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第六章 海の先
第109話 イカン帝国
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翌日は町の視察だった。
俺が宝石の加工を見たいと希望したため、工房へ案内された。
「へえ。宝石の加工ってこうしているんですか。」
「ええ。一眼固い石の粉で磨くんですよ。ですので、時間がかかりますしそれだけ高価になってしまいます。」
「確かにそうですね。じゃあ、私のやっている方法をお見せしましょうか。」
「えっ、タウ様も石の加工ができるんですか?」
「ええ。たまにやる程度ですけどね。」
俺は、普段やっているように水の中に石の粉を沈めた。
「これを、水魔法で円盤状に高速回転させて石を押し当てるだけなんですけどね。こんなふうに。」
水に含まれた石の粉が、みるみる宝石を削っていく。
「な、なんと!」 「すごい速さで削れていく!」
「ま、まさかこんなやり方があったとは……。」 「ルビーがこんな短時間で磨き終わるなんて信じられません。」
野牛の食肉加工場を見たり、武器の製造所を見たりしたが、新たな発見は何もなかった。
野牛は大味だったが、数は多いらしい。まあ、牛丼なら作れるだろうと、俺は30頭ほど入手して収納にしまった。
そして二日目も無事に終わり、翌朝俺たちはイカン帝国に向けて旅立った。
「あれがヤマ王国南端の町ですわね。……攻められています。」
「でも俺達は手を出す訳にもいきません。」
町の上空を飛んでいると、カンカンと何かが当たる音がした、見ればイカンの側から矢や魔法が飛んできていた。
「まったく、見境なく噛みついてくるんだな。」
俺は速度をあげてそれらをいったん振り切って反転させると、イカン陣営からの攻撃が途絶えるまでバズーカを打ち込んだ。
「うーん、どうしようか……。このままイカンに乗り込むのは危険だと思うんだけど……。」
「そうですわね。わたくしは行かなければなりませんし、タウも必要です。」
「じゃあ、職員の二人はヤマで預かってもらおうか。」
「いえ、私たちも大丈夫ですよ。」
「うーん……。何かあった時に、人数が多いとフォロー仕切れないんですよね。二人のメイドは戦力だし、ソフィアと僕は外れることができない……。」
結局ヤマに引き返し、外務局職員の二人を預かってもらった。
これまでとは違い、イカン帝国王都とは別の町に行き、そこで馬と御者だけ調達して収納から馬車を出して4人で王都に向かう。
門兵には招待状を提示して通してもらう。戴冠式は明日だ。
「さて、ここからは適地だと思って気を引き締めていきましょう。」
「「「はい!」」」
戴冠式の前日でもあり、忙しく行きかう人々を横目に俺たちは城に入った。
イカン帝国暫定国王のフランコ・ビサロとは、夕方の晩さん会で面会できるという。
俺たちは来賓用の宿泊所に案内され、夕方まで待機することになった。
御者と馬は帰ってもらい、馬車も収納に戻してある。
「すみません。贈り物のポンプを井戸に設置したいので、担当の方に連絡していただけませんか?」
案内というか監視者というか迷うが、部屋の外にいた男に声をかける。男は面倒くさそうに無言でうなづいて一緒にいた兵士に指示を出している。
「他の国の代表は到着していないのですか?」
「知らん。」
どう考えても来賓を迎える態度ではなかった。
ずいぶん長い時間待たされたが、産業部門の担当者というのがやってきて、城内の井戸に案内された。
俺たちは無言で担当者に同行し、城の中庭にあった井戸にポンプを設置した。
動作確認をして確認を促すと、案内者は感謝の言葉も述べず、ソフィアの方を向いて言った。
「陛下の予定が空いたので案内する。」
俺たちも同行しようとすると、ソフィアだけだと断られてしまった。
「冗談をいうな!王女を一人で行かせるわけないだろう。」
「陛下の指名は王女のみだ。」
【あとがき】
インカ帝国を滅亡に追いやったスペインの侵略者、フランシスコ・ピサロ……。
俺が宝石の加工を見たいと希望したため、工房へ案内された。
「へえ。宝石の加工ってこうしているんですか。」
「ええ。一眼固い石の粉で磨くんですよ。ですので、時間がかかりますしそれだけ高価になってしまいます。」
「確かにそうですね。じゃあ、私のやっている方法をお見せしましょうか。」
「えっ、タウ様も石の加工ができるんですか?」
「ええ。たまにやる程度ですけどね。」
俺は、普段やっているように水の中に石の粉を沈めた。
「これを、水魔法で円盤状に高速回転させて石を押し当てるだけなんですけどね。こんなふうに。」
水に含まれた石の粉が、みるみる宝石を削っていく。
「な、なんと!」 「すごい速さで削れていく!」
「ま、まさかこんなやり方があったとは……。」 「ルビーがこんな短時間で磨き終わるなんて信じられません。」
野牛の食肉加工場を見たり、武器の製造所を見たりしたが、新たな発見は何もなかった。
野牛は大味だったが、数は多いらしい。まあ、牛丼なら作れるだろうと、俺は30頭ほど入手して収納にしまった。
そして二日目も無事に終わり、翌朝俺たちはイカン帝国に向けて旅立った。
「あれがヤマ王国南端の町ですわね。……攻められています。」
「でも俺達は手を出す訳にもいきません。」
町の上空を飛んでいると、カンカンと何かが当たる音がした、見ればイカンの側から矢や魔法が飛んできていた。
「まったく、見境なく噛みついてくるんだな。」
俺は速度をあげてそれらをいったん振り切って反転させると、イカン陣営からの攻撃が途絶えるまでバズーカを打ち込んだ。
「うーん、どうしようか……。このままイカンに乗り込むのは危険だと思うんだけど……。」
「そうですわね。わたくしは行かなければなりませんし、タウも必要です。」
「じゃあ、職員の二人はヤマで預かってもらおうか。」
「いえ、私たちも大丈夫ですよ。」
「うーん……。何かあった時に、人数が多いとフォロー仕切れないんですよね。二人のメイドは戦力だし、ソフィアと僕は外れることができない……。」
結局ヤマに引き返し、外務局職員の二人を預かってもらった。
これまでとは違い、イカン帝国王都とは別の町に行き、そこで馬と御者だけ調達して収納から馬車を出して4人で王都に向かう。
門兵には招待状を提示して通してもらう。戴冠式は明日だ。
「さて、ここからは適地だと思って気を引き締めていきましょう。」
「「「はい!」」」
戴冠式の前日でもあり、忙しく行きかう人々を横目に俺たちは城に入った。
イカン帝国暫定国王のフランコ・ビサロとは、夕方の晩さん会で面会できるという。
俺たちは来賓用の宿泊所に案内され、夕方まで待機することになった。
御者と馬は帰ってもらい、馬車も収納に戻してある。
「すみません。贈り物のポンプを井戸に設置したいので、担当の方に連絡していただけませんか?」
案内というか監視者というか迷うが、部屋の外にいた男に声をかける。男は面倒くさそうに無言でうなづいて一緒にいた兵士に指示を出している。
「他の国の代表は到着していないのですか?」
「知らん。」
どう考えても来賓を迎える態度ではなかった。
ずいぶん長い時間待たされたが、産業部門の担当者というのがやってきて、城内の井戸に案内された。
俺たちは無言で担当者に同行し、城の中庭にあった井戸にポンプを設置した。
動作確認をして確認を促すと、案内者は感謝の言葉も述べず、ソフィアの方を向いて言った。
「陛下の予定が空いたので案内する。」
俺たちも同行しようとすると、ソフィアだけだと断られてしまった。
「冗談をいうな!王女を一人で行かせるわけないだろう。」
「陛下の指名は王女のみだ。」
【あとがき】
インカ帝国を滅亡に追いやったスペインの侵略者、フランシスコ・ピサロ……。
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