7人のメイド物語

モモん

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第六章 海の先

第103話 歓談

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 俺の方は、服飾組合長や食品組合長、鍛冶組合長とそれを束ねる産業家老との意見交換だ。和室ではなく板張りの部屋でテーブルだったのがありがたい。
「では、これらの菓子をお試しください。日持ちしないので輸出はできませんが、国内で流通しているものです。」
 全員にシノブ達に持たせたのと同じプチケーキを提供する。

「プリンを初めて食した時には心底感激したものですが、これらも驚くほどの味わい……感服いたしました。」
「牛の乳は流通していると聞いていますので、あとは砂糖や卵が量産できればこの国でも色々なスイーツが作れると思いますよ。」
「砂糖は何とか自給できそうなのですが、卵は量産の目途が立たないのです。」
「そうですか。我が国の地鶏をお分けしても構いませんよ。」
「ホ、ホントですか!」
 このへんは、外務局が希望を確認していたために、局長会議の了解を経て準備してある。

「で、こちらからは何を提供すれば良いのでしょうか。」
「そうですね。稲の種もみをいただけるとありがたいですね。」
「その程度であればいくらでも差し上げましょう!」
「それから、これは新作ですがスチーム機能付きアイロンの魔道具と、ヘアーアイロンの魔道具です。魔石にガードはかけていませんので、コピーしていただいて結構ですよ。」
「な、なぜそこまで我が国に……。」
「ヤポネは和を重んじる民族だと聞いています。これからも友好を深めていければと考えているんですよ。」

 そう。日本民族は好戦的ではない。しかも勤勉で恩を忘れない。俺は局長会議でそこを力説し、良好な関係を築くことで合意を得ている。
 これは、外務局からの情報によるものだ。
「ああ、そうそう。この国では魔導線が不足していると聞いています。よろしかったらお使いください。」
 俺は収納から魔導線5kgの塊を取り出して産業家老に渡した。
「か、かたじけない!」
 食品組合長に生クリームの作り方をレクチャーし、鍛冶組合長には実際に井戸ポンプを設置しながら構造を説明。
 産業家老にはスタッフを呼んでもらい、鶏舎を建てる経過を見てもらって地鶏のオス5羽・メス15羽を引き渡した。

「女王様はとても気さくな方でしたわ。」
 その夜の事である。俺たちは豪華な夕食をいただき、用意された畳敷きの部屋でくつろいでいる。
「シノブ、王女様から何か言われなかった?」
「労いのお言葉いただきましたが、特には……。」
「君は、この国の出身だろ?」
「ご存じでござったか……。」
「うん。なんとなくね。女王様も気づいた感じだったんだけどな……。」
「某は平民ゆえ、女王様と接点などないでござるよ。」
「そうなんだ。ああ、それにしても畳はいいなぁ。」
「そうですわね。裸足でいることがこんなに気持ちいいとは思いませんでしたわ。」
「うん、決めた。家にも畳の部屋を作ろう。」
「賛成ですわ。」
「シノブの部屋も畳にしてあげようか?」
「同部屋のイグリッドにも確認しないと、拙者だけの好みで決めるわけにはいかないでござるよ。」
「明日、街に出たら買えるだけ買っておくよ。」

【あとがき】
 和室はいいですよね。癒されます。
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