109 / 142
第六章 海の先
第103話 歓談
しおりを挟む
俺の方は、服飾組合長や食品組合長、鍛冶組合長とそれを束ねる産業家老との意見交換だ。和室ではなく板張りの部屋でテーブルだったのがありがたい。
「では、これらの菓子をお試しください。日持ちしないので輸出はできませんが、国内で流通しているものです。」
全員にシノブ達に持たせたのと同じプチケーキを提供する。
「プリンを初めて食した時には心底感激したものですが、これらも驚くほどの味わい……感服いたしました。」
「牛の乳は流通していると聞いていますので、あとは砂糖や卵が量産できればこの国でも色々なスイーツが作れると思いますよ。」
「砂糖は何とか自給できそうなのですが、卵は量産の目途が立たないのです。」
「そうですか。我が国の地鶏をお分けしても構いませんよ。」
「ホ、ホントですか!」
このへんは、外務局が希望を確認していたために、局長会議の了解を経て準備してある。
「で、こちらからは何を提供すれば良いのでしょうか。」
「そうですね。稲の種もみをいただけるとありがたいですね。」
「その程度であればいくらでも差し上げましょう!」
「それから、これは新作ですがスチーム機能付きアイロンの魔道具と、ヘアーアイロンの魔道具です。魔石にガードはかけていませんので、コピーしていただいて結構ですよ。」
「な、なぜそこまで我が国に……。」
「ヤポネは和を重んじる民族だと聞いています。これからも友好を深めていければと考えているんですよ。」
そう。日本民族は好戦的ではない。しかも勤勉で恩を忘れない。俺は局長会議でそこを力説し、良好な関係を築くことで合意を得ている。
これは、外務局からの情報によるものだ。
「ああ、そうそう。この国では魔導線が不足していると聞いています。よろしかったらお使いください。」
俺は収納から魔導線5kgの塊を取り出して産業家老に渡した。
「か、かたじけない!」
食品組合長に生クリームの作り方をレクチャーし、鍛冶組合長には実際に井戸ポンプを設置しながら構造を説明。
産業家老にはスタッフを呼んでもらい、鶏舎を建てる経過を見てもらって地鶏のオス5羽・メス15羽を引き渡した。
「女王様はとても気さくな方でしたわ。」
その夜の事である。俺たちは豪華な夕食をいただき、用意された畳敷きの部屋でくつろいでいる。
「シノブ、王女様から何か言われなかった?」
「労いのお言葉いただきましたが、特には……。」
「君は、この国の出身だろ?」
「ご存じでござったか……。」
「うん。なんとなくね。女王様も気づいた感じだったんだけどな……。」
「某は平民ゆえ、女王様と接点などないでござるよ。」
「そうなんだ。ああ、それにしても畳はいいなぁ。」
「そうですわね。裸足でいることがこんなに気持ちいいとは思いませんでしたわ。」
「うん、決めた。家にも畳の部屋を作ろう。」
「賛成ですわ。」
「シノブの部屋も畳にしてあげようか?」
「同部屋のイグリッドにも確認しないと、拙者だけの好みで決めるわけにはいかないでござるよ。」
「明日、街に出たら買えるだけ買っておくよ。」
【あとがき】
和室はいいですよね。癒されます。
「では、これらの菓子をお試しください。日持ちしないので輸出はできませんが、国内で流通しているものです。」
全員にシノブ達に持たせたのと同じプチケーキを提供する。
「プリンを初めて食した時には心底感激したものですが、これらも驚くほどの味わい……感服いたしました。」
「牛の乳は流通していると聞いていますので、あとは砂糖や卵が量産できればこの国でも色々なスイーツが作れると思いますよ。」
「砂糖は何とか自給できそうなのですが、卵は量産の目途が立たないのです。」
「そうですか。我が国の地鶏をお分けしても構いませんよ。」
「ホ、ホントですか!」
このへんは、外務局が希望を確認していたために、局長会議の了解を経て準備してある。
「で、こちらからは何を提供すれば良いのでしょうか。」
「そうですね。稲の種もみをいただけるとありがたいですね。」
「その程度であればいくらでも差し上げましょう!」
「それから、これは新作ですがスチーム機能付きアイロンの魔道具と、ヘアーアイロンの魔道具です。魔石にガードはかけていませんので、コピーしていただいて結構ですよ。」
「な、なぜそこまで我が国に……。」
「ヤポネは和を重んじる民族だと聞いています。これからも友好を深めていければと考えているんですよ。」
そう。日本民族は好戦的ではない。しかも勤勉で恩を忘れない。俺は局長会議でそこを力説し、良好な関係を築くことで合意を得ている。
これは、外務局からの情報によるものだ。
「ああ、そうそう。この国では魔導線が不足していると聞いています。よろしかったらお使いください。」
俺は収納から魔導線5kgの塊を取り出して産業家老に渡した。
「か、かたじけない!」
食品組合長に生クリームの作り方をレクチャーし、鍛冶組合長には実際に井戸ポンプを設置しながら構造を説明。
産業家老にはスタッフを呼んでもらい、鶏舎を建てる経過を見てもらって地鶏のオス5羽・メス15羽を引き渡した。
「女王様はとても気さくな方でしたわ。」
その夜の事である。俺たちは豪華な夕食をいただき、用意された畳敷きの部屋でくつろいでいる。
「シノブ、王女様から何か言われなかった?」
「労いのお言葉いただきましたが、特には……。」
「君は、この国の出身だろ?」
「ご存じでござったか……。」
「うん。なんとなくね。女王様も気づいた感じだったんだけどな……。」
「某は平民ゆえ、女王様と接点などないでござるよ。」
「そうなんだ。ああ、それにしても畳はいいなぁ。」
「そうですわね。裸足でいることがこんなに気持ちいいとは思いませんでしたわ。」
「うん、決めた。家にも畳の部屋を作ろう。」
「賛成ですわ。」
「シノブの部屋も畳にしてあげようか?」
「同部屋のイグリッドにも確認しないと、拙者だけの好みで決めるわけにはいかないでござるよ。」
「明日、街に出たら買えるだけ買っておくよ。」
【あとがき】
和室はいいですよね。癒されます。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。


少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。



特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる