッタリの食べ物だと思うぞ。」
「よかった。じゃあ、製氷庫とかき氷器を増産して持ってくるかな。」
「そんなに色々ともらっても、ナイルが返せるものは果実と綿の布くらいしかないぞ。」
「今はまだそれでいい。いずれ、この国に色々な産業が興るだろう。そうなってからで十分だよ。」
「それでは、わらわの気がすまぬのだ!」
俺は、色々な苗を持ち込んで、試験的な栽培を頼むことにした。
トマト・ナス・トウモロコシ・イチゴなどである。
もし、うまく育つようなら新たな産業となる。
特に、毎年のように氾濫をおこすナイル川下流は、同時に肥沃な土地でもあるため、農業は盛んなのだ。
今回は、ネコを30匹持ち帰った。
動物公園に20匹で、学び舎に10匹だ。
「まあまあ、早速連れてきてくれたのね。」
「ええ。快適な寝床と砂場。定期的な餌やりをわすれなければ定着してくれるでしょう。」
「定着しなかったら?」
「まあ、どこかの家で飼われてるってことでしょうね。」
【あとがき】
さて、そろそろ地中海を回りますかね……。
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