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第六章 海の先
第104話 そば
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翌日、ソフィアは女王と服飾系の視察で、アイラとシノブも同行している。俺は産業家老の手配してくれた若いスタッフと城下町の視察だ。
「産業課のカナでございます。タウ様はどういった所をご覧になりたいですか?」
「えっ……、ああ、タタミを買いたいのと、食品を中心に見てみたいですね。」
驚いた。シノブにそっくりな女性だった。
「タタミですか。量はどれくらいでしょう。」
「できれば50枚くらい欲しいんだけど。」
「一軒で50枚は厳しいと思いますので、大手を何件か回ってみましょう。」
「お願いします。」
「お昼のご希望はありますか?」
「そうですね……、ソバってあったりします?」
「まあ、おソバをご存じなんですか!」
「ええ。話で聞いただけなんですけどね。」
「承知いたしました。」
畳は10枚ずつ5軒に分けて注文した。明日までに用意してくれるそうだ。
「カナさんは姉妹とかいらっしゃるんですか?」
「いえ、私に兄弟姉妹はおりませんが。」
「そうですか。カナさんにそっくりな女性を知っているものですから。」
「私に似ている方をご存じなんですね。そういえば、母の若いころにそっくりだとよく言われるんですが……。」
「お母さん?」
「あっ、申し遅れました。ヒミコの娘、カナでございます。」
「えっ、では王女様なんですね。」
「王家の一人ではありますが、この国ではそういう制度はなくって、私はあくまでも母になにかあった時の継承者の一人というだけなんですよ。」
「へえ、そうなんですか……。」
「あっ、そこのおソバが美味しいんです。お昼にしましょう。」
「あっ、本当だ。新ソバの香りが……。」
「クスッ、食べたことがないとおっしゃるのに、おソバの香りをご存じだなんて。」
「えっ、あれっ?おかしいですよね……。」
暖簾をくぐると、威勢の良い声がかかる。
「らっしゃい。おっ、カナちゃんじゃねえか。男連れたあ珍しいね。これかい?」
主人らしい男性が気さくに声をかけてくる。
「いやだわ大将。こちらはフォン王国のタウ局長です。大将もお名前くらいは聞いたことがあるんじゃないですか?」
「えっ、タウって……、あの竹ペンやピーラーを作った?」
「そうですけど……、ピーラーって何ですか?」
「あははっ。カナちゃんは知らねえか。ピーラーってのはこれだよ、皮むき器。料理人にとっては、画期的な発明品なんだぜ。」
「そんな物まで発明されてたんですか。本当に色々な分野で活躍されていらっしゃるんですね。」
「いえ、体が不自由だったものですから、少しでも楽のできるものを考えただけですよ。」
「注文はどうする。いつものモリでいいのかい?」
「はい。タウさんはどうします?」
「天ぷらはないんですか?」
「天ぷらってなんだい?」
「私も聞いたことありませんが。」
「野菜なんかに衣をつけて揚げたものなんだけど、ないんですね。」
「それは、おソバにあうんですか?」
「好みもあるけど、好きな人は多いですね。」
「やっぱり、おソバを食べたことがあるんですね。」
「あれっ……?」
「クスッ、やっぱり変な人。」
大将が興味あるというので、天ぷらを作ってみることになった。
大き目のフライパンを収納から取り出して、植物油を入れ火にかける。
厨房にあったかぼちゃを分けてもらい薄切りにして、同じく分けてもらったゴボウと人参を細切りにする。ゲソがなかったので残っていたクラーケンをぶつ切りにした。
次に衣作りだ。卵を冷水で溶いてそこに小麦粉をふるいながら入れていく。これをサクッと混ぜれば完成だ。
熱した油に、衣をつけたかぼちゃを入れて揚げ、パットにとって油切する。
「なんだか簡単そうだな。俺でもできそうだぜ。」
「ええ。難しいことはないですよ。」
次はかき揚げだ。クラーケンのぶつ切りと人参・ゴボウを溶いた小麦粉に漬けてお玉ですくって油に投入。油が冷めるといけないので一つずつ揚げていく。
大将には、同時にソバを茹でてもらい、タイミングを見計らって同時に完了した。
「じゃ、お蕎麦をいただきましょう。」
【あとがき】
そばに天ぷら。邪道だという人もいますが、これは好きです。
「産業課のカナでございます。タウ様はどういった所をご覧になりたいですか?」
「えっ……、ああ、タタミを買いたいのと、食品を中心に見てみたいですね。」
驚いた。シノブにそっくりな女性だった。
「タタミですか。量はどれくらいでしょう。」
「できれば50枚くらい欲しいんだけど。」
「一軒で50枚は厳しいと思いますので、大手を何件か回ってみましょう。」
「お願いします。」
「お昼のご希望はありますか?」
「そうですね……、ソバってあったりします?」
「まあ、おソバをご存じなんですか!」
「ええ。話で聞いただけなんですけどね。」
「承知いたしました。」
畳は10枚ずつ5軒に分けて注文した。明日までに用意してくれるそうだ。
「カナさんは姉妹とかいらっしゃるんですか?」
「いえ、私に兄弟姉妹はおりませんが。」
「そうですか。カナさんにそっくりな女性を知っているものですから。」
「私に似ている方をご存じなんですね。そういえば、母の若いころにそっくりだとよく言われるんですが……。」
「お母さん?」
「あっ、申し遅れました。ヒミコの娘、カナでございます。」
「えっ、では王女様なんですね。」
「王家の一人ではありますが、この国ではそういう制度はなくって、私はあくまでも母になにかあった時の継承者の一人というだけなんですよ。」
「へえ、そうなんですか……。」
「あっ、そこのおソバが美味しいんです。お昼にしましょう。」
「あっ、本当だ。新ソバの香りが……。」
「クスッ、食べたことがないとおっしゃるのに、おソバの香りをご存じだなんて。」
「えっ、あれっ?おかしいですよね……。」
暖簾をくぐると、威勢の良い声がかかる。
「らっしゃい。おっ、カナちゃんじゃねえか。男連れたあ珍しいね。これかい?」
主人らしい男性が気さくに声をかけてくる。
「いやだわ大将。こちらはフォン王国のタウ局長です。大将もお名前くらいは聞いたことがあるんじゃないですか?」
「えっ、タウって……、あの竹ペンやピーラーを作った?」
「そうですけど……、ピーラーって何ですか?」
「あははっ。カナちゃんは知らねえか。ピーラーってのはこれだよ、皮むき器。料理人にとっては、画期的な発明品なんだぜ。」
「そんな物まで発明されてたんですか。本当に色々な分野で活躍されていらっしゃるんですね。」
「いえ、体が不自由だったものですから、少しでも楽のできるものを考えただけですよ。」
「注文はどうする。いつものモリでいいのかい?」
「はい。タウさんはどうします?」
「天ぷらはないんですか?」
「天ぷらってなんだい?」
「私も聞いたことありませんが。」
「野菜なんかに衣をつけて揚げたものなんだけど、ないんですね。」
「それは、おソバにあうんですか?」
「好みもあるけど、好きな人は多いですね。」
「やっぱり、おソバを食べたことがあるんですね。」
「あれっ……?」
「クスッ、やっぱり変な人。」
大将が興味あるというので、天ぷらを作ってみることになった。
大き目のフライパンを収納から取り出して、植物油を入れ火にかける。
厨房にあったかぼちゃを分けてもらい薄切りにして、同じく分けてもらったゴボウと人参を細切りにする。ゲソがなかったので残っていたクラーケンをぶつ切りにした。
次に衣作りだ。卵を冷水で溶いてそこに小麦粉をふるいながら入れていく。これをサクッと混ぜれば完成だ。
熱した油に、衣をつけたかぼちゃを入れて揚げ、パットにとって油切する。
「なんだか簡単そうだな。俺でもできそうだぜ。」
「ええ。難しいことはないですよ。」
次はかき揚げだ。クラーケンのぶつ切りと人参・ゴボウを溶いた小麦粉に漬けてお玉ですくって油に投入。油が冷めるといけないので一つずつ揚げていく。
大将には、同時にソバを茹でてもらい、タイミングを見計らって同時に完了した。
「じゃ、お蕎麦をいただきましょう。」
【あとがき】
そばに天ぷら。邪道だという人もいますが、これは好きです。
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