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第七章 動物の園
第121話 パメラ
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「何じゃこれは!」
「タウが考案したプリンですわ。」
「お、お前たちも食べてみろ。」
「「いただきます。」」
侍女たちも、恐る恐るプリンを口にする。
声にならない驚きが伝わってくる。
「驚いたであろう。」
「この食感と上品な甘さ……。」
「あ、悪魔的な誘惑が……。」
「いや、そこは天使じゃろう。」
全員の顔が蕩けている。
「ソフィア、やっぱりタウを譲ってくれ!」
「フフン、タウの魅力はこんなものじゃすみませんから。」
「タウには他にも魅力があるというのか?」
「この年齢にして、フォン王国第4位の役職についております。」
「それは、ソフィアの夫という地位に由来するのではないのか?」
「いえ、元々平民だった彼が、様々な道具を開発して国益に寄与し、次は優れた医師として国の医療をひっくり返しました。」
「技師でありながら医師でもあるだと。この歳で……」
「その功績で爵位を得て、政治の世界でもその特出した才能を見せてくれました。わが夫となったのはその後ですわ。」
「菓子職人で、医師で、技師と政治家の勇者だと。しんなの考えられるか!」
「そうだわ、タウ、この国には製氷庫と冷却庫が効果的じゃないかしら。」
「そうですね。えっと、この辺に出しましょうか。」
「な、何をするつもりじゃ。」
俺は収納から二つの箱を取り出した。
「それは?」
「氷を作る魔道具と、中のものを冷やしておく魔道具です。」
製氷庫から氷の落下する音が聞こえてくる。
「氷というのは聞いたことがあるが……。」
「水を冷やすと塊になります。それが氷です。」
俺は氷を一つ取り出してパメラ王女に渡した。
「つ、冷たい!」
「氷をいくつかカップに入れて、そこに飲み物を注げば冷たい飲み物を楽しむことができます。」
「もう一つの箱は何に使うのじゃ。」
「中のものを冷やしておけるので、冷たい飲み物を入れて置いたり、肉や魚を数日保管しておけます。」
「そんなことをしたら、腹を壊すではないか。」
「腐る……食材が痛むのは、温度を下げることで遅くすることができるんですよ。」
「これも、お前が作ったというのか……。」
「ウフフッ、タウは渡しませんから。」
その後も、オセロや冷風機を紹介しながらこの日を過ごした。
「それで、いろいろなものを紹介してもらったが、こちらは何を提供すればよいのじゃ。」
「そうですね。とりあえずはフルーツですか。」
「そんなものでよいのか?」
「それと、ネコがいいですわ。」
「ネコ?そんなものいくらでも連れていくがいい。」
「ホントですか!」
「ああ。この屋敷にもなん十匹といるしな。」
そう、エジプトは古くからネコを可愛がり、繁殖させてきた。
ここで見かけるのは、見るからにアビシニアンといった感じの凛々しいネコたちだ。
その見た目に反して、性格は人によく慣れ体をスリスリしてくる。
「ああ、それからこちらが砂糖です。これと、玉子とミルクがあれば、プリンを作ることができます。これも交易に加えましょう。」
「わが国でもプリンを作れるというのか!」
「次に来る時には、玉子をよく生む鳥も連れてきましょう。」
「わが国民にも、プリンを食わせてやることが……。」
「王女様、そこまで感激することじゃないでしょ。」
「うっ、わらわは泣いてなどおらぬ!」
「うふっ、王女様可愛いですわ。」
「その、王女というのは他人行儀じゃ。わらわのことは、パメラと呼ぶがよい。」
「パメラさま……。」
「様も不要じゃ。ソフィアは次期王女なのであろう。われらは対等じゃ。タウも同様にな。」
こうしてナイル王国との友好関係は確立された。
【あとがき】
そういえば、これを書いている最中もサクラが膝に乗ってきて邪魔されました。
そういうのも許容してしまう可愛さがネコにはありますよね。
「タウが考案したプリンですわ。」
「お、お前たちも食べてみろ。」
「「いただきます。」」
侍女たちも、恐る恐るプリンを口にする。
声にならない驚きが伝わってくる。
「驚いたであろう。」
「この食感と上品な甘さ……。」
「あ、悪魔的な誘惑が……。」
「いや、そこは天使じゃろう。」
全員の顔が蕩けている。
「ソフィア、やっぱりタウを譲ってくれ!」
「フフン、タウの魅力はこんなものじゃすみませんから。」
「タウには他にも魅力があるというのか?」
「この年齢にして、フォン王国第4位の役職についております。」
「それは、ソフィアの夫という地位に由来するのではないのか?」
「いえ、元々平民だった彼が、様々な道具を開発して国益に寄与し、次は優れた医師として国の医療をひっくり返しました。」
「技師でありながら医師でもあるだと。この歳で……」
「その功績で爵位を得て、政治の世界でもその特出した才能を見せてくれました。わが夫となったのはその後ですわ。」
「菓子職人で、医師で、技師と政治家の勇者だと。しんなの考えられるか!」
「そうだわ、タウ、この国には製氷庫と冷却庫が効果的じゃないかしら。」
「そうですね。えっと、この辺に出しましょうか。」
「な、何をするつもりじゃ。」
俺は収納から二つの箱を取り出した。
「それは?」
「氷を作る魔道具と、中のものを冷やしておく魔道具です。」
製氷庫から氷の落下する音が聞こえてくる。
「氷というのは聞いたことがあるが……。」
「水を冷やすと塊になります。それが氷です。」
俺は氷を一つ取り出してパメラ王女に渡した。
「つ、冷たい!」
「氷をいくつかカップに入れて、そこに飲み物を注げば冷たい飲み物を楽しむことができます。」
「もう一つの箱は何に使うのじゃ。」
「中のものを冷やしておけるので、冷たい飲み物を入れて置いたり、肉や魚を数日保管しておけます。」
「そんなことをしたら、腹を壊すではないか。」
「腐る……食材が痛むのは、温度を下げることで遅くすることができるんですよ。」
「これも、お前が作ったというのか……。」
「ウフフッ、タウは渡しませんから。」
その後も、オセロや冷風機を紹介しながらこの日を過ごした。
「それで、いろいろなものを紹介してもらったが、こちらは何を提供すればよいのじゃ。」
「そうですね。とりあえずはフルーツですか。」
「そんなものでよいのか?」
「それと、ネコがいいですわ。」
「ネコ?そんなものいくらでも連れていくがいい。」
「ホントですか!」
「ああ。この屋敷にもなん十匹といるしな。」
そう、エジプトは古くからネコを可愛がり、繁殖させてきた。
ここで見かけるのは、見るからにアビシニアンといった感じの凛々しいネコたちだ。
その見た目に反して、性格は人によく慣れ体をスリスリしてくる。
「ああ、それからこちらが砂糖です。これと、玉子とミルクがあれば、プリンを作ることができます。これも交易に加えましょう。」
「わが国でもプリンを作れるというのか!」
「次に来る時には、玉子をよく生む鳥も連れてきましょう。」
「わが国民にも、プリンを食わせてやることが……。」
「王女様、そこまで感激することじゃないでしょ。」
「うっ、わらわは泣いてなどおらぬ!」
「うふっ、王女様可愛いですわ。」
「その、王女というのは他人行儀じゃ。わらわのことは、パメラと呼ぶがよい。」
「パメラさま……。」
「様も不要じゃ。ソフィアは次期王女なのであろう。われらは対等じゃ。タウも同様にな。」
こうしてナイル王国との友好関係は確立された。
【あとがき】
そういえば、これを書いている最中もサクラが膝に乗ってきて邪魔されました。
そういうのも許容してしまう可愛さがネコにはありますよね。
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