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第六章 海の先
第108話 ヤマ
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ヤマの国王はエル・コバカナという初老の男性だった。
「こんな遠くまでお越しいただきありがとうございます。」
「いえ、異国の文化に触れる機会を与えてくださり感謝の念に堪えません。」
両国の参列者の紹介から始まった懇話会はやがて部門に別れた部会へと移行していく。
俺はもちろん産業部会だ。
「来る途中で拝見したのですが、こちらの主要となる穀物はトウモロコシですよね。」
「はい。そのまま焼いたり茹でたりして食べられますし、粉にして練ったものをパンのように焼いたりしています。」
「スープにしても美味しそうですね。」
「いえ。スープにすることはほとんどありません。」
「えっ、そうなんですか。」
残念ながらコーンスープは普及していないようだ。
この国の産業としては、宝石の加工がある。
水晶を磨いて人形にしたり、宝石を加工してアクセサリーにするのだ。
そのあともいくつかの産業案件について意見交換し、俺は城の井戸にポンプを設置した。
夕食会まで時間があったので、俺は城の厨房を借りてコーンスープを作ることにした。
茹でたトウモロコシの実をはがし、スライスした玉ねぎをバターで炒めます。
タイミングを見計らってトウモロコシを加え、コンソメスープを入れて数分間煮てからミキサーにかけます。
それを濾しながら鍋に戻し、牛乳を加えながらゆっくりと加熱し、塩少々で味を整えていきます。
最後に生クリームを垂らし、パセリのみじん切りをパラリで完成です。
「す、凄い!トウモロコシの旨味が際立っています!」
同席してくれた料理長も太鼓判を押してくれました。
「夕食会に先立ち、フォン王国のタウ局長がトウモロコシのスープを作ってくださいましたのでお試しいただきたいと思います。」
給仕たちがスープの入ったカップを全員の手元に用意した。
「ではいただきましょう。」
参加者がスプーンでスープを口に運んでいく。
「!」 「こ、これは!」 「……美味しい!」 「なんて優しいスープなの。」 口々に賛辞をいただいた。
「これは驚きです。我が国特産のトウモロコシを使って、このようなスープをおつくりいただけるとは!」
「フォン王国のタウでございます。このスープは栄養価の高いものですから、食事の進まない病人にも提供できると思います。」
会場がざわつきます。
「そして、これにヤポネのコメを加えて煮れば、それだけで十分な食事になります。炊き出しにも使えると思いますので、ぜひご検討ください。」
会場は盛大な拍手に包まれた。
「ねえタウ、国王から聞いたのだけれど。」
「はい。」
「この国は、数年前までもっと南に伸びていたようなの。」
「南というと、イカン帝国のあたりですね。」
「そう。もともとはヤマ王国とナフサ王国の間に国はなかったのだけれど、十数年前に海をわたってきた一族が国を起こしたの。それがイカン帝国。」
「なるほど。イカンは新興国なんですね。」
「そうよ。そして、イカンはヤマとナフサに戦を仕掛けて領土を拡大し、奪った土地の人たちを奴隷にしてさらに国を大きくしていったようね。」
「ヤマとナフサは抵抗しなかったんですか?」
「この大陸には、戦という概念がなかったのよ。」
「武器もなく、戦の備えもなかった。この町の様子をみればそれが分かりますね。」
「最近になってようやく城壁を築いたり、武器を持って抵抗しているみたいなんだけど、形勢は不利だと言っていたわ。」
「とはいっても、国家間の問題に介入する訳にもいきませんし、むつかしいところですね。」
「そうよね。我が国に被害が出ているわけじゃないし……。」
【あとがき】
新大陸上陸です。
「こんな遠くまでお越しいただきありがとうございます。」
「いえ、異国の文化に触れる機会を与えてくださり感謝の念に堪えません。」
両国の参列者の紹介から始まった懇話会はやがて部門に別れた部会へと移行していく。
俺はもちろん産業部会だ。
「来る途中で拝見したのですが、こちらの主要となる穀物はトウモロコシですよね。」
「はい。そのまま焼いたり茹でたりして食べられますし、粉にして練ったものをパンのように焼いたりしています。」
「スープにしても美味しそうですね。」
「いえ。スープにすることはほとんどありません。」
「えっ、そうなんですか。」
残念ながらコーンスープは普及していないようだ。
この国の産業としては、宝石の加工がある。
水晶を磨いて人形にしたり、宝石を加工してアクセサリーにするのだ。
そのあともいくつかの産業案件について意見交換し、俺は城の井戸にポンプを設置した。
夕食会まで時間があったので、俺は城の厨房を借りてコーンスープを作ることにした。
茹でたトウモロコシの実をはがし、スライスした玉ねぎをバターで炒めます。
タイミングを見計らってトウモロコシを加え、コンソメスープを入れて数分間煮てからミキサーにかけます。
それを濾しながら鍋に戻し、牛乳を加えながらゆっくりと加熱し、塩少々で味を整えていきます。
最後に生クリームを垂らし、パセリのみじん切りをパラリで完成です。
「す、凄い!トウモロコシの旨味が際立っています!」
同席してくれた料理長も太鼓判を押してくれました。
「夕食会に先立ち、フォン王国のタウ局長がトウモロコシのスープを作ってくださいましたのでお試しいただきたいと思います。」
給仕たちがスープの入ったカップを全員の手元に用意した。
「ではいただきましょう。」
参加者がスプーンでスープを口に運んでいく。
「!」 「こ、これは!」 「……美味しい!」 「なんて優しいスープなの。」 口々に賛辞をいただいた。
「これは驚きです。我が国特産のトウモロコシを使って、このようなスープをおつくりいただけるとは!」
「フォン王国のタウでございます。このスープは栄養価の高いものですから、食事の進まない病人にも提供できると思います。」
会場がざわつきます。
「そして、これにヤポネのコメを加えて煮れば、それだけで十分な食事になります。炊き出しにも使えると思いますので、ぜひご検討ください。」
会場は盛大な拍手に包まれた。
「ねえタウ、国王から聞いたのだけれど。」
「はい。」
「この国は、数年前までもっと南に伸びていたようなの。」
「南というと、イカン帝国のあたりですね。」
「そう。もともとはヤマ王国とナフサ王国の間に国はなかったのだけれど、十数年前に海をわたってきた一族が国を起こしたの。それがイカン帝国。」
「なるほど。イカンは新興国なんですね。」
「そうよ。そして、イカンはヤマとナフサに戦を仕掛けて領土を拡大し、奪った土地の人たちを奴隷にしてさらに国を大きくしていったようね。」
「ヤマとナフサは抵抗しなかったんですか?」
「この大陸には、戦という概念がなかったのよ。」
「武器もなく、戦の備えもなかった。この町の様子をみればそれが分かりますね。」
「最近になってようやく城壁を築いたり、武器を持って抵抗しているみたいなんだけど、形勢は不利だと言っていたわ。」
「とはいっても、国家間の問題に介入する訳にもいきませんし、むつかしいところですね。」
「そうよね。我が国に被害が出ているわけじゃないし……。」
【あとがき】
新大陸上陸です。
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