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第七章 動物の園
第120話 ナイル
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ナイル川と思しき川沿いに町が栄えていた。
その西側は砂漠になっていてナイル川が注ぐのは地中海だろうか。
残念ながら、ピラミッドやスフィンクスは見られなかった。
上空から見た限り、城のような建物は見られなかった。
ここは、いわゆる下ナイルに相当するのだろう。
俺は少し離れた場所に……、といっても砂漠だったのだが、着陸して地上を走行していく。
上空から見た一番広い建物に向かって走ると、さすがにそこは塀を巡らせて門兵が置かれていた。
きちんと自己紹介をして、王族に取り次いでもらえるよう頼んだところ、女王への謁見が許された。
「顔をあげてよいぞ。」
「ありがとうございます。」
ソフィアが応じる。
こういう場面での主役は当然だがソフィアになる。
「ここより遥か北東にございますフォン王国からまいりました。第一王女のソフィア・フォンタンにございます。突然の訪問にもかかわらずご面会の機会を与えてくださり、感謝申し上げます。」
「ナイル王国女王のネフィタリア・パメラじゃ。遠路ご苦労であった。」
「失礼ながら、まずは手土産に持参した品を献上させて頂きたいと存じます。」
ソフィアの言葉にあわせて、俺は収納から黒塗りの盆と、献上品に選んだ品を取り出す。
プラチナで猫を形作りルビーをあしらった髪飾りと、おそろいのペンダントだ。
ベルベットを張った盆にその2品を載せて、横に控えていた兵士に渡す。
兵士経由で受け取った王女は目を細めた。
「これは、銀の輝きではないな。」
「白金にございます。」
「この国で猫を崇めておるのを知っておったのか?」
「それは……。」
ソフィアが助けを乞うように俺を見た。
「失礼ながらご回答申し上げます。」
「構わぬ。」
「別の国と交易をしておりました際、西の国で猫を重用していると聞き及んだことがあり、持参いたしました。ナイル国と確証を得ていたわけではございません。」
「そうか。時にソフィアよ。」
「はい。」
「ところで、その醜い顔をした男は、お前の奴隷なのかい?」
「くっ!……。」
ソフィアは立ち上がって応えた。
「このモノは我が夫にございます。半身が変色しているのはドラゴンのブレスで焼かれた勇気ある証。夫に対するこれ以上の侮辱は許しませぬ。」
パメラ王女を正面から見据えた態度は、我が嫁でありながら凛々しかった。
「あはは、許せ。この国では傷は勇者の証。ただの奴隷ならば、私がもらい受けようと思ったのじゃ。夫としてな。」
「そっ……、それはできません。お断り申し上げます。」
「残念じゃのう。ドラゴンに焼かれて生き残った男など、どこを探してもおらぬであろうな。」
「当然でございます。」
「あははっ、愉快な乙女じゃ。ついてまいれ、茶を煎れてやろう。」
パメラ王女は、手ずからハーブティーを煎れてくれた。
穏やかな香りが室内に満ちてゆく。
「ところで、ソフィアの夫よ、名を教えてくれ。」
「タウ・フォンタンにございます。」
「タウ……変わった名じゃな。意味があるのか?」
「ドラゴンに焼かれて死にかけていた私を拾ってくれたのが医者でした。体も動かず、まともに口も開けない私でしたが、もし回復した時に発音しやすい名前がよいだろうとつけてくれた名前です。」
「タァーウー……、なるほどな。そう聞くと愛に満ちた名前だな。」
「ありがとうございます。」
「それで、このような遠方まで王女が足を運んだ訳は?」
「友好関係を広げるのと、交易のためですわ。」
「ふむ、友好は望むところだが、交易か。」
「交易の話をする前に、召し上がっていただきたいものがあります。」
俺は収納について説明したうえで、プリンを取り出した。
部屋にいた侍女を含めた人数分だ。
【あとがき】
なぜでしょう、エジプトは書きやすいんですよね。
その西側は砂漠になっていてナイル川が注ぐのは地中海だろうか。
残念ながら、ピラミッドやスフィンクスは見られなかった。
上空から見た限り、城のような建物は見られなかった。
ここは、いわゆる下ナイルに相当するのだろう。
俺は少し離れた場所に……、といっても砂漠だったのだが、着陸して地上を走行していく。
上空から見た一番広い建物に向かって走ると、さすがにそこは塀を巡らせて門兵が置かれていた。
きちんと自己紹介をして、王族に取り次いでもらえるよう頼んだところ、女王への謁見が許された。
「顔をあげてよいぞ。」
「ありがとうございます。」
ソフィアが応じる。
こういう場面での主役は当然だがソフィアになる。
「ここより遥か北東にございますフォン王国からまいりました。第一王女のソフィア・フォンタンにございます。突然の訪問にもかかわらずご面会の機会を与えてくださり、感謝申し上げます。」
「ナイル王国女王のネフィタリア・パメラじゃ。遠路ご苦労であった。」
「失礼ながら、まずは手土産に持参した品を献上させて頂きたいと存じます。」
ソフィアの言葉にあわせて、俺は収納から黒塗りの盆と、献上品に選んだ品を取り出す。
プラチナで猫を形作りルビーをあしらった髪飾りと、おそろいのペンダントだ。
ベルベットを張った盆にその2品を載せて、横に控えていた兵士に渡す。
兵士経由で受け取った王女は目を細めた。
「これは、銀の輝きではないな。」
「白金にございます。」
「この国で猫を崇めておるのを知っておったのか?」
「それは……。」
ソフィアが助けを乞うように俺を見た。
「失礼ながらご回答申し上げます。」
「構わぬ。」
「別の国と交易をしておりました際、西の国で猫を重用していると聞き及んだことがあり、持参いたしました。ナイル国と確証を得ていたわけではございません。」
「そうか。時にソフィアよ。」
「はい。」
「ところで、その醜い顔をした男は、お前の奴隷なのかい?」
「くっ!……。」
ソフィアは立ち上がって応えた。
「このモノは我が夫にございます。半身が変色しているのはドラゴンのブレスで焼かれた勇気ある証。夫に対するこれ以上の侮辱は許しませぬ。」
パメラ王女を正面から見据えた態度は、我が嫁でありながら凛々しかった。
「あはは、許せ。この国では傷は勇者の証。ただの奴隷ならば、私がもらい受けようと思ったのじゃ。夫としてな。」
「そっ……、それはできません。お断り申し上げます。」
「残念じゃのう。ドラゴンに焼かれて生き残った男など、どこを探してもおらぬであろうな。」
「当然でございます。」
「あははっ、愉快な乙女じゃ。ついてまいれ、茶を煎れてやろう。」
パメラ王女は、手ずからハーブティーを煎れてくれた。
穏やかな香りが室内に満ちてゆく。
「ところで、ソフィアの夫よ、名を教えてくれ。」
「タウ・フォンタンにございます。」
「タウ……変わった名じゃな。意味があるのか?」
「ドラゴンに焼かれて死にかけていた私を拾ってくれたのが医者でした。体も動かず、まともに口も開けない私でしたが、もし回復した時に発音しやすい名前がよいだろうとつけてくれた名前です。」
「タァーウー……、なるほどな。そう聞くと愛に満ちた名前だな。」
「ありがとうございます。」
「それで、このような遠方まで王女が足を運んだ訳は?」
「友好関係を広げるのと、交易のためですわ。」
「ふむ、友好は望むところだが、交易か。」
「交易の話をする前に、召し上がっていただきたいものがあります。」
俺は収納について説明したうえで、プリンを取り出した。
部屋にいた侍女を含めた人数分だ。
【あとがき】
なぜでしょう、エジプトは書きやすいんですよね。
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